(4)
ユーミンの獲って来たウサギを鍋で煮て、一同、飢えた狼のようにむさぼり食べた。肉の部分は少なかったが、不足分はウータンが雪の下から取ってきた草の根で補った。
食事のあいだは静かだった。
腹が満ち足りたところで、ウータンはユーミンに向かって言った。
「ユーミン、もう二度と黙って出かけるのはやめてくれ。みんな心配したんだぞ」
「ごめんなさい。ぼく、みんなに申し訳なくて――」
「まだあのことを気にしてるのかい?あれは不可抗力だったんだ。それより、単独行動はだめだよ」
横からサキが明るい声で言った。
「でも、ユーミンのおかげで腹いっぱい食べられたんだ。なにか文句があるの?」
ウータンはサキをにらんだ。
「たしかにユーミンのおかげだよ。でも危険なことはだめだ」
「じゃあ飢え死にしてもいいっていうの?」
サキがウータンに絡んできた。ユーミンがあわててさえぎった。
「そんなことじゃないよ。ウータンが言ってるのは、単独行動はだめだってこと。みんなで力を合わせなければ。ぼくは、そのことを忘れていたんだ」
「あれ、ユーミンはウータンの肩をもつ気?――ははーん」
サキはふたりの顔を交互に見た。
「何だよ、サキ――」
ウータンがうろたえて言った。その横でユーミンが、ほほを赤らめた。
そのときケインが、面倒くさそうに言った。
「よし、そこまで。サキ、ガキのくせに大人をからかうんじゃない。さあ、出発するぞ」
「ぼくはガキじゃない!なんだい、このデカブツの――」
サキの言葉は、最後まで聞いてもらえなかった。他のみんなは、いっせいに荷物をまとめだしたからだ。
出発する前に、みんなして、これまで辿ってきた方角をながめた。
景色はかすんでいたが、眼下に峡谷や緑の森林地帯があり、その先に広大な平原が広がって見えた。ミサキの村のあるあたりから海が水平線まで伸びて、灰色の空と溶け合っていた。トマ城はかすみのかなたで見えなかった。
「ずいぶん遠くまで来たんですね。ここまで来れただけでも、信じられないくらい」
ユーミンが感慨深そうにつぶやいた。
ウータンが励ますように言った。
「ああ、みんなが力を合わせたから出来たんだ。でも先は、まだまだ遠い。がんばって行こう」
「そうですね」
ユーミンがうなずいて、にっこりと微笑んだ。
ハーブが、雪原を見渡しながら質問した。
「さて、出発だ。ウータン、どちらに向かって行くんだ?」
ウータンがしばし思案していると、ケインが雪原の先のほうを指さしながら言った。
「あの三角山を目指して行くんだ。あの山の向こう側に降りれば、ピザン寺院の門前町がある」
ウータンは驚いて、ケインを見た。
「ケイン、この山脈を越えたことがあるのかい?」
彼の質問に、ケインは肩をすくめただけで、なんとも言わなかった。
一行は雪原を登りだした。ケインが雪を踏みしめながら先頭を歩き、途中でウータンが代わった。滑りやすかったのでまっすぐに登れず、ジグザグに進まなければならなかった。
最初のうちはみんな元気だった。
一番後ろにまわったケインが、前を歩くハーブの大きなお尻を見ながら軽口をたたいた。
「ハーブ、気をつけろ。転がり落ちるなよ。あんたと一緒に雪だるまになるなんて、ゾッとしないからな。――もっともその体型じゃあ、もともと雪だるまだな」
言ったとたん、ケインが小さく叫んだ。足を滑らせたのだ。彼の体は雪の上を転がり落ち、途中で止まった。
全身雪にまみれて、顔を真っ赤にしたケインが登ってきた。それに向かって、ハーブがのんびりと声をかけた。
「ケイン、大丈夫かい?」
「雪が降ってきそうだ。無駄口をたたかずに、先を急げ」
ケインはブスッとして言うと、さっさと先に歩き出した。
天候が急変した。
空が暗くなり、風が出てきた。そしてふたたび雪が降り始めた。とたん、皆の間にあった明るいムードが一変した。
「いいかい、みんなできるだけ固まって歩くんだ。はぐれると大変だ」
先頭を歩くウータンは、後ろの連中に向かって叫んだ。口の中に雪が入ってきて、彼はあわてて口を閉じた。
雪はますます激しくなり、目標とした三角山の姿も見えなくなった。
咆哮するような音をともなって、風が強くなった。
何もさえぎるもののない雪原で、彼らは雪や風に翻弄された。じっとしていても吹き飛ばされそうだった。彼らは寄り集まって、一歩一歩と雪の中を進んだ。
吹雪はあまりにも激しく、傾斜さえもわからなくなった。
ウータンは方角を見失った。ただ勘を頼りに、上に向かって歩きつづけた。
(どこか身を寄せるところを探さなければ――)
そう思ったが、出発する前に見た記憶では、三角山の麓まで休憩できそうな起伏はなかった。
吹雪の中の彷徨は、延々とつづいた。5人のグループなので、行程は遅々として進まなかった。積雪は深く、腰まで
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