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(9)メル友 |
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私はリタイアしたあと、ゲイ小説の執筆活動と老人クラブの役員をして、老後の暇をつぶしている。
男好きである私は、現役時代、5人の男性と親密な関係を持った。 ではリタイア後はどうかと言うと、フリーになっただけに、あまり他人の目を気にせず、好みの爺さんを追い求めている。 かと言って、だれかれ構わずヤリまくる(失礼、下品な言葉でした)色気違いでは決してない。 その証拠に、私には心の声が聞こえる。 声が聞こえだしたのは、65歳になった頃である。理由は分からない。私の男漁りが過ぎたからかも知れない。 それはともかく、心の声は道徳的で、私の行動を諌めることが多かった。 66歳の現在、私は一人の爺さんに取り組んでいる。老人クラブで、ノボルさんと呼ばれている老人だ。中肉中背、品のある顔をして、人を疑うことを知らない性格の持ち主だ。 老人はノンケであったが、手練手管を駆使した結果、裸になってスキンシップを楽しむまでになっている。老人にとって裸の付き合いは、精神的にも肉体的にも一番の良薬である。 しかし今のところ私が老人と付き合う究極の目的、アナルセックスまでは行っていない。ま、何事も急いては事をし損ずる。焦らずじっくりと、時期が来るのを待っている。 それでも心の声は言う。 ――これでまた、お前の毒牙にかかった爺さんが、一人増えたな。 (毒牙じゃない。独り身の淋しい爺さんを、慰めてやってるんだ。だから、毒牙じゃなくて愛の手だ) ――だったら使うのは手だけだな。真ん中の足なんか使うなよ。 (それは約束できん。俺はビッグフッドだからな) ――また、見栄を張っちゃって。並サイズじゃないか。 (男のランクはサイズじゃない。機能で決まるんだ) ――ああ言えばこう言う。とにかく、爺さんを泣かすのだけはやめろよ。 (そのへんは任せとけ。あ、善がり泣きはさせるけどな) ところで一方、私が書いたゲイ小説をネット上に投稿していると、メル友なるものが増えてくる。 しかしこの実態の伴わない電子上の付き合いは、ときに大きな罠となる。 私は一度失敗した。ファンだという人物とメールの交換を初めて、最後にデートの約束をした。ところが実際に会ったところ、写真とは全く違う人物だった。 そのときは怒って即座に帰った。その後も相手はしつこくメールしてきた。一方的な愛の押し売りである。あまりしつこいので、とうとうメールアドレスを変えてしまった。 以来メル友は、良く知っている人物に限り、ネット上でファンだという人物とはメール交換をしていない。 それでも例外的に、ファンだというある人物とメル友になった。 きっかけはサイトの管理者からのメールだった。私の新しいメールアドレスは、その管理者にしか知らせていない。 管理者は、『古希爺』と名乗るファンのメール文章を添えて、「先方のメールアドレスを教えます。了解はもらっています、興味がおありなら、返事を出されてはいかがですか」と言ってきた。 文章を読んでみると、しっかりした内容で知性も窺えた。誤字脱字も全く無い。東京在住の70歳。高校で国文学を教えていたが、現在は完全リタイアしているという。 私はこの『古希爺』と名乗る人物が気になった。 ――お前、やめとけ。また騙されるぞ。 心の声は忠告した。しかし道徳心より、スケベ心と好奇心が強かった。 そこで先方にメールしたところ、すぐに返信が来た。 「あなたからメールを頂けるなんて感激です――」などと殊勝なことを書いておきながら、文章の端々に、私に対する恋慕の情をしっかりとアピールしている。結構、したたかな爺さんである。 当初は、慎重に相手の実像を探っていた私は、そのうち相手を信用して、本音でメールの返信を出しだした。 相手が実名や電話番号、そして数枚の写真とボディーサイズを送ってきたので、私も同じように返した。私たちはいつしか実名の愛称で、カズさん(和彦)セイちゃん(清司)と呼び合っていた。 そして、10月某日、いよいよ会おうということになった。 ――おい、いいのか?また騙されて、泣きを見るぞ。 (今度は違う。――それに万が一騙されたとしても、その時はその時だ) 私は心の声を、歯牙にもかけなかった。 会う日が近づいて来ると、相手のメール文面にもワクワク感が滲み出ている。 「もう心臓がドキドキして、仕方がありません。