第11章 アルルの泉

第11章 アルルの泉



(1)

一行は旅の途中で休憩したときに、太陽の石を使って、それぞれの念術を練習した。
それまで念術の出来なかったケインやハーブ、サキでさえ、何度か練習していると、石を持たなくても念術が使えるようになった。しかしその効果は、石を持っているときほど強くはなかった。
ピザンの町を旅立って、3ヶ月ほどが経過していた。
ケインはアルルの町に近づくにつれ、物思いに沈むことが多くなった。気になってウータンが尋ねたが、ケインはかたくなに沈黙を守っていた。
アルルの町外れにさしかかったとき、崖のふちに人の住んでいない廃屋がぽつんと建っていた。わら葺屋根の粗末な建物だったが、庭先に井戸があった。
一行はその庭先でしばし休憩した。井戸の水は冷たくて清らかだった。彼らはその水で喉をうるおし、昼食をとった。
庭先からアルルの町が望めた。海沿いから扇状にひらけた大きな商都市で、港には数隻の帆船が停泊していた。船の数は、港や町の大きさからみると、奇妙なほど少なかった。

休憩をおえてアルルの町に向かおうとしたとき、ケインは腰をあげずに、なにごとか考え事をしていた。
「どうした、ケイン。出かけるぞ」
ハーブが声をかけた。
ケインは顔をあげると、きっぱりと言った。
「おれはここで待っている。用事がすめば、ここで合流しよう」
ハーブがなにか言おうとして、ウータンと顔を見合わせた。
ユーミンが聞いた。
「どうしたの、ケイン?なにかアルルの町に行けない事情でもあるの?」
ケインは頑固にいい張った。
「とにかく、あの町は気に食わん」
ウータンがあきらめたように言った。
「わかった。じゃあ、ぼくたちで町まで行ってくるよ」
結局、4人はケインを一軒家に残して、アルルの町に入ることにした。

町の中は、どことなく重苦しい雰囲気に包まれていた。空がどんよりと曇っていたが、原因はそれだけではないようだ。道を歩く人たちの表情が暗かった。通りには大きな構えをした、たくさんの店が並んでいたが、客の数は少なかった。
ウータンたちは、その暗い雰囲気が伝染したかのように、押し黙って通りを歩いた。
目指す商人、ホルムの店はひときわ大きな建物だった。店に入ると、ワインの香りが鼻をついた。でっぷりと太った赤ら顔の男が出てきた。この店の主、ホルムだった。
ウータンが用件を話すと、ホルムは人好きのする温顔をほころばせて、彼らを店の奥に通した。

「さて、あの石のことで、こんなに遠くまでわざわざ来られるとは、よほどのご事情があるんでしょうな?」
椅子に座ると、ホルムが言った。人の良さそうな温顔だが、目もとがすこし疲れている。
ウータンはドラゴンのことを省いて、事情を説明した。
「ピザン寺院のエウスというお坊さんの了解で、法の間で太陽の石を見つけました。でもぼくたちが知りたいのは、あなたがどうやって石を手に入れたかということです」
ホルムがぎゃくに質問した。
「それを知って、どうするんですかな?」
ウータンは言った。
「その石はもともと、ほかの神聖な場所に飾られていたものです。それをある男が持ち去ったのです」
ホルムはしばらく、ウータンたちを値踏みするように見ていた。
「わかりました。あなたがたは悪い人ではなさそうだ。目を見ればわかる」
少し考えて、彼は話しだした。「もうずいぶん前になります。ふたり連れの男がこの店にやって来て、あの石を買ってくれと言ったのです。ひとりは、どこに行っても目立つような大男でした。左目に傷があり、見るからに獰猛そうな顔つきをしていました。もうひとりはずる賢そうな小男でした。キツネという形容がぴったりの男でしたな」
ホルムはフッと笑った。「ところが、その小男は妙な術を使いましてね。彼はわたしの目の前で、指の先から稲妻のような光を出したのです」
(イジリが使っていた念術と同じだ)
ウータンは、そっとユーミンに目配せした。
「小男は、その術は石の力のおかげだと言うのです。石のなかに太陽の力が宿っていて、持つ者に不思議な力を与えてくれる、と」
ホルムは肩をすくめた。「そんな大切な石なのに、よほどお金に困っていたのでしょう。それでわたしが買ってあげたのです」
店主の話がおわると、ウータンが訊いた。
「男たちはどちらに向かいましたか?」
「港の船に乗ったようですが、どこに行ったかは――あっ、そうそう、男たちは黄金の採れる国の話をしていましたから、おそらくアトラスに向かったのではないでしょうか」
「アトラス――」
(これからぼくたちが行こうとしている国だ)
ウータンは思いがけない情報に驚いた。彼は店主に向かって礼を言った。
「ありがとうございます。とても参考になりました」

それまで黙って聞いていたハーブが、横から口を出した。
「ところで、一体この町はどうなさ
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