(3)

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翌朝、ウータンは王の謁見室に通された。
彼は城の中に入るのは始めてだったが、見るものすべてが驚きだった。とくに謁見の間の豪華さは、彼の想像をはるかに超えていた。部屋はひろびろとして、天井はあくまで高く、大理石の床は鏡のようだった。
たくさんの彫像が立ち並び、色とりどりの生け花を飾った大きな花瓶が、いたるところにある。
ウータンはものめずらしそうに、まわりのようすを見ていた。
部屋の周囲には、きらびやかな服装で着飾った女性たち。真紅や紺青の制服を着て、光り輝く槍をもつ近衛兵たち。白地に金の刺繍をほどこした服を着た文官たちがいた。
彼のいるところから、真紅の絨毯が敷かれた階段がうえに伸びていた。そこには金や宝石で飾られた大きな王座があり、トマ王がちょこんと座っていた。トマ王は赤いガウンを羽織り、頭には王冠をかぶっている。いまの王さまには威厳があった。ローブ一枚で山賊に捕まっていたときの滑稽さは、みじんもない。

「ウータン、これへ参れ」
王座からトマ王がおごそかに命令した。
ウータンは臆することなく、階段をのぼり、王さまのすぐ目の前に立った。王座の横に立つ侍従長が、近寄り過ぎだというように、ウータンに向かってシッシッと手を振った。
「アッサム、おまえは下がっていろ」
王さまが手をあげて侍従長を遮ると、ウータンを見あげた。
「昨日はおまえのお陰で助かった。ほうびを取らす。なにか望みのものはあるか?」
ウータンは肩をすくめた。
「べつにありません、王さま。ぼくは旅に出ようとしていたところです。もう行ってもいいですか?」
「ほうびはいらんのか?欲のない奴だ。まあそう言わずに、これを受け取れ」
そういうと、トマ王は腰帯に差した小刀をウータンに渡した。弓形に反った鞘と柄は、金銀宝石で装飾されていた。
「それで、どこに旅立つのじゃ?」
物珍しそうに小刀をいじっているウータンに向かって、トマ王は質問した。
「わかりません」
「わからん?目的もなしに旅に出るのか?」
「目的はあります。父をさがしに行くのです」
「父親の名前は何という?」
ウータンは少し躊躇したが、素直に答えた。
「マリン・モリスと申します」
「なにっ!じゃあおまえはマリンの息子か?」
「はい、王さま。父はぼくが5歳のときに旅に出て、一度も家に戻ってきていません」
トマ王は、ウータンの顔をしげしげと見あげていたが、さすがに疲れてきて、首をぐるりとまわした。
「どうもおまえと話していると、首が疲れてかなわん。湯浴みでもしながら、おまえの話を聞こう」
そういうと、王さまは立ちあがった。

ウータンは王さまといっしょに、王宮内の広いプールに入った。白い大理石の浴槽に、澄みきった水を満々とたくわえ、ライオンの彫像の口からは、新たな水が絶え間なく注ぎこまれている。水は冷たくなく、人肌の快適な暖かさだった。
「どうだ、ウータン。いい気持ちだろうが」
トマ王は、水の中に設えられた寝椅子に寝そべりながら、のんびりと話しかけた。その体は、まるであどけない幼児のように、ピンク色に染まっている。
「はい、王さま。体中の疲れが、いっぺんに取れていくような気がします」
ウータンも寝椅子に横たわって、気持ち良さそうにあくびをした。プールの一面は外に開けたバルコニーに面していて、晴れわたった青空が見えていた。
トマ王は言った。
「こうやって水に浸かっているのが、わしの最大の娯楽だ。家臣たちとの面談も、ときどきここでやるんだ」
ウータンは、気になっていたことを王に聞いた。
「王さまは、ぼくの父をご存知なんですね?」
「知ってるどころか、彼はわしの親友だった」
トマ王は懐かしい人を想うように、天井を振りあおいだ。
「マリンは高潔な勇者だが、小さな草花や生き物も愛する心を持っていた。わしはあの男の、そんなところが好きじゃった」
ウータンはたずねた。
「あのう――父はなんで旅に出たのか、王さまはご存知ですか?」

トマ王は、すぐには返事をしなかった。王は寝椅子から立ちあがると、水の中を歩いてバルコニーに向かった。そこで縁石に手をついて、外の大空を見あげた。
幼児のようにふっくらとした王さまの後ろ姿を眺めていて、ウータンはふと気づいた。お尻の右上に、星の形をした赤い痣がついていた。
王さまがポツリと言った。
「マリンはオーディンの玉(ぎょく)を求めて旅に出た」
「オーディンの玉ですか?」
ウータンが不思議そうに聞くと、トマ王は振り返った。
「ああ、オーディンの玉だ。東の国、アルメニアの領地にある光の塔に祭られていた宝玉だ。伝説によれば、その宝玉には、この世界の秩序を守る力があるという」
王は縁石に腰かけると、短い足で水をかきわけた。
「わしは、その伝説が真実かどうかは知らん。それはともかく今から15年ほど前、ア
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