| 戻る / 目次 / 次へ |
(10)一期一会 |
|
愛川孝志はタイのバンコクに来ていた。思いがけず、大きなゴルフコンペで優勝して、3泊5日のタイ旅行の券が当たったのだ。
季節は2月、こちらでは乾季の終わりだが、穏やかな天気が続いていた。旅行の参加者は20名ほど、皆、孝志と同様、国内のゴルフコンペの優勝者たちだ。 機中泊でタイに到着すると、そのままバンコク郊外のゴルフ場でプレーし、2日目はクルーズ船に乗ってチャオプラヤー川沿いの宮殿や寺院を観光した。 現地にいる間は、ノボルという名の日系タイ人のガイドが、ずっと付き添っていた。50代後半、生真面目そうな男だが、年齢が近いせいか、孝志と非常に気が合って、いつも二人はそばにいた。 3日目は自由行動の日だが、ノボルが1日中、孝志に付き合ってくれた。市内観光がてら土産の店、タイ古式マッサージの店、スパへと行った。 これまで何度か体が触れあい、孝志はこのタイ人が、自分に性的な愛情を抱いていることを知っていた。 その夜、案内の礼に、ノボルをディナーに誘った。明日の別れが近づいたことで感傷的になったのか、ノボルは胸の内を素直に話しだした。 「一期一会という日本語を知っています。タカシとの一生に一度の巡り合い、これを大切にしたいんです。――今夜はわたしと過ごしてください」 二人は孝志の泊まるホテルの部屋に戻った。スパで体を清めていたので、そのままベッドに直行した。ノボルは固太りの中肉中背、裸になると体毛の無い滑らかな肌をしていた。 前戯もそこそこに、ベッドの縁で仰向けになるノボルの膝頭を胸元に押しつけ、亀頭を蕾にあてがった。そのままズググと押し込んだ。 ノボルは、本能的にキュッとすぼめた秘肛を、無理やりこじ開けられる痛苦に、顔をゆがめて耐えている。 あと少しのところで、狭い括約筋の抵抗にあった。 異国の交合が、孝志を荒ぶる気持ちにしていた。思い切ってグイと腰を送りこむと、亀頭がズルッと内部に入り込んだ。 「ひっ!ひいいーっ!」 ノボルが悲鳴を上げた。 ![]() いったん道をつけると、ゆっくりと退いた。カリ首のひろがりが、肉襞をかきむしるように擦る。抜け出るとき、ズボッと音がした。 ノボルの体がホッと弛緩する。その油断したところで、一直線に突き入れる。 「ひいいっ!」 再び悲鳴があがった。 そのまま容赦なく、抽送を繰り返した。狭い腸壁をこすり、えぐり、かき回している内に、男の体が急速になじんでくるのを覚えた。 滑脱がなめらかになる。ノボルの顔が、快感を得ている表情に変わってきた。 そのうち、ヒクッと小刻みな痙攣を起こしだした。動きに変化をつけた。ゆるやかに抽送をくりかえし、ふいに腰を入れ、激しく突いた。 「ああっ!いいーっ」 ひときわ高く声をあげる。ノボルの感度が深まったようだ。 面白いように反応する相手に、孝志は力を得てグイグイと突き上げた。抜き差しを繰り返すうちに、男のひくつく痙攣から、快感が体中を走り、突き抜けていくのが分かった。 ノボルの体が反り返り、と同時に中のオトコが脹れあがった。 ドクンッ、ドクンッ――脈打ちながら、激しい奔流が起こった。 後藤剛はバスに揺られながら、窓外を流れる殺風景な景色を眺めていた。 昨年秋に予定されていた町内旅行が、天候その他の理由で流れ流れて、年明けの2月という季節外れの鬼怒川温泉行きとなった。それに本来なら陶仙房の店主、愛川孝志が参加すべきところ、彼はタイ旅行のため、乞われて剛が参加することになったのだ。 隣の席には大山会長が座っていた。旅行の組み合わせで、今夜、同じ部屋に泊まることになっていた。二人は陶仙房で何度も顔を合わせたことはあるが、親しく話したことは無かった。それにもともと二人とも口数が少ないほうなので、今も会話が弾まない。 