(3)
3人はアルメニア城をあとにして、トマ国に向かって旅立った。ユーミンは、城で見つけた弓と矢筒を肩にかけていた。
「ユーミン、弓を持った姿がさまになってるぞ。ところで、実力は伴ってるのか?」
道中、ケインがユーミンをからかった。
「じゃあ試してみますか?」
「よし、おれも弓は得意だ。どっちがうまいか、勝負だ」
ふたりは道を外れて、木立に入った。
ウータンが審判役をすることにした。彼はヤツデの葉を取ってきて、小刀で大木に突き刺した。
「じゃあ3本ずつ矢を射て、それで勝負だ。ケイン、きみからやってくれ」
ケインは弓を構えると、弦を引き絞り、慎重に的を狙った。しかし彼は、すぐには矢を射なかった。
ウータンが焦れて、声をかけた。
「ケイン、早くやってくれよ。日が暮れちまう」
「うるさい。集中してるんだ。話しかけるな」
ケインはそう言うと、ふたたび的に集中した。彼はたっぷりと時間をかけて、3本の矢を射た。最初の一本は的を外したが、残りは見事にヤツデの葉に命中した。
ケインはどうだというように胸を反らして、ユーミンに弓を渡した。
ユーミンは、ウータンが木に刺さった矢を抜くあいだ、人差し指を湿らせて風向きを調べていた。
用意が整うと、ユーミンはほとんど無造作に、次から次にと矢を射た。矢はすべて、ヤツデの葉のほぼ中央に突き刺さった。
ウータンが驚いて言った。
「すごい!ユーミン。名人芸だよ」
「ふん、おれだって、ウータンが邪魔をしなければ、あれくらいはやれたさ」
ケインが負け惜しみを言った。
ウータンがにやにや笑いながら言った。
「じゃあ、もう一度やってみるかい?」
「道草を食った。出かけるぞ」
ケインはブスッとしていうと、さっさと道に戻った。
道すがら、ケインがユーミンに向かって言った。
「ところでユーミン、おまえのその堅苦しい話しかたは、直したほうがいいぞ」
「えっ、わたくしの話しかたって、そんなにおかしいですか?」
ユーミンが怪訝そうに聞いた。
「ああ、道中会う人間は、物騒なやつらが多い。そんなお上品な言葉使いじゃ、いつ危険な目に会わんともかぎらんぞ。だから、もっとくだけた話し方にしろ」
そう言うと、ケインは同意を求めるように、ウータンを見た。
ウータンは、ユーミンの言葉使いがおかしいとは感じなかったが、ケインのいうことも、もっともだと思った。そこで言った。
「急に話しかたを変えるのは無理だよ。じょじょに慣らせばいいさ」
ユーミンがうなずいた。
「分かりました。わたくし、これから努力して、言葉使いを変えるようにいたします」
すかさずケインが言った。
「ほら、その言いかたがいけないんだよ。わたくしとか、いたしますって言うのはやめろ。おれとかぼくにしろ」
ユーミンはときどきイジリを思い出して、塞ぎ込むことがあった。
そんなとき、ウータンとケインはあえて気づかないふりをした。へたに慰めても、何の役にも立たないと分かっていた。彼の心の問題は、彼自身で解決することだった。
それでも、旅が進むにつれて、ユーミンはじょじょに明るくなってきた。ときにはウータンらの冗談に、声をあげて笑うことも増えた。彼の本質は、明るい性格だったのだ。それに言葉使いもこなれてきた。
ウータンは、ユーミンが自分よりふたつ年下と知って、少し気安い気分になっていたが、それでも年配者と接しているような気持ちも、拭い去れなかった。
ホーリー族特有の年齢の読みにくい風貌や、背の低い小太りの体型は、どうしてもトマ王や隣人のボッシューさんを連想するからだ。
逆にまた、ユーミンの傍にいると、自分でも理解できない感情が湧いてくる。それは、心ときめくような、不思議なものだった。
長い旅の末、彼らはトマの国にたどり着いた。
城下町に入ったとたん、町を離れて半年ほどなのに、ウータンは懐かしさがこみあげてきた。なにしろ18歳まで生まれ育った町だ。
ところが町のようすは、どことなく雰囲気が変わっていた。
しばらくして、ウータンはその理由に気づいた。道行く人々に、活気が無かったのだ。それに町自体も、どことなく薄汚れていた。通りのあちこちにゴミが堆積し、それを野良犬があさっていた。
通りを歩きながら、ケインが話しかけた。
「おい、ウータン。おまえの生まれた町は、えらく陰気なところだな」
「前はこんなではなかった。ずっと清潔で、活気のある町だったよ。どうしちまったのかなあ?」
ウータンは心細そうに言った。
「あっ!あのお婆さん、かわいそう」
ユーミンが立ち止まって、通りの向こうを見た。
頭に黒い布をかぶった老婆が、人にぶつかって地面に倒れた。彼女は足が悪いらしく、杖にしがみついて立ちあがろうともがいていた。そばを通る人々は、彼女を助けようともしなかった。
ユーミンは通りを横切って、老婆に近寄っ
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