(2)
翌朝ウータンは、サキが部屋に来るのを待っていた。しかし、いつまで待っても来ない。
「ウータン、腹が減った。食堂にいくぞ」
ケインが待ちかねて言った。
「でも、ぼくたちが部屋にいないと、彼が心配するかも知れない」
「あれはそんな初な子ではない。おれたちがいなければ、下におりて来るさ」
結局、ふたりは食事に行くことにした。ウータンは部屋を出るとき、サキが残していったバスケットを手に持っていった。
宿の主人が朝食を運んできた時、ウータンは聞いた。
「サキという若者の部屋はどこですか?」
「若者の部屋?」
主人はキョトンとした顔でウータンを見た。
「昨夜、この宿に泊まった若者ですよ」
「そんな若者は泊まっていない。この宿に泊まったのは、あんたたちと老夫婦の2組だけだ」
「ええっ!そんなはずはない。昨日、ここで食事をしていた若者がいたじゃないですか」
ウータンは慌てた。
宿の主人は肩をすくめると、気の毒そうに言った。
「その若者なら、昨夜、食事をしただけだよ。あんた、ひょっとして、何か無くなったものはないか?この町では、よくあることなんだ」
ウータンはあわててバスケットの蓋を開けた。彼の財布がなくなっていた。中にあるのは、若者の見せた皮袋のみ。口ひもをとくと、ただの石ころが数個、袋から転がり出た。
ウータンがぼう然として空のバスケットを見ていると、ケインがポツリと言った。
「やはりな」
ウータンは、キッとしてケインの顔をにらんだ。
「やはりなって――ケインはこうなることを知っていたのか?」
「知ってはいなかったが、予想はできた。おれは言っただろう、この町では用心しろと」
ウータンはうなだれた。
「クソッ、あの財布には、母さんの形見が入っていたんだ」
「まあそうションボリするな。あのガキはもうこの町にいないだろう。運がよければ、どこかで会えるかも知れん。とにかく今はメシだ」
ケインはパンをほお張った。そこで思いついたように言った。
「おまえは念力で、あのガキを調べたのじゃないのか?」
「調べたさ。だけどあの子に悪い感情はなかった」
「じゃあ、おまえの念力も、あまり当てにならないな」
「――」
ウータンは黙り込んだ。
宿代はケインが払った。ふたりは町を出ると、イタの洞穴があるという西の山を目指した。先に進むにつれ、まわりの景色は乾燥した地帯から緑の森に変わっていった。
森に入って、少し歩いたときのことだった。なにやら険悪な人の声が聞こえてきた。ふたりは声のするほうに歩いていった。
サキと名乗った若者が、3人の男たちに取り囲まれていた。
体格のいい男が、わめくように言った。
「昨日の夜は、よくもおれをだましやがったな!」
「ふん、助平心を起こしたあんたが悪いんだよ」
「なにおっ、おれの財布を返せ!」
「もう捨てちゃったよ」
「なにっ!」
男のひとりがサキに詰め寄った。とたん、男はあっと言って、自分の手を押さえた。サキの手に、キラリと光るものが見えた。
彼は短刀を構えて、男たちをにらみつけた。
「ぼくを甘く見るんじゃないよ。でないと痛い目にあうぞ」
男たちはせせら笑った。
「けっ、気の強いガキだ。そんなちっぽけなもので、おれたちをどうしようってんだ」
男たちはジリジリと、サキを囲む輪を縮めていった。
右側の男がフェイントをかけた。サキがその男めがけて短刀を振ると、男がすばやく下がった。と同時に左側の男が彼に抱きついた。
「捕まえた!」
男たちが歓声をあげて、サキの体に群がった。
サキは小刀を取りあげられ、地面に押し倒された。
「畜生、放せ!」
サキは手足をジタバタさせて叫んだ。
「いくらわめいても無駄だ」
「女のような顔をしてるぜ。ガキの尻を掘るってのもいいか」
「昨日だまされた仕返しだ。たっぷりとかわいがってやる」
男たちは好き勝手に言いながら、もがくサキの体から服を剥がしだした。
そのときサキの両脚を押し開いた男が、驚きの声をあげた。
「おいっ、こいつ女の割れ目を持ってるぞ」
ほかの男たちが一斉にそこを見た。
「ホントだ。こいつ、ヒューマン族じゃねえ。ホーリー族か」
「なら、好都合だ。たっぷりと味わおうぜ」
男のひとりが下帯を外して、サキの体にのしかかった。
「アッ、バカ!やめろっ!」
サキが猛烈に暴れだしたが、男はちっとも意に介してなかった。
「ふふ、小僧。すぐ気持ちよくさせてやる」
「グエッ!」
不意に男のひとりが、うめき声とともにのけぞった。
ほかの男たちが振り返って、仰天した。僧服を着た大男が背後に突っ立っていた。右手に二つ又の大槍を持っている。彼らのほうからは、まるで雲突く巨人のようだった。
「ガキ相手に、大の男が3人がかりとは、みっともない。おれが相手をしてやる」
ケインが大声で言った。
男たちは弾けるよう
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