(3)
チッと舌打ちする音――狼は不機嫌そうに言った。
「最後の謎だ。炎の楯を手に入れるには、この世界のコインが16枚、必要だ」
直径1.5メートルほどの石台が、地面からせりあがってきた。台の表面に、マス目状の線が刻まれている。それぞれの四角い枠の中が丸く窪んでいる。ぜんぶで16目あった。そして石台の縁近くに、光り輝く金の箱とみすぼらしい粘土の箱が出現した。
「さあ、小箱を選べ。どちらかの箱にコインが入っている。選ぶまでは、ふたを開けるでないぞ。コインですべての窪みを埋めつくせば、炎の楯はおまえたちのものだ」
「こんなのナゾ解きじゃない。単なる運試しじゃないか」
すかさずサキが不平を言った。
狼がしれっとして、そっぽを向いた。
3人は黄金と粘土の小箱をにらみつけた。そのうち、サキがじれて手を伸ばした。
「いくら考えても無駄だよ。勘でいこうよ」
「待て!」
黄金の箱に手を伸ばしかけたサキを、ハーブがさえぎった。
「見かけにだまされるんじゃない」
「だったら土の箱?」
サキが振り返ってハーブの顔を見た。ハーブがぐっと詰まった。
そのとき、ユーミンが助け船を出した。
「こんどはハーブに任せよう。ハーブ、あなたの信じるほうを選んで」
「でも、わしは――」
ハーブは断ろうとして口を閉じた。ユーミンとサキが見つめていた。ユーミンが力づけるように、うなずいた。
ハーブは石台のほうに振り返った。黄金の箱と粘土の箱――富と貧しさ。炎の楯を得るのはどちらだ?
彼は心を決めると、震える手で粘土のほうを取った。
蓋を開けると、古びた銅のコインが入っていた。
ハーブのホッとしたようすに、サキが弾んだ声で言った。
「正解だったんだ」
「ああ、わしが正しかった。見かけよりも真実だ」
ハーブは箱の中からコインをとりだして、桝目の窪みに置いた。コインが窪みにぴっちりとはまって、キラリと輝いた。コインの表面には、奇妙な文字が刻まれていた。
ひとつ、ふたつ、みっつ――ハーブは石台の上で、でっぷりした体を四つん這いにして、その作業を楽しむかのように、ゆっくりとコインで桝目を埋めていった。
最後のひとつで、ハーブの動きが止まった。
(ないっ!)
箱の中には、コインが残っていなかった。彼は中央にある空白の桝目と、手にした空の箱を交互に見た。
「どうしたの、ハーブ?」
サキが後ろから聞いた。振り返ったハーブの情けなさそうな表情を見て、息をのんだ。
「まさか、そんな――いやだ」
狼が、勝ち誇ったようにほくそえんだ。
「どうやら最後でつまずいたようだな」
「じゃあ、金の箱のほうが正解だったの」
サキが確かめるように、黄金の箱に手を伸ばした。
とたん、黄金の箱が消え去った。
「ああーっ!インチキしたんだ。最初から一枚足らなかったんだ!」
サキが狼をにらんで騒ぎ立てた。
「ふん、ゲスの勘繰りだ。なんとでも言え」
狼はしらっとぼけた。それから上を見あげた。大岩が不気味に揺れ動いた。
「待って!」
ユーミンが叫んだ。「あとひとつのコインは、ここにあります」
彼は財布からコインを取り出した。いつだったか、トマの城下町で老婆にもらったコインだった。
ハーブがコインを受け取って、不思議そうに調べた。石台に置いたコインとまったく同じ文様だった。彼は最後のコインを桝目の中央に置いた。
コインと桝目が光りだした。
あわててハーブは台から退いた。
台上の光は、みるみる眩しいほど大きくなった。光が消えたとき、石台の中央にぽっかりと黒い穴が開いていた。
気がつくと、狼の姿はどこにもなかった。空が明るくなったので見あげると、中空に浮いていた大岩も消えていた。
どこからか狼の声が聞こえてきた。
「おまえたちの勝ちだ。その穴の中に、おまえたちの求めるものがある」
3人は、石台に開いた穴から中に入った。狭い階段が下に伸びていた。彼らは用心して、薄暗い階段を降りた。
少し行った所で、扉に突き当たった。
扉を開けると小部屋になっていた。床は白っぽいほこりにおおわれ、歩くと足跡がついた。
「汚い部屋だ。ほこりだらけだよ」
サキが不平を言いながら、中に入った。
石の台があり、ほこりがうずたかく積もっていた。
「炎の楯なんて、どこにもないじゃない」
サキが部屋を見まわしながら言った。
「これじゃない?」
石台に近づいたユーミンが言って、ほこりの堆積を持ちあげた。ほこりが楯の形に浮かびあがった。
「ほこりまみれで、分からなかったんだ」
ユーミンが楯の表面を手のひらでたたくと、ほこりの渦が巻き起こった。
「ペッペッ――ユーミン、外でやってよ」
サキが顔の前で手を振った。
外に出ると、3人は楯のほこりをとって、きれいにした。
その楯は、ユーミンが持っていたドラゴンのウロコと同じ物でできていた。それも、何枚ものウロ
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