ホテルに着き、それぞれの部屋に荷物を置くと、全員、大浴場に向かった。二つに区画された大きな浴槽だったが、他の観光客もいたので混み合っていた。 後藤と大山は体を洗い、湯に少し浸かっただけで、早々に引きあげた。それでもお互いの裸を見たことで、ともに親近感が湧いていた。 剛は以前、大山が3階のマスターの部屋から、朝帰りする姿を見たことがある。そのときは二人の関係を疑ったものだが、浴場で大山の豊満な白い肉体を見て、その思いは確信に変わっていた。 宴会が始まり、二人は酒が入ったことで気が弛んで、会話も進んだ。そして割り当てられた部屋に戻る頃には、すっかり打ち解けていた。 「これからどうです、もう一度、風呂に入りますか」 剛の誘いに、大山は一も二も無くうなずいた。 二人は大浴場から外に出て、岩で組まれた露天風呂に入った。大きな庇が張り出し、下は鬼怒川の流れがあった。 あれだけ混んでいた入湯客も、今は数えるほど。二人はのんびりと湯に浸かっていた。暗い湯面の中、裸電球に照らされた大山の白い豊満な肉体が浮き出て、剛の好き心を誘った。 一方、大山も、さきほど垣間見た後藤の立派な男根に心躍らせていた。マスターほどではないが、エラの張ったズル剥けの亀頭は、思わず頬ずりしたい欲望に駆られるほどだ。 二人は湯の中で目が合って、お互いの欲望を感じ取っていた。 部屋に戻ったときには、布団が敷かれていた。 大山が浴衣を脱ぎ、下着も脱ぎすてて裸になった。暖房が効いていたので、寒くは無かった。彼はマスターと付き合うことで、自分の体の魅力を知っていた。 体毛がうすくふっくらとした肉体と、手に吸いつくような、しっとりとした色白の肌である。 そして今、彼につられて浴衣を脱いだ後藤の股間を見れば、自信が膨らむ。黒々とした陰りから、早くも頭をもたげかけた太い男根――。 大山はカバンからラブオイルを取り出すと、黙って相手に渡し、それから上布団を剥いで、うつ伏せに尻を高く掲げた。 左右に開かれた色白のふくよかな双丘、少し色付いた柔らかい狭間、中心部のどことなくとぼけた表情をした菊の紋――。 それらを目にし、剛の好色が一気に上昇した。彼は大きな尻の壮観に引き寄せられ、密やかな菊門に吸いついた。それから舌と指を使ってほぐした。 余りに昂り過ぎて、余裕を失っていたので、性急に求めた。怒張した先端を蕾にあてがい、ググっと突き入れた。 あまりほぐされずに貫かれたので、大山があごをのけ反らせて苦しんだ。 剛はひるまず一直線に重い腰を押しつけた。入りきらずにいた肉根が、ズズッと付け根まで収まった。 圧倒的なやわらかい温もりが、全長を包み込み、心地良く締めつける。そのまま動かずにじっとしていると、とろけるような肉襞が、怒張した肉根を奥深く咥え込んで、吸いつき、生暖かく濡れてうごめく。まるで無数のミミズに絡みつかれたようだ。これまで経験したこともない触覚だった。 そのデリケートな快感に、動くのがもったいなかった。 今度は大山を仰向けにして、大きく両足を開かせた。大きなタマタマと太短い陰茎が、会陰部を塞ぐように鎮座している。 尻の下に座布団を折りたたんで敷き、位置を合わせると、ズグズグッと突き入れた。すっかり広げられていたので、驚くほどなめらかに入る。 今度は余裕をもって、抽送を楽しんだ。 「ああっ、いいっ、いいっ――」 一突き一突きに、大山が善がり声をあげだした。 なおも腰をうねらせていると、感度が高まったのか、大山の豊満な肉体が、ときおりビクッと痙攣する。 肉の接触する湿った音、善がり声、荒い息づかい――鬼怒川温泉の夜の一室で、秘めた行為が延々と続いた。 トシは屋内プールに来ていた。 陶仙房でのちょっとした会話で、大山会長がジムに通っていて、泳ぎが得意だと聞いたのだ。