第5章 トマ城の怪
(1)
3人は謁見の間に通された。
王座に小柄なトマ王が、泰然として腰かけていた。以前より太っているようだが、とても精力的に見えた。その横には痩せて背の高い侍従長のアッサムが、無表情に立っていた。一見したところでは、以前と変わったようすはなかった。
トマ王が声をかけた。
「ウータン、戻ってきたのか。また、一段と逞しくなったな」
「はい、王さま。王さまもお元気そうですね」
「して、父親は見つかったのか?」
「いえ、まだ見つかっていません」
ウータンは返事をしながらいぶかった。以前のトマ王なら、ウータンの父のことを、マリンと名前で呼ぶはずだ。
「ところで連れのふたりは何者じゃ?立派な体格をした僧侶とホーリー族の者とは、また妙な取り合わせじゃな」
トマ王はひと目でユーミンが、ホーリー族と見抜いていた。ホーリー族同士なら分かる何かがあるのだろうか。ウータンは訝りながらも、王の質問に答えた。
「ぼくの友達です。旅の途中で知り合いになりました」
「そうか。おまえとは積もる話もある。あとでゆっくりと話を聞こう。それまでは、この城で休養するがいい」
王との会見はそれで終わりだった。
一行は空いた時間を、城の中を見物してまわった。この城に滞在したことのあるウータンが、ほかのふたりを案内した。
彼らは城の1階から最上階まで、のんびりと歩きまわった。荒れ果てたアルメニア城を見てきた彼らにとって、生活感のあるトマ城の豪華さは、すべてが驚きの対象だった。
最後に3人は、城の最上部にある見張り台にあがった。衛兵がひとりいたが、客に気をつかって、離れたところに立っていた。
見張り台からは、トマ国の周囲の地形が一望できた。豊かな緑の森や湖、開拓された農作地や果樹園、折り重なった山岳地帯。ひとつひとつが、名匠の手による絵画のように美しかった。
はるか遠く、屏風のように連なる山並みのほうを指差して、ウータンがふたりに言った。
「ほら、むこうに陽炎のように浮かんで見える山脈が、アラバだよ。ぼくたちは、あの山を越えなければならないんだ」
ユーミンが額に手をかざして、遠くを眺めながら言った。
「ずいぶん遠くにあるんだなあ。どのくらいで行けるんだろう?」
「麓まで行くだけでも10日はかかるよ。それより、あの山を越えるほうが大変だ。高さが4千メートルはあるからね。それに、山の上の方が白いだろう?あそこは一年中、雪が積もっているんだ」
「じゃあ防寒着をたくさん用意する必要があるね。道はあるの?」
「さあ、どうだろう。前に人に聞いたことがあるけど、山を越えるのは命懸けだって。これまで何人もの人たちが、行き倒れにあってるそうだよ」
「――」
ユーミンが沈黙した。
それを見て、ケインが言った。
「おい、ウータン。ずいぶん勇気づけられる話だな。おかげでユーミンが、ずいぶん大人しくなっちまったぜ」
「ぼくはそんなつもりで言ったんじゃない。ただ、それなりの覚悟で行かなくちゃならないということさ」
言い訳するウータンの横で、ユーミンがすまして言った。
「ぼくは大丈夫だよ。ウータンの話を聞いていて、なんだかファイトが湧いてきたな」
「おやおや、王子さまが強がりを言って。――ところでウータン、ここの王さまってどことなく胡散臭いな。目つきがいやらしい」
「――」
「それに王さまの横に立っていたヤツ。痩せた男だ。あの顔は、何か悪巧みをやりそうな顔だ」
ユーミンが、衛兵のほうを見ながら注意した。
「しーっ、ケイン、言い過ぎだよ。それに声が大きいよ」
「聞こえやしないよ。でもあの王様、おれたちに監視をつけているぞ。城の中を歩きまわっているあいだ、尾行がついていたからな」
ユーミンもケインに同意した。
「ぼくも気がついていた。ウータン、どうしてだろう?」
ウータンも同じ疑問をもっていた。侍従長のアッサムが自分に敵意を持っていることはわかっていたが、トマ王の変わりようは戸惑うばかりだった。
よそよそしくて、冷たくて――そこには彼の知っている、子供のような無邪気さや、人類愛にあふれたトマ王の片鱗は、わずかも感じられなかった。
ボッシューさんに聞いた、高い税金や若者たちのこともある。
そういえば、城内に若者たちの姿は少なかった。町の若者たちはどこにいるんだろう?
ウータンはふたりに言った。
「ぼくも何かおかしいと思っているんだ。あとで王様と会ったときに、確かめてみようと思う。だからふたりとも、それまでは充分に気をつけるんだよ」
ケインがまじまじとウータンの顔を見た。
「ウータン、何か隠しているんだろ?おれたちは仲間じゃないか。気になってることを、ぜんぶ話せよ」
ウータンは衛兵のほうを見た。衛兵は離れたところに立って、ときどき横目でこちらのようすをうかがっている。
彼は振り
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