久しぶりの帰郷だった。福岡の実家には父がひとりで暮らしている。
わたしが52歳だから、父はもう76歳になる。
わたしが12歳の時に母が死んで、それ以来、父は男手ひとつでわたしを育ててくれた。
父の顔を思い浮かべると、体の芯がむずむずとしてくる。この感覚は、普通の親子にはないものだろう。
わたしと父の関係は、親子というより兄弟に近いものだ。それは多分に、父の性格に因る。――お人好しで、飾り気がなくて、すこし軽いタイプ。
わたしが思春期を迎えて、初めて夢精したときも、そのことについて屈託なく話し合えたし、下の毛が生えだした頃も、風呂に入って自慢して見せたりもした。また寒い夜は、ひとつ蒲団で抱き合って寝ることもあった。
それが高じて、17歳のとき、父の手ほどきで男色を覚えた。
父は妻を亡くして寂しかったのだろう。学生時代に先輩から無理やり教え込まれた、男色の味を思い出したのだ。
最初は、お互いの性器を扱き合うだけだった。それが徐々にエスカレートして、口と舌を使いだし、ついには肛門性交にまで発展した。
たいがいわたしが父のお尻に入れたが、ときにわたしが受けることもあった。――もっともわたしの肛門は、大人の性器を受け入れられるほど柔らかくなかったので、父は素股で満足していた。
その後、父のもとを離れて東京の大学に行き、卒業したあとも東京にとどまって就職した。そして会社上司の紹介した女と結婚し、子供も二人出来た。
わたしはごく平凡な家庭生活を送ったが、父の教えを忘れたわけではなかった。
それが3年前、永年連れ添った妻が急逝したとき、密かに抱きつづけていた男色嗜好が、ふたたび頭をもたげてきた。
