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(6)深まる疑惑 |
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裏廊下の端にある曲がり階段から2階に上がった。
最初の部屋は書庫だった。外気に面したガラス窓以外は、壁の3面に書架が設けられていた。文庫本からハードカバーの分厚い書籍まで、いろんなジャンルの書籍がぎっしりと並んでいる。 水原家の人間は、よほど本好きが多いのだろう。執事の日記には、小説家目指した次男の啓太が、書庫に入りびたりだったと書かれていた。 窓の近くに、読書用の椅子テーブルがあった。その上に、重ねられたペーパーと灰皿があった。 ペーパーを手に取って見た。応接室で見たものと同じ、タイプライターで印字された文章だった。 ――重兵衛が病院に行くことはきわめて珍しいが、その日は年に一度の健康診断のためである。そして必要でもないのに、検査入院となった。 その夜、重兵衛の病室に現れたのは、70代の院長先生だった。実はこの二人、ずいぶん前からデキていたのである。 さっそく二人は裸になって、ベッドの上で愛の行為を始めた。 院長先生の手慣れた口淫に、重兵衛の飢えた陰茎はみるみる勃起してくる。そのうち70代の小さな体が馬乗りになり、握った陰茎を体の中に取り入れようと尻をうねらせた。そこは長年慣れた交尾、二度、三度、尻をくねらせると、図太い性器が体のなかに吸い込まれていく。 重兵衛は仰向けのまま大の字になり、下から己が陰茎を、軟らかい秘門の中に根元まで埋め込んでいた。常人では痛がって中々挿入できない大きさだが、院長先生は度重なる交合ですっかり拡張されていた。 先生は体内に呑み込んだモノを味わうように、ゆるやかに腰をうねらせる。可愛らしい口から、かすかに喘ぎ声が漏れ出る。 いつの間にか重兵衛が上になり、院長先生の体をしっかり抱きとっていた。逞しい腰が上下にあるいは前後に動きはじめると、院長先生が重兵衛の胸に顔を押しあて、声を殺してよがり声をあげはじめた。 ぬちゃぬちゃ、ぴちゃぴちゃ――湿った卑猥な音がした。それに、途切れ途切れの喘ぎ声、荒い息づかい、満足そうな吐息が重なる――。 初心なぼくは、すぐ勃起した。面白そうにぼくの下腹部を見るリョウに気づいて、慌てて体をずらせた。 灰皿に吸い殻があるところをみると、父さんもこのエロ小説を読んでいたのだろうか。ぼくとハグしたとき、ズボンの前を膨らませた父さんの姿を思い出した。それにしてもこのエロい文章は、だれが書いたのだろう?それに、いかにも読んでくださいというように置かれている。何か意図があるのだろうか? 気を取り直してぼくたちは、次の部屋に向かった。続く二部屋は空室だった。 廊下の端にある最後の部屋の前で、リョウは凍り付いたように立ち尽くした。 「どうしたの?」 ぼくが訊くと、リョウは寒そうに両腕をさすった。 「なぜだか分からないけど、すごく怖い」 (幽霊でも怖いことがあるんだ)そう思いながら、ドアノブを掴んだ。鍵がかかっていた。持っている3つの鍵でも開かない。 そこでふと思い出した。ぼくはスマホを出して、執事の日記を写した画面を開いた。最後のところに、次男の部屋の鍵を長男が中庭の噴水に投げ込んだ、と書いてある。 (じゃあ、ここは水原啓太の部屋だ。鍵はまだ噴水の中にあるのだろうか?) 中庭に行ってみることにした。1階におりて、施錠された外部ドアを執事室から持ってきたマスターキーで開けた。 放置された花壇が、いかにも荒廃した様子を際立たせていた。噴水のある小さなプールは、中庭の中央部分にあった。水はどんよりと緑色に濁っていた。 これでは鍵の所在を確かめられない。プール周りを調べていると、バルブの付いた支柱があった。試しにバルブを回してみた。錆びて軋んだ音がしたが、なんとか動いた。 噴水が勢いよく水を吐き出した。透明の水が浄化作用を起こして、濁った水が排水溝へと押し流されていく。ほどなくプールの底が見えだした。 二人で水面を透かし見て、底に沈んでいる鍵を探した。こういう時は、空中を浮遊できるリョウのほうが有利だ。真上から見ることができるからだ。 ほどなくリョウが、水底に沈んだ鍵を発見した。ぼくは腕まくりして、泥に埋もれた鍵を掴んだ。 噴水プールの向こうに、コンクリート壁の部屋がある。ちょうど家の主、水原壮一郎の部屋の下階にあたる部分だ。その前の地面に、黒っぽい物体が落ちているのに気づいた。取り上げて見ると、黒皮の長財布だった。 中身を確認した。1万円札が5枚、カード類、そして折り畳んだ新聞の切り抜きが入っていた。 (父さんが落としたのかな?)そう思いながら、新聞の切り抜きを読んだ。 ――2023年2月13日の日付――浄土島の西の岩場で、男性二人の遺体が発見された。二人は島の所有者、水原仙一氏と浅香圭一郎氏であることが判明した。三日前に瀬戸内地方で起きた震度7の地震の際、二人が行方不明になったと屋敷の従業員から届け出されていた。遺体の状況から、何らかの事故に巻き込まれた可能性がある。現在、瀬戸内警察で地震との関連性を調べている―― ぼくは愕然とした。すでに3年前に父さんは死んでいたことになる。だったら父と名乗ったあの男は何者だろう? ぼくはこれまでの記憶を辿った。そういえば、水原壮一郎の部屋で見た絵画の中の一人が似ているように思った。 「ねえ、2階の大旦那さまの部屋に行ってみようよ」 ぼくはリョウに言って、理由を話した。リョウは絵を見ていなかったようだ。 大旦那さまの部屋に入ると、さっそく壁に立てかけた絵のところに行った。 絵をじっくりと見て、リョウが言った。 「そうだ!この人だ。啓太小父さん――前に会ったことがあるような気がしたのは、この小父さんのことだったんだ」 水原壮一郎の両側に並んだ青年のうち、肉付きが良くて頭髪の薄いほうだった。そういえば、玄関ホールで会った男にイメージが似ている。ぼくはスマホを出して、執事の日記を開いた。 ――1988年4月/恵子さまが2歳の陽造さまを連れて島を出て行かれた―― ぼくは横からスマホを覗き込むリョウに言った。 「水原啓太は1996年に35歳で死んでるけど、ここに書かれた子供の陽造はざっと計算すると今年40歳になるはずだ」 ぼくたちは顔を見合わせた。 「じゃあ、あの人はトシのお父さんじゃなく、この陽造という人?」 ぼくは頷いた。「ああ、多分そうだと思う」 そのとき、男の声がした。 「何を独り言、言ってるんだ」 振り返ると、いつ入ってきたのか父と名乗った男が、ドアのところにいた。 男は、ぼくの表情を見て、肩をすくめた。 「どうやらバレちまったようだな」 ぼくは抗議した。 「どうして父さんだなんて、嘘をついたの?あなたは水原陽造でしょう?」 「惜しい。名字がちょっと違った」男が茶化して言った。「ま、バレたら仕方がない。ちょいと気持ちの良いことやろうや」 ふいに男が襲いかかってきた。 色男、金と力は無かりけり――この時ほど、自分の無力を実感したことは無い。 男は抗うぼくに構わず、強引にベッドのところまで引きずった。そして荒々しくぼくの衣服を引き脱がしていく。 「やめてっ!何するの!」 ぼくは叫んだが、剥き出しにされた下腹部を無遠慮にまさぐられた。 「ほう、思った通りだ。可愛らしい体をしている。さ、よーく、見せてごらん」 股を広げるだけ広げさせられ、ぼくの恥ずかしい部分は、すっかり男の前にさらけ出されていた。男が顔を寄せてくる。息を感じたとたん、おチンチンが濡れた温かい口の中に含まれた。唇で挟んで皮をつるりと剥く。 「ひっ!何をするのっ!やめて!」 拒む言葉とは裏腹に、ぼくはたちまち勃起させていた。 器用な舌先と温かい口腔が、ぼくのおチンチンをいいように弄ぶ。 チュブッ、ズルル、ズグッ――んぐんぐ――ズルル。 「あひっ!ダメ――ああ――いいいい」 募る快感の中で、すぐ横にいるリョウの姿が目に入った。彼はぼくを助けられないもどかしさと、性行為を目の当たりにした興奮から、複雑な表情をしていた。可愛らしいおチンチンが勃起している。(幽霊でもその気分になれば、体が変化するんだ)切迫した事態にもかかわらず、妙なことが気になった。 男の執拗な淫技に、ぼくは昇りつめてしまった。 それでも男は許してくれなかった。呆然とした頭に、野太い声が聞こえた。 「ほーう、かわいらしい菊の門やな。どれどれ――」 サワッ、ヌリヌリ――。 「あっ!そこ駄目っ!――あああ」 ヌプヌプ、ヌンッ!ズヌヌヌ――ズニューッ。 「ひっ、指なんか入れて――ああ、駄目っ!」 男のいやらしい指使いに、ぼくはすっかり翻弄されてしまった。そのうち妙な気分になってきた。意識の遠くから男の声が聞こえてくる。 「ふむ、充分ほぐれたようだな。じゃあ、嵌めるぞ」 ――あっ、待って! 温かいものが裏門にあてがわれ、傍若無人にズググッと入ってきた。 「うわっ!駄目ーっ!」 ぼくの意識は飛んでしまった。 ![]() |
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26/08/09 09:32 神亀
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