(4)
赤い屋根と風見鶏のある家を見て、ウータンはなつかしさに目を潤ませた。
しかし、そこには見知らぬ家族が住んでいた。もともと借家だったので、仕方のないことだった。
丘の上にある母の墓は変わりなかった。墓石を掃除して母の好きだった草花を捧げると、ウータンは墓に向かって両手を合わせた。
(母さん、父さんにはまだ会えていないけど、きっと見つけ出すよ。それまで寂しいだろうけど待っていてね)
ウータンが祈りを捧げるあいだ、ケインとユーミンは黙って背後に控えていた。
そのあと彼らは、ウータンの隣人だったボッシューの家に行くことにした。ボッシューは以前より小さくなった感じで、髪の毛もほとんど白くなっていた。涙のにじんだ茶色の目が、なつかしそうにウータンを見あげた。
「おお、ウータンか。しばらく見ぬ間に、えらく逞しくなったな。連れがいるのか?ここじゃなんだ。さあ、中に入りなさい」
3人はボッシューの家に入って、勧められるまま、食堂のテーブルについた。ボッシューがいそいそと動きまわって、客のために飲み物や食べ物を用意した。
「最近、この町は品不足でな。たいしたものはないが、さあ食べてくれ」
ボッシューは3人が食事をするのを、目を細めて見ていた。
「ウータンが急に旅立ったので、心配していたんだ。いったい、今まで何をしていたんだね?」
老人の質問に、ウータンは父親を探していたとだけ答えた。それから旅の途中で仲間になったと言って、ケインとユーミンを紹介した。
食事の終わったところで、ウータンは老人に聞いた。
「ところで、ボッシューさん。この町はどうしちまったんですか?なんだか様子がおかしいですね」
老人は悲しそうに頭を振った。そしてポツリと言った。
「――王は変わられた」
「王さまが変わったって、一体どういうことですか?」
「王のなされることは、まったく心変わりされたとしか思えない。以前は、町の住民のことを大切にされる、心のお優しい方じゃったのに。今では、税金を3倍にしたり、町の若い男たちを城に召集したり、いったい王がなにをお考えなのか、皆目見当がつかない」
「どおりで町に活気がないわけだ。どうして、若い男たちを城に集めているんですか?」
「それは知らん。とにかく、この町の15歳から20歳までの男は、城勤めをしなければならん、というおふれが出たんだ」
「ひどいな。ぼくと同じくらいの人たちが、城でなぜ必要なのだろう?」
ウータンは考え込んだ。彼の知っているトマ王は――。
そこで彼は、ハッとした。最後に会ったときのトマ王は、人が変わったように見えた。
ウータンが顔をあげると、トマ王についてすでに話を聞いていたケインが、そっと目配せした。
ボッシューが立ちあがりながら言った。
「とにかく、今日はこの家に泊まりなさい。狭いところじゃが、旅の疲れは取れるだろう。それに、わしもウータンと久しぶりに話がしたい」
その夜、ウータンはボッシューと、遅くまで話をした。ケインとユーミンはふたりに遠慮して、先に寝ていた。
昔の思い出話は尽きなかった。森で馬を乗りまわしたこと、剣術の稽古をしたこと。最後にボッシューは、ウータンの顔を見ながら言った。
「おまえたちが何の目的で旅をしているのかは知らんが、よっぽど重要なことらしいな」
「旅の目的は、ぼくの父さんを探すことです」
「隠さんでもいい。おまえの連れを見ればわかる。とくに背の低い男のほうは、ホーリー族だとすぐわかる。なにか訳が有りそうだ」
ウータンは黙っていた。
「わしはそれを聞くつもりはない。あのふたりの目は、おまえと同じ誠実な目だ。おまえたちが、間違ったことをやろうとしているのでないことだけは分かる」
ボッシューは立ちあがると、鞘に入ったサーベルを持ってきた。柄に湾曲した鉄の防具がついた薄刃の剣で、昔ふたりが剣術の稽古のときに使っていたものだ。
「この剣を使って稽古をしたときのことを、覚えているか?」
ボッシューは、サーベルをウータンに手渡しながら言った。
「もちろん、覚えているよ」
ウータンは立ち上がると鞘を抜き、昔教えられた通り、手首をひねって剣を振ってみた。
「刃がきれいだけど、ずっと手入れをしていたの?」
サーベルを操りながら、ウータンが聞いた。
「ああ、毎日な。それが剣士の心構えだ」
ボッシューは目を細めて、ウータンの仕種を見ていた。
「その剣はおまえにやろう」
ウータンがボッシューの顔を見ると、老人はニヤッと笑った。
「もうわしには用済みだ。おまえが持っていたほうが、役に立つだろう」
「でも、こんな大切な剣を――」
「気にするな。どこにでもある、平凡なサーベルだ。おまえの体格からすれば、もっと刃の厚い、中型の剣のほうが合うと思う。しかし、いい剣が見つかるまで、そのサーベルがおまえの身を守ってくれ
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