愛欲の海(5)

60代の元会社役員と30代の英語教師の愛の話

 愛を左右するホルモンの話

愛を左右する物質は、本当にあるのでしょうか。男の好きな私には、興味をそそられる話です。人体には、頭の先から足の指先まで、性感帯が備(そな)わっています。もちろん、脳が脳内ホルモンを使って、その情報を自動的に処理している訳です。

目の前に好みの年寄りが横たわっています。相手も私がタイプで、気があります。だから、私の手が肩に触れ、敏感な乳首に触れると、激しく反応します。乳首はピンク色で、この爺さんが、「あばづれ」でないことを証明しているのです。

「アッツ」と声が上がり、身体が震えます。つまり、皮膚は、人間の身体全部を覆い、セックスの喜びを、相手と自分に伝える、大事な伝達器官なのです。爺さんは次の好意を期待して、身じろぎもしないで、じっと待っています。

愛撫は身体を震わせ、心を満足させる手段です。男好きの私にはよくわかります。セックスの感度は、性感帯の感度に比例するのです。触れただけで身体を震わせる人は、感度が抜群な人です。そばで寝てみて相方の爺さんは、もちろんセックス巧者だと思いました。

皮膚の接触は脳に伝わり、ホルモンが分泌され、気持ちよくなります。愛撫は、相方の技巧次第なのです。性感帯を一人で刺激しても、快感は大して高まらない。歓びに震える相手の姿を見て、こちらの心も打ち震えるのです。それが愛の実際だといってよい。

男性志向の強い人物は、セックスの感度がいいといえます。自慰、マスターベーションの快感を知ったのは、7歳の時のことです。誰に教えられることもなく、白濁した精液がパンツを濡らし、驚いたのを憶えています。性的な成熟は早い方だとといってよいでしょう。

爺さんに聞いてみました。「儂(わし)か。おれも7歳か、8歳の時だったと思う。」母親にそのことを言うと、黙ってパンツを換えてくれました。悪ガキに、センズリが気持ちいいと話す奴がいますが、家では、その話はタブーでした。父親が厳しかったからです。

 おやじさんの身体

惚(ボケ)る前に、おやじさんの身体についても、書いておきます。身体全部が性感帯のような、珍しい人でした。瞼(まぶた)、耳、唇、喉(のど)、どの部分も反応ました。物事を隠さない人だから、快感が良ければ、「ああ、いいっ。」と声をあげます。性感帯は磨けば磨くほど、敏感になる例です。その事は言わなかったが、すぐに分かりました。

キス、接吻のテクニックは、抜群でした。昔の恋人あたりが伝授したのでしょう。軽い口づけから、舌を絡ませる本格的な接吻まで、内容は多岐で、相手により変わります。キスが好きで、キスを大事にする人。本当に好きな人とだけやると、徹底していました。

無我夢中で舌を絡(から)めたら、歯に当たって怪我をすることもあります。口内炎ができたと言って、内科の医師に診てもらうと、強い抗生物質をくれました。医師にはわかっている筈です。黙って薬をくれますが、本当の見立ては、細菌の感染予防なのです。

爺さんの裸体をまっすぐに見たことはありません。身体を合わせた時に見える、断片的な画像を並べてみて、脳内で全体像を浮かべてまます。小さい身体で、私の身体に載るのは、いつも爺さんです。薄暗いランプの中に、小柄な爺さんの裸が、浮かび上がります。

「なで肩」ではなく、衣紋(えもん)かけのような「いかり肩」でもない。普通の形の肩です。わくわくします。胸には筋肉がついていますが、太った関取型ではない。浅黒い象牙(ぞうげ)色。白い肌とマッチして、実に艶(なま)めかしく、汗で光ります。

旅行は逢瀬(おうせ)で、身体を重ねる度に、関係は深くなりました。爺さんの一番の性感帯は、やはり乳頭でした。次に尻の奥、肛門括約筋の奥の奥です。乳頭には触れただけで、快感が走り、ビリッと感じた時の顔が、なんとも素敵で、可愛いのです。

腋(わき)の下も、秘密の性感帯の一つです。瞼(まぶた)の皮に触れると、あっとうめきます。そこの秘所の一つでした。後ろの割れ目を舌でたどると、肛門の入り口に達しますね。感に堪えない、よがり声があがります。どこを突けばいいか。初心者には難しい課題でした。

 男のセックスのよさ

「男のセックスは本当にいい。」爺さんは、そう感じ、そう断言しました。晩年は、好きな男と暮らす日々でしたから、思い残すことはなかったはずです。絵筆を最後まで離さない人でしたが、最後に握っていたのは、絵筆ではなくて、小型カメラでした。

気に入ったものや、風景を撮影しては、作品に反映させていきます。花でも鳥でも、変わった色彩は、カメラで撮る。スケッチするのが面倒になったからだと思いましたが、そうではなかった。5Bとか6Bとかの鉛筆で、素早く書く。その技は老いても変わら
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