読切小説
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ほぐす
『少年愛の美学』を書いた稲垣足穂は、希代の作家と言える。彼は記述の中で、A感覚、V感覚、P感覚、と記号化された性的感覚を唱えている。
そこでは、男性器の性的感覚を表すP感覚は、女性器の性的感覚を表すV感覚の単なる裏返しにすぎないとされ、そのV感覚も肛門感覚を表すA感覚の代理の感覚にすぎない、としている。
しかもそれを単なる性的な事象にとどまらず、あらゆる文化現象に広げて、A感覚的なるものは芸術的、倫理的なものの最上位にあると論じている。
かなりユニークかつマニアックな論であるが、稲垣足穂がそれだけお尻やアヌスの愛好者であったということであろう。
足穂は少年愛の美学の文中で書いている。
――お尻とは、人体の中で、最も愛嬌のある、福々しい、同時にいついつまでも齢を取らないような部分――相撲取りのおしり、水兵のおしり、ホテルのギャルソン(ボーイ)のおしり、角帯を締めた船場の丁稚のおしり――
とお尻について延々と述べている。
またアヌスについても、
――あたらしい喜びを与えてくれる謎めいた穴であり、タブーを破ることでさらに刺激的になる性の香辛料――
としている。

私自身もお尻とアヌスの愛好者であるが、稲垣足穂ほど広範かつ専門的な知識は持ち合わせていないので、とりあえず、おいしくいただくにはどうしたら良いか、より現実的な事に限って論じてみる。

肛門性交は、本来下向きに開くようになっている括約筋を、外側から内側へ突破するのであるから、当然、慣れるまでは苦痛が伴う。
この対策については江戸時代の文献にも、衆道の仕込みとして数多く書かれている。
まずは棒薬の使用である。棒薬とは、長さ8センチほどの木に綿を巻き付けて、勃起時の男茎ほどの太さにする。それに胆ばん(銅の硫酸塩鉱物。青色、半透明)を胡麻油で溶いて、巻き付けた綿に塗ったもの。
今で言う、張り型、ディルドのようなものである。

一方、原初的な指を使っての方法も、書かれている。
『艶道日夜女宝記』には、図とともに、指を使って行う方法が詳細に説明されている。
――いちばん最初は、親方が小指に脂薬を付けて挿入する。滑らかに出入りするようになったら、2日ほど間を置いて薬指を差し込む。
抜き差しがうまくいったら、1日置いて人差し指を入れて訓練し、よく入るようになったら翌日から中指を使う。次いで親指を使う。慣れてきたら、人差し指と中指の2本で抜き差しする。
そして習熟したところで、本物の男根を嵌入する――
なんとも用意周到な鍛錬であるが、本物を入れるまでに1週間ほどかかりそうだ。



さてここは、ある温泉宿の離れ部屋。始めて社内旅行に参加した若手社員は、部屋に呼びだされて部長の前でかしこまっていた。
宴席で目を付けていた若者を前に、酒の入った部長は自制心を無くしていた。
やおら社員を組み敷き、その小柄な身体から浴衣を引きはがして、「四つん這いになれ」とひとこと命令した。
あきらかにセクハラ・パワハラであるが、この当時はそんな概念などまだ無かった。
従順な社員は部長に命じられるまま、膝を立てて尻を後ろに突き出す姿勢になった。
小振りな尻だが、意外にも肉付きが良く、若々しい艶があって、谷間の切れ込みも深い。社員は恐怖に震えていた。雌犬のように四つん這いになって、尻を開いたあられもない姿を強要されると、心までも剥き出しにされたような気分になる。
そこを更に、肉厚の手が強引に、双丘を左右に開いた。
「ほう、そそられる眺めだ」
敏感な部分に、部長の荒い息がかかる。

初心な蕾の襞が、横に広げられていびつになり、わずかに口を開きかけている。
その開きかけた皺の合わせ目に、舌先が割り込んだ。
「ひっ!いやっ――」
秘肛を舐められ、若者が思わず腰を引きかけると、強い力でぐいと戻された。
「じっとしてろ!」
淫らな舌ねぶりが始められた。蕩けたようにやわらかい粘膜を、分厚い舌先がぬめぬめと舐めまわす。
若手社員の中で、恐怖心に性的な感覚が入り混じってくる。
肉襞がざわめき、快感が弱電流となって、股間から背骨伝いに駆け抜ける。
「ああっ――うっ――ああ、もう――」

淫らな舌が退いたと思うと、今度は指による痴戯が始まった。
双丘の狭間にオイルが垂らされ、トロリとした透明の液体が谷間伝いに流れる。それが菊襞にさしかかったところで指が参加して、押し揉むように蕾を愛撫する。
皺のひとつひとつを絵取って指が動く。
ふいに指先が肉の窪みにもぐり込んだ。
「ひっ!」
若い秘肉が無意識に反応して、指を締め付ける。
部長の太い指は、深く侵入せず、括約筋の抵抗にあうと、ゆっくりと後退する。
指にからみつく粘膜が外に引き伸ばされ、離れ際にプッと吐息をつく。
ヌプッ、ヌプッ、ヌプッ――指が浅く、何度も抜き差しする。
そして不意に、グニューッと内部深く侵入する。
「ああっ!あ――ああ」
社員は喘ぎながらも、遠い昔のことを思い出していた。腹痛で保健室に行ったとき、パンツを下ろされ、浣腸の前に、学校医がお尻の穴に指を入れたことを。
オイルで潤された敏感な秘口を、湿った音を伴って、部長の太い指が抜き差しする。
固く閉ざされていた菊門は、トロトロにほぐされて、どんな太いモノでも受け入れられそうな様相だ。

今や、純朴な若手社員の貞節は、風前の灯火。ああ誰か、この悪徳部長を懲らしめる者はいないのか。
この続きは、いずれまた。
22/09/21 19:53更新 / 神亀

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