それに実際にお会いしたとき、カズさんが私を見てがっかりするのでは、と思うと心配でなりません」 70歳にしては初心すぎると思ったが、「そんなことはありません。あなたが気に入ったから、会うのです」と返信した。 (ま、おれがもてるのは仕方がないな。顔と才能に恵まれてるから) すかさず声が聞こえてくる。 ――奢れる男子は久しからず――。 私はその言葉を無視して、今度セイちゃんと会うときどんな服装で行こうか、と今から考えていた。 ところは新宿御苑の大木戸門の入口。約束時刻の10分前にセイちゃんが通りの向こうからやってきた。すぐに彼だと分かった。 白シャツに紺のストライプのネクタイ、上下揃いの明るいグレーのスーツ、片手に紙袋を持っている。 70歳で160センチ56キロ。メールに書かれていた通りの体型だ。 七三に分けたロマンスグレーの頭髪、艶やかな肌をしたレモン型の顔、品のよい小造りの目鼻立ち。これも写真通りの風貌だが、実物の方がはるかに生き生きとして魅力的だ。知性を滲ませた小さな瞳が輝いている。 私は俄かにときめいた。 (へーえ、悪くない。これは先行き楽しみだ) ――相手が可哀想だ。蛇に睨まれた蛙だな。 (あれっ、相手に騙されるのを、心配していたのじゃないか?) ――それは訂正。生真面目そうな爺さんだ。いいか、騙すんじゃないぞ。 セイちゃんは不安そうな様子で、近づいてきた。 「失礼ですが、カズさんですか?」 おずおずと聞いてきた。私が頷くと、パッと笑みが広がった。 「ああ――清司です。よろしくお願いします」 御苑内をゆったりと散策した。平日なので、人の姿はまばらだった。 私は歩くのが速いので、できるだけゆっくり歩こうとした。しかし心配はいらなかった。セイちゃんは小柄ながら結構、健脚だった。 池に面したところにベンチがあったので、座って話をすることにした。 改めてセイちゃんの顔を見る。 グレーの髪にまるっこいおでこ、薄い眉毛の下、眼鏡の奥に二重目蓋の小さな瞳が、この上なく優しそうな輝きを帯びている。 その顔を見ていると、口づけしたくなる誘惑に駆られた。 そしてスーツに覆われた、小柄で健康的な肉体。この身体が自分のモノになるんだと思うと、下腹部が熱くなってくる。 私は質問した。 「どうです、直接会ったご感想は?」 セイちゃんは小さな目を和ませて、にっこりと笑った。思わず抱き締めたくなるような、可愛らしい笑顔だ。 「メールで拝見した写真より、はるかに素晴らしい方でした」 私も笑みを返して、軽く頭をさげた。 「あなたも写真よりずっと素敵な人ですよ。でも、あなたが高校の教師だったと聞いていましたから、実際お会いして、意外な気がしました」 セイちゃんが怪訝な表情をしたので、私は付け加えた。 「もっと厳めしいというか、生真面目な方を想像していました。ところがあなたは人間的で――生き生きとしてる」 セイちゃんは恥ずかしそうに返した。 「これでも現役の時は、生徒に嫌われていましたよ。――厳しくて」 「でも生徒の為でしょう。日本の将来を支える、若者を教育するんだ」 「まあ、そんな気持ちはありましたが――」 セイちゃんは、いたずらっぽく笑った。「若い彼らは、生意気なだけですよ」 今度はセイちゃんのほうから質問してきた。おそらく彼が、一番知りたかったことだろう。 「カズさんが小説に書かれていることは、実体験に基づいているのですか?」 (いよいよ、きたか) 私はすぐに答えず、逆に質問した。 「答える前に、私から訊きますが――セイちゃんは、男性と性行為をした経験がありますか?」 セイちゃんは、薄い眉をちょっと引き上げた。 「それはメールにも書きましたように――全くありません」 私は頷くと、質問に答えた。 「正直に申しましょう。ごく一部は、実体験を参考にしています。残り大半は、想像力を膨らませたものです」 「――」 セイちゃんは少し沈黙して、おもむろに言った。「カズさんは、経験豊富な方だと思っていましたから――すごい想像力ですね」 話題が本質的な内容になったので、デートの核心に触れる時だと思った。 私は次の段階に進むべく、話しだした。 「いいですか、私は小説の主人公のように、取っ換え引き換え、男と関係を持つような人間ではありません。現にこうしてセイちゃんと会う気になったのも、あなたの人間性に惹かれたからです」 ――嘘を付け!身体が目的だろうが。 心の声が叫んだが、私は臆面もなく続けた。 「でも実際にお会いして、精神的なだけでなく、肉体的な意味でもあなたに惹かれました」 言ったあと、私はそっとセイちゃんの肩に腕をまわした。 小さな瞳が臆病そうに私を見て、艶やかな頬が薄紅色に染まってくる。 私は追い打ちをかけるように言った