第7章 タスクの町
(1)
ウータンとケインは海沿いの道を歩いて、タスクの町に向かった。
途中から道は内陸部に向かった。海から離れるにつれ、あたりは乾燥した地帯に入り、草木もまばらになった。道は平坦で歩きやすかったが、町の姿が見えだした頃には、すでにあたりは暗くなりかけていた。
タスクの町は、低い灌木がまばらにある小高い丘陵地帯にあり、土レンガの外壁が連なりあって、外部に対する防壁になっていた。
町目指して歩きながら、ケインがウータンに注意した。
「いいか、ウータン。町に入ったら用心するんだ。タスクは悪党どもの集まる町だ。追いはぎ、詐欺師、スリ、たかり――そんな奴等がゴロゴロいる。だから気をつけろ」
「衛兵はいないの?」
「いるさ。悪徳衛兵がな」
ふたりは町に着くと、まず宿をさがした。宿屋はすぐに見つかった。二階建ての古めかしい家だった。
彼らはその夜寝る部屋を確保すると、一階にある食堂で食事をとった。宿の客は少なく、夫婦連れの老人と、まだ少年の域を抜けきっていない男の子がひとり、ひっそりと食事をしていた。ほかには町の住民らしい男たち3人が、部屋の隅にあるカウンターで酒を飲んでいる。
大盛りの肉とパンを平らげたケインが、ウータンに向かって言った。
「ところで、おまえの親父はどうやって探すんだ」
ウータンは肩をすくめた。
「さあ――とりあえずは情報を集めるよ。さしあたっては、宿の主人に聞いてみよう」
ウータンは立ちあがると、カウンターの方に近づいていった。彼は警戒心を解いていた。さきほど食事をしているときに、部屋の中にいる全員に思念を送ったが、特別な敵意を持っている人間はいなかった。
宿の主人はカウンターの奥で、ウータンの質問に小首をかしげた。
「大きな体格をした戦士?それだけじゃわからないな。それに7年も前のことだろう」
主人は問いかけるように他の客を見たが、客たちも分からないというように首を振った。
「そのころ、この町の近くで怪物が現れたらしいんです。その戦士は、怪物退治にきたそうですが」
主人の顔がぱっと明るくなった。
「ああ、その戦士なら覚えている。あんたと同じ目をしていた。青くて、不思議な目だった」
(父さんだ!)
ウータンの胸の動悸が高まった。彼は性急に聞いた。
「で、その戦士はどちらに行きましたか?」
「怪物退治だよ。イタの洞穴に大熊の巣があったんだ。信じられないほど巨大な熊だ。その大熊に襲われて、何人もの町の人間が死んだ。それで彼が、退治に出かけたんだ」
「そのあと、どうなりました?」
「おそらく、その戦士が大熊を退治したのだろう。洞穴の前に大熊の死骸があった」
「あなたはおそらくと言いましたが、戦士は町に戻ってこなかったのですか?」
「ああ、彼はイタの洞穴に出かけたきり、二度と町には戻ってこなかった」
それを聞いて、ウータンは落胆した。せっかく近づいたと思ったのに、父の足跡はまた途絶えたのだ。
そのとき、人の良さそうな赤ら顔の客が、ウータンに声をかけた。
「そういえば、あんたの探している戦士が町を出たあと、ふたり連れの男たちがやってきて、その戦士のことを色々と聞いていたな」
「どんな男たちです?」
ウータンは振り向いて、男に聞いた。
赤ら顔の男は、思い出そうとするように天を仰いだ。
「そうだなあ、あまりいい人相じゃなかったな。ひとりは大男だ――」
男はテーブルにいるケインの方をチラリと見た。
「背丈はあんたの連れと同じくらい高かった。ただし、横幅はもっとあった。坊主頭で片目がつぶれていた。右目か左目かは忘れたが、刀で切られたような傷だ」
「もうひとりの男は?」
「もうひとりは小男だ。痩せて、キツネのようなずる賢い顔をしていた」
「その男たちは戦士のことを聞いたあと、どうしました?」
「町を出ていったよ。おそらく戦士のあとを追ったのじゃないか?」
ウータンは町の男たちを見ながら考えた。
(ふたりの男たちは何者だろう?父さんは、男たちがあとを追っているのを知っていたのだろうか?――とにかく、父さんの向かった洞穴に行ってみよう)
彼は男たちに聞いた。
「そのイタの洞穴というのは、どこにあるんですか?」
男たちの顔に怯んだ表情が浮かんだ。
宿の主人がおずおずと言った。
「イタの洞穴に行くのかい?よしたほうがいいよ」
「どうして?大熊は退治されたんでしょう?」
「大熊は退治されたけど、あの洞穴には2年ほど前から、ほかの何かが住みついた。あの穴に入った者は、だれひとりとして戻ってこない。だから町の人たちは、イタの洞穴には近づかないんだ」
ウータンは再度、質問した。
「洞穴はどこにあるんです?」
「町を出て、西のほうに2キロほど行ったところにある。山の中だから、初めての人が見つけるのは大変だ」
宿の主人はそう
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