(4)

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アルルの町は、ほとんどの利便施設が揃っていた。
彼らは床屋で髪を切り、公衆浴場で垢を落とした。ついでに、すっかりぼろ布と化した衣服に代えて、新しい服を購入した。
次の日、ウータンはユーミンを誘って、復活した泉の先にある岬に行くことにした。ホルムの話によれば、この町一番の景観が望めるという。
目的地まで小一時間ほどかかった。泉のある森を抜けると、急に眺望が開けた。一面の草原地帯で、その先は海だった。右手下方、切り立った崖の先に、アルルの港と町の全貌が見渡せた。
岬には石造りの灯台が立っていて、それを囲むように石畳みの広場があり、ちょっとした展望台になっていた。
さすがに人気の展望スポットらしく、10人ほどの人影が見えた。それに馬車で来た人もいるのだろう、2頭立ての立派な箱馬車が停まっていた。

展望台に近づくと、驚いたことにハーブの姿があった。彼は初老の男と話をしていた。
「なんだ、ハーブもここに来ていたの?」
ウータンが声をかけると、話を中断して、ハーブが振り返った。
「おう、ウータンとユーミンか。きみたちも来たんだな」
ハーブと話していた男が、ユーミンの顔を見て、驚いた表情をした。それも一瞬の間で、彼は満面の笑みを浮かべてハーブに言った。
「ハーブさんのお知り合いですか。若いご友人だ」
ハーブが男を紹介した。
「レッチさんだ。たまたまここで知り合ったんだ」
「レッチです。どうです、せっかくお会いできたのですから、ここを見物されたあと、わたしの屋敷に来ませんか。馬車もあります。みなさんご一緒に乗って行けますよ」
レッチと名乗る男は、血色のよい顔をほころばせて、3人を誘った。いかにも裕福そうで、着ている衣服も高価な布地だ。
ウータンたちが、どうする?と顔を見合わせていると、レッチがなおも言った。
「じつは今日、屋敷にベリーダンスのチームを呼んでいるのです。ほかに客も何人か来ますが、どうです、折角のチャンスですから見物していきませんか?」
ハーブが怪訝そうに訊いた。
「ベリーダンスって何ですか?」
「ああ、おへそを出して踊るダンスです。まあ、ダンサーは多少官能的とも言えますが、ダンスを通して様々な感情を表現します。それは見事なものですよ」
ユーミンがそっとウータンの袖を引っ張り、眉をひそめて首を振った。ウータンは彼の意を汲んで断ろうとした。ところがあろうことか、ハーブが先に答えた。
「それは面白そうですな。後学のために、ぜひ見物させてください」
(えっ、ぼくらの意見を聞かないの?)
若い二人は、抗議のまなざしをハーブに向けたが、老人は素知らぬ顔をしている。
レッチが嬉しそうに言った。
「じゃあ、わたしは馬車で待っていますから、出掛けられるとき声をかけてください」

「ハーブ、なんでオーケイしたの?ぼくらの意見も聞かないで」
レッチから離れたあと、ウータンはハーブに文句を言った。
「ええっ!きみたちは見たくなかったのかい」
ハーブはいけしゃあしゃあと答えた。その横で、ユーミンが眉をひそめて、小声で言った。
「だって、おへそを出して踊るって、なんかいやらしい」
ハーブはまじまじとユーミンの顔を見た。そこで白い歯を見せて、ニカッと笑うと、ユーミンの背中を叩いた。
「おいおい、素っ裸で踊るわけじゃないんだぞ。若者はもっと好奇心を持って、いろいろの経験をしなくちゃ駄目だ」

レッチの屋敷は、宮殿と見紛うほど豪華な建物だった。馬車は、どっしりとした構えの門柱を抜けて、緑の芝生の間を縫って走り、大きな玄関先で停まった。
通された部屋は、床一面に真紅のカーペットが敷かれ、年配の男たちがクッションにもたれかかって、車座に寝そべっていた。皆一様に裕福な身分らしく、美食と好色に慣れきった顔と体つきをしている。
その男たちの間に、ガラスと金属でできた奇妙な器があった。首の長い水差しのような形をして、器から2本の管が伸びて、男たちはその管を咥えていた。
「水煙草ですよ」
ウータンたちの疑問に答えて、レッチが説明した。「煙の不純物を水で浄化して吸うんです。さあ、あなたたちも試してみなさい」
ユーミンが、よしなさい、と言うように腕を引っ張ったが、好奇心には勝てなかった。ウータンは、横でハーブが管を咥えるのを見て、自分も恐る恐る吸ってみた。何かの果実のような甘い香りがした。まもなく、雲に漂うような気分になってきた。

そのとき、扇情的な打楽器の演奏が始まった。と同時に、どこから現れたのか、肌を露わにした衣装をまとう、豊満な肉体の女が現れた。女は部屋の中央で踊りだした。手足をくねらせ、腰や肩、腹が別個の生き物のように円運動をする。
ウータンはたちまち官能の世界に引き込まれた。ベリーダンサーは、肌がすべすべとして、そしてふくよかだった。ウータンの目は豊満な
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