(6)

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ニワトリがのどかに鳴いていた。
ウータンは目を覚ますと、大きく伸びをした。体中の節々が痛かったが、身内に充実した力がみなぎるのを感じた。
昨夜は、村に戻るとすぐ、ムーングラスの根を煎じてユーミンの口に注いだ。ユーミンが長い眠りから覚めたとき、その喜びにひたる間もなく、ウータンは泥沼に潜り込むように深い眠りについていた。
ウータンは起き上がると、部屋の中を見渡した。
床の上では、ケインとハーブが健やかな寝息をたてている。無理もない、きのうは2日分の働きをしたのだ。
ユーミンもまだ眠っていた。(また長い眠りについたのか!)ウータンは一瞬、恐慌をきたした。

そのとき、ユーミンが目を開けた。彼はウータンの顔を認め、おだやかにほほえんだ。
ウータンの大好きな、無邪気な笑顔だった。
ウータンは声をかけた。
「ハイ、気分はどうだい?」
「頭の芯がすこし痛い。でも、気分はいいよ」
ユーミンは頭を振った。「昨日の晩は、あまり話ができなかったけど、ケインに聞いたよ。ウータンが岩山を登って、ムーングラスを採ってきてくれたんでしょう。ありがとう」
「なあに、ぼくひとりじゃない。みんなのおかげだよ」
ウータンは照れくさそうに頭をかいた。
ユーミンが起きあがろうとして、ハッとしたようにウータンの股間を見た。なんとズボンの前が、テントを張ったような状態になっている。
ウータンも気づいて、あわてて前を隠しながら言った。
「まだ起きないほうがいい。きみは体力を失っているんだ」
「でも、早く外の光が見たいな。ねえ、ウータン。ぼくを外に連れてってくれる?」
ユーミンがふたたび起きあがろうとした。ウータンは背中を支えて、彼がベッドから起きあがるのを助けた。
立ちあがったとき、ユーミンがよろめいた。
「大丈夫かい?」
体を支えてやりながら、ウータンは聞いた。腕に伝わるやわらかい体の感触に、彼の股間はますます都合の悪い状態になっていた。
それに気づかず、ユーミンは微笑むと、歯を食いしばって足を踏み出した。

外に出ると、ユーミンがはしゃぎ声をあげた。
「わあ、きれい。やっぱり自然の光が一番だ」
広場の井戸では、村の女たちが水を汲んでいた。彼女たちはふたりの姿を見て、人懐っこい笑顔で挨拶をした。昨日ユーミンの世話をしてくれた女性が、声をかけた。
「あら、ぼうや、目が覚めたのね」
ぼうやと呼ばれたユーミンが、怪訝そうな顔をした。無理もない。彼はずっと眠っていたのだ。
ウータンが教えてあげると、ユーミンは女性にむかって頭を下げた。
「昨日はありがとうございました。ぼくはずっと眠っていたので、みなさんにお世話になったことも覚えていません」
女性が笑顔で言った。
「いいのよ。朝の散歩かい?ハーブはろくな物を食べさせてくれないだろうから、あとでわたしが食べ物をもっていくよ」
ふたりは礼をいうと、岬の先の方に歩いて行った。

きのうの怪物との死闘がうそのように、海はおだやかに輝いていた。風が潮のかおりを運んできた。浜に打ち寄せるゆったりとした波の音が、耳に心地よく聞こえる。
ユーミンが海を眺めながらつぶやいた。
「海を見るのは初めてなんだ。きれいなところだね。生きていてよかったって気分」
ふたりは口を閉ざして、眼下の景色を眺めていた。
しばらくして、ウータンはユーミンに訊いた。
「ユーミン、きみはトマ城でぼくを助けてくれたとき、いったい何をしたんだい?」
ユーミンは小首をかしげた。返事をする前に、ウータンのズボンの前が平常に戻っているのを確かめて、安心したように話し出した。
「わからない――あのときウータンが、ピンク色の化け物に包み込まれているのを見て、なんとか助けたいって強く念じただけ。そうしたら不思議な力が湧いてきて、頭の中に凝縮して――あとは覚えていない」
「ケインが言うには、大きな光の玉が現れて、ものすごい勢いでピンクの膜にぶつかったらしい。それで化け物のバリヤーが解けたんだ」
「そう――あのとき光を見たような気がしたけど――」
「きみは念術を使ったんだよ。あのとき、きみの潜在能力が表に現れたんだ。ぼくにも経験がある。ぼくが火の念術なら、きみは光の念術だ」
ユーミンは怪訝そうにウータンを見たが、黙っていた。

家に戻ると、ケインとハーブが食事をしていた。ウータンとユーミンも食卓について、村の女性が持ってきてくれたご馳走を食べた。
「ジョーズが死んだから、海に魚が戻ってくる。漁も再開できる。これもきみたちのおかげだ。ありがとう」
食事が終わると、ハーブが言った。彼の脇腹と右腕は、白い包帯が巻かれていた。ケインが手当をしてくれたのだ。
「とんでもない。ぼくたちもハーブのおかげで、ユーミンを目覚めさせることができたんです。おあいこだよ」
ウータンが言って、みんなが笑った
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