(3)

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最初にケインが岩壁を登った。背中に結びつけた槍が長くて、動きにくそうだった。手を伸ばしてツタの強度を確かめ、岩の表面に慎重に足掛かりを見つける。彼は手足の長い体格を利して、一歩、一歩、着実に登っていった。
そのあとにサキがつづいた。彼は身軽だった。すぐケインに追いつき、彼が上に登るのを待つこともしばしばだった。そんなときサキは、上にいるケインに声をかけた。
「ケイン、気をつけて。あんたが落ちたら、そんな大きな体、受け止められないよ」
ケインは、サキの軽口に受け答えするほど余裕がなかった。太い首筋に汗を浮かべて、黙々と岩に取り組んでいる。
ふたりが岩壁の中腹まで登ったとき、ウータンは、ユーミンを先に登らせた。
「いいかい、急がなくてもいいんだ。岩の出っ張りに足掛かりを確保して、ゆっくりと登るんだ。ぼくがすぐ後ろについているからね」
ユーミンがおっとりとほほ笑んだ。
「大丈夫。岩登りは馴れてるから」
ユーミンは馴れた動きで岩を登りだした。
「じゃあ、先に登るよ。ハーブ、気をつけて」
ウータンはハーブに声をかけると、ユーミンのあとを追った。

最初のうちは楽だった。岩の表面は、でっぱりや裂け目があって、手や足を掛けるには充分だった。それに太いツタが岩に絡まっていた。
しかし、じょじょに背中の食料袋の重量が、肩にくいこんできた。肌寒い温度にもかかわらず、ウータンは汗をかいていた。彼は肩の痛みを我慢して、ときおり、すぐ上を登るユーミンに励ましの言葉をかけながら、ゆっくりと登っていった。
3分の2ほど登ったときだった。先を行くケインとサキは頂上にたどり着いていた。下を見ると、10メートルほど下にハーブの姿が見え、その背後に川の流れが見えた。高さに目が眩みそうだった。ウータンはあわてて前に向き直った。

ふいに鳥の羽ばたく音が聞こえた。
「アッ!」
ユーミンが小さく叫び声をあげ、のけぞった。岩の隙間から、急に鳥が飛び立ったのだ。
彼の手が岩から離れ、ウータンにぶつかってきた。
ユーミンはかろうじてツタにしがみついたが、ウータンの手が離れた。
ウータンは岩をつかもうと必死でもがいた。岩肌に触れた指先に痛みが走った。彼はそのままズルズルッと岩の表面を落下しつづけた。
(もうだめだ――)
一瞬、そう思った。
そのときハーブの太い腕が伸びて、ウータンの片手をつかんだ。ウータンは、ハーブの右腕一本で空中にぶら下がっていた。
「よしっ、ウータン、ツタにつかまれ」
ハーブが歯を食いしばって、ウータンの体を引き寄せた。
ウータンはかろうじてツタにつかまった。
「ありがとう、ハーブ。もうだめかと思ったよ」
動悸が治まると、ウータンはハーブに礼を言った。
「なあに、お互いさまだ。それより、食料を無くしたのは痛かったな」
ハーブの言葉に、ウータンは初めて気がついた。背中の剣は無事だが、食料袋がなくなっていた。
下を見ると、水の中を流れ去る食料袋がかろうじて見てとれた。

ようやく頂上に登りつくと、そこは一面の銀世界だった。まるでとつぜん、別世界に入ったようだ。
先行していた3人が、心配そうに集まってきた。
ケインが言った。
「ひやっとしたぞ。ウータン、大丈夫か?」
「ああ、大丈夫だ。それより食料を川に落としてしまった。ごめん」
ユーミンが深刻な顔をして謝った。
「ごめんなさい、ぼくのせいで」
「気にしなくていいよ、不意のことだったんだ。それより雪が降ってきそうだ。先を急ごう」
ウータンが手を顔の上にふりかざして言った。その手を見て、ユーミンが息をのんだ。
「大変、怪我をしている」
ユーミンのいう通り、ウータンの手は血だらけだった。さっき滑り落ちたとき、指や手のひらが尖った岩に引き裂かれたのだ。
さっそくユーミンが意識を集中して、その傷を治した。ユーミンの念力を知らないサキが、それを不思議そうに見ていた。

ウータンの言った通り、雪が降りだした。それに風が出てきた。
気温が下がり、あたりは急に暗くなった。山の天気は急変するのだ。
彼らは大急ぎで毛皮を荷物袋から取り出すと、身にまとった。
一行は峡谷にそって歩いた。
地面は厚い雪でおおわれていたので、雪の下のようすがわからず、気をつけないと谷に落下する恐れがあった。それに吹雪いてきて、視界が悪くなった。
先頭はケインが歩いた。彼はときおり雪だまりに足を突っ込みながらも、まるで道を知っているかのように、ずんずん先を急いだ。
雪が庇のようにおおいかぶさった窪みで、ケインが立ち止まった。彼はみんなに言った。
「今日はここまでだ。ここで野宿をするぞ」
皆はものを言う気力も失くして、倒れこむように窪みに腰を下ろした。そこは5人が横になるのに、充分な広さがあった。それに、雪の壁が風を防いでくれた。
ケインが鉄の鍋に雪を
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