泳ぎのまったく出来ないトシの、負けずきらいがムラムラと湧きあがった。 ――あんなデブに出来るのなら、ぼくに出来ないはずはない。 なじみ客の中に、元大学の体育教師で菊川という、60代半ばの男がいた。今は地元の水泳教室で泳ぎを教えている。 トシはこの客に頼んで、その水泳教室に通うことになった。 教室の生徒は大半が子供だった。そしてスタッフ陣は20代の若者たち。その中で、40代のトシと60代の菊川は、浮き立って見えた。それでもトシは、子供たちに混じって頑張った。子供のときは合気道の名人だったという自負もある。 それから半年後、トシは普通にクロールを泳げるようになっていた。そして今日は、その合格証を貰う日だ。ここの水泳教室は珍しく、優・良・可の3段階評価で合格証を渡している。 「それで、優はもらえるんでしょうね」 トシの問いかけに、菊川はデスクの向こうから、おもむろに顔をあげた。 「優は無理だな。良だ」とそっけない返事。 (それじゃあ困るんだ) 昨夜、会長に向かって威張って言ったのだ、明日は優をもらって来るって。もし優でなかったら――会長の勝ち誇った顔が目に浮かぶ。 そこでトシは身を乗り出して、熱心に口説いた。 「菊川さん、お返事される前によーく考えてください。今、一人の男性の運命が決まろうとしているんですよ。優でなければ、ぼくの顔が立たないんです」 「でも、それはわたしとあまり関係ないことだと思うな」 「おおいに関係あります。菊川さんとぼくはこの半年間、プールで深い信頼関係を築いてきたじゃありませんか」 菊川は、好色そうな目つきでトシを見た。 「ほう、深い信頼関係を築いてきたのなら、きみはわたしの言うことは、何でもする覚悟はあるのかい」 トシはきっぱりと言った。 「もちろんです。優を頂けるのなら、何でもします」 菊川は舌なめずりした。そして、ゆっくりと言った。 「じゃあ今夜、私のマンションに来なさい。きみに優を与えるには、どうしたらいいか、そのへんのところを、じっくりと話し合おうじゃないか」 (警告!ずるい大人が、初心な若者を毒牙に掛けようとする、危険ランプが点きました)なんて声が――聞こえるわけない。 トシは初心でもなければ、若者でもなかった。彼は内心ほくそ笑みながら、素直にうなずいたのである。 その夜、ベッドで話し合い(?)が終わったあと、菊川は満足して言った。 「どうだ、わたしの野生の雄叫びは」 (不合格です。優良可のどれにも該当しない) 思わず出かかった言葉をのみ込んで、トシは感動したように言った。 「すごいです。もう、お尻が壊れるかと思いました」 ――*―― 人は生と死の狭間で生きていく。ここ陶仙房でもいろんな経歴の人間が出会い、葛藤し、和解し、そして去って行く。長い目で見れば、すべて一期一会のようなものである。それは陶仙房に来るなじみ客も同じだ。 季節はめぐり秋が来た――。 愛川孝志は屋上にあがって、大きく伸びをした。気分は爽快だ。 文化会館の大きな影から、朝日が覗いている。緑の葉で覆われた金網のアーチでは、赤い萩の花が咲いている。孝志は草木に水をやったあと、その萩の花を鋏でひと房摘み取った。 11時になると客がやって来て、いつもの活気のある光景が始まる。店内では、松茸のいい香りが漂っている。今日は真鱈と松茸の釜めしだ。 片隅の棚では、写真立てが飾られている。ひと房の萩の花がコップに活けられ、琥珀色の液体が入った小さなグラスが前に置かれている。 この日限定の設えだ。 そして事情を知っている客は、穏やかな笑みを浮かべてこちらを見るオヤジさんの写真に向けて、そっと手を合わせるのだ。 今日も一日、陶仙房の交流が始まる。 おしまい |
|
26/09/16 05:54 神亀
|