第6章 ミサキの村

第6章 ミサキの村



(1)

ミサキの村は遠かった。
途中いくつもの町や村を通り抜けて、ウータンとケインは旅をつづけた。その間、ユーミンは、馬車の中でずっと眠り続けていた。
ウータンは、トマの医者にもらった栄養剤を、定期的にユーミンの口に注いでやった。そしてユーミンがいつも清潔でいられるように、一日1回は体を洗ってやった。汗の溜まりやすい腋の下や股間は、とくに念入りに洗った。体毛の無い肉体は、赤ん坊の肌のようにふっくらとして、淡いピンク色をしていた。
脚の間を洗っているとき、必然的にホーリー族のあの神秘的な部分が目に入る。ウータンはトマ王の体によって快楽の源を経験していたので、見ているだけで心臓がドキドキし、股間がムズムズしてきた。
ユーミンの割れ目は、王のそれに比べると淡いピンク色をして、初々しい風情があった。
そしてふと気が付くと、無意識にそこを指の腹で撫でていることがあった。あわてて指を引っ込めたが、意識の無い相手にそんなことをした罪悪感と共に、なにか抗しがたい本能的な欲望も覚えていた。

ようやくミサキの村にたどり着いた。
トマの城下町を出て7日が経っていた。
その村は、周囲を海に囲まれた岬の先端に、こぢんまりとした集落を形成していた。どの家も小さくて、貧しそうなたたずまいを見せていた。それでも漁村の、のどかな生活はうかがえた。さわやかな陽光のもとで、元気に飛びはねて遊ぶ子供たちや、洗濯物を干す女たちの姿が見えた。
ここの住民は海洋族といって、ヒューマン族とさほど変わらない。ただ男が長命であるのに対して、女は短命で男の半分の寿命――せいぜい長生きしても50歳くらいだった。
だから年取った男が多いのに比べ、女は若かった。他の特徴としては、水に潜ることが得意で、その気になれば15分も息を止めておくことが出来る。これは、彼らの生活の場が海の中だったことから、自然にそうなったのだろう。
また、男たちは非常に精力旺盛で、80歳を過ぎても子供を作る老人がいた。

ウータンたちが村に馬車を乗り入れると、人々はクモの子を散らすように逃げ去った。
広場で馬車をとめて、ウータンは周囲を見まわしながら言った。
「みんなはどうしたんだ?まるでぼくたちが、盗賊か何かのように」
「人見知りが強いんだろ。あれを見ろよ」
ケインがあごで指し示すほうを見ると、子供たちが家の陰から怖々とこちらをうかがっている。
ウータンは馬車からおりると、子供たちのほうに歩み寄りながら、話しかけた。
「やあ、ぼうやたち。ハーブって人を知らないか?」
とたんに子供たちが姿を消した。
ウータンは両手を広げ、間の抜けた顔でケインを振り返った。

そのとき、白髪の老人が家の段石に腰かけて、魚網の繕いをしているのに気づいた。がっちりした体格の老人だった。
ウータンはそちらのほうに歩いていった。
「あのう、すみません」
ウータンが声をかけると、老人が顔をあげた。歳の頃、60歳ぐらいだろうか。こんがりと日焼けした大きな顔とその半分を覆う白いあごひげ、グレーの瞳がものうげにウータンの顔を見あげた。
優しい目だった。ウータンは思わずその目に見とれた。
「何だね?」
老人が、白い口髭の隙間から、落ち着いた声で言った。深い響きのある、感じのいい声だった。
「ハーブって人が、この村に住んでいると聞いたんですが」
老人の目が警戒するように細まった。
「ハーブ?彼に何の用だね?」
「ご存知なんですね。教えてください、ハーブさんはどこに住んでいるんですか?」
老人はそれに答えず、胡散臭そうにウータンの顔を見た。
「わしは、何の用だと聞いているんだよ」
「じつは友達が意識を失って。そのう――ずっと眠りつづけなんです。だからハーブさんに助けてもらおうと思って」
「ハーブさんなら助けられるのかね」
「ええ。友達の意識を回復させるには、ムーングラスという薬草が必要なんです。海ツバメが巣をつくる、高い崖のうえに生えているそうです。ハーブさんなら、その薬草を採ってこれると聞きました」
「ふーん。で、きみの友達はあの馬車にいるのか?」
「ええ、10日以上もずっと眠りつづけています」

老人は、よっこらしょと腰をあげた。背はウータンよりも低いが、体重は倍以上ありそうだ。短い麻の服から突きでた手足は、レスラーのように太かった。
「ちょっと、友達を見せてくれ」
老人はそういうと、馬車のほうに歩いていった。ケインが警戒するような目つきで、老人を見守っていた。
「ほーう、ホーリー族だな」
老人は幌の隙間から、眠っているユーミンをのぞき見た。そしてひと目で、ユーミンがホーリー族だと見抜いた。
「それで、ハーブさんはどこにいるんですか?」
ウータンは老人の背後から聞いた。
「まずこの人を、家の中に運ぶことが先決だ。馬車の
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