(4)
「アトラスに向かう前に、アルルという港町に寄ってみたいんだ。そこにホルムという商人がいて、その人が太陽の石を手に入れたらしい」
皆が合流したとき、ウータンが言った。
ユーミンがつけ加えた。
「ぼくを育ててくれたイジリが言ってた。太陽の石は、フヌギという悪い神官が、光の塔から持ち出したものだって。ちょっと気になるんだ。だからそのホルムって人に会って、どうやって石を手に入れたのか聞いてみたいんだ」
ハーブがうなずいた。
「この先、旅は長い。よし、そこに寄ってみよう」
ところがケインは、露骨にいやそうな顔をした。
「おれは反対だな。アルルに行くには、まわり道をしなければならん。そんな無駄なことをする必要があるのか?」
ケインに向かってハーブが言った。
「おいおい、ケイン。これもオーディンの玉探しの、なにかの手掛かりになるかも知れないんだ」
「――」
ケインはまだなにか言いたそうだったが、みんなの怪訝そうな視線に気づいて、肩をすくめた。
結局彼らは、アルルの町に向かうことにした。
アルルの町に行くためには、いったん西側の海岸まで出なければならなかった。たしかに北のアトラスの国に向かうには、大きな寄り道になる。しかしアラバ山脈を越えたときの苦労にくらべれば、平地を歩くのはずっと楽だった。川には橋がかかっていたし、大地の起伏と言っても、せいぜいなだらかな丘陵地くらいだ。
旅は順調につづいたが、油断はできなかった。というのも、前よりも怪物の数が増えていた。巨大化した動物や昆虫たちが、行く先々であらわれた。
一行は力を合わせて、その怪物どもを退治しながら、旅をつづけた。
ウータンは旅の途中で、何度か具合の悪い状況におちいっていた。夜寝ているとき、身内でなにかが漲る気配で目覚めるのだ。気が付くと、パンツの中にぬるっとした男の精を吐き出していた。そんなことが起こるのは、たいがいが、人に言えない恥ずかしいことを夢見ている時だった。
考えてみればその現象は、トマ王によって、大人の夜の行為を教えてもらってから始まったようだ。
そんなことが何度か繰り返されると、男の精を洩らす前に察知して、目を覚ますようになった。そんなときは下穿きを汚さずにすむが、高揚した気持ちが治まらず、仕方なく皆から隠れたところで、自ら慰めて鎮めた。
ケインの奇妙な行動――夜中に「いかんっ!」と言ってどこかに行く理由が分かったが、自分のほうがずっと回数も多いように感じられた。
(だったら老人のハーブはどうなんだろう――)
そんなことを考えていると、これまで気付かなかったことも見えてくる。ハーブは67歳の老人だが、彼もときどき姿を消すことがあった。そして戻ってきたときには、どことなくホッとしたような気配が感じられた。
そういったヒューマン族や海洋族の習性に比べ、ホーリー族のユーミンは、まったくそんな素振りを見せなかった。
(ホーリー族は、ぼくたちと違うのだろうか?)
そういえば、ユーミンと同じ年のサキも、変な動きをしていない。
(やはりふたりとも、まだ子供なんだな)
いろいろ思いを巡らすウータンを、ときにケインがじっと見ていることがあった。彼の表情は、おまえの考えていることはお見通しだぞ、と言っているようだった。
旅の途中で、いくつかの川や泉に行き当たった。それは貴重な飲み水を得るだけでなく、体を清潔にできる、ありがたいものだった。
彼らは裸になり、旅の汗を洗い流し、汚れた衣服を洗濯した。
そんなときウータンは、皆の裸を見て、誇らしい気持ちになった。
前にトマ王が彼の股間を見て、「お前は父親とそっくりなものを持っている」と言ったように、彼のおちんちんは一番大きかったからだ。
自分より体の大きなケインですら、ウータンの大きさにはかなわない。松の根っこのように太くて短いハーブや、皮を被って可愛らしいユーミンとサキのものを見ていると、なんとなく優越感をおぼえた。
森の木陰で休んでいるときのことだった。
ユーミンが太陽の石をとりだしたのを見て、サキが話しかけた。
「ねえ、ユーミン。その石には、太陽の力が封じ込められているって言ってたけど、本当なの?」
「本当だよ。こうやって手に持っていると、その力が伝わってくるよ」
ユーミンは、両手の掌で石を押し包んだ。
「ふーん、ユーミンやウータンは不思議な力を持ってるけど――その石を持てば、ぼくにもできるのかなあ」
「さあ、どうだろう。やってみるかい?」
ユーミンは石をサキに渡した。
サキは、珍しそうに石を撫でまわした。
「なんだか暖かい。まるで石が生きているようだね」
ユーミンが説明した。
「イジリが言ってたけど、もともとヒトには大自然の力を使う能力があるんだって。火や水や風、土や木など――人によって違うけど、それぞれの能力があるって。
[3]
次へ
[7]
TOP [9]
目次[*]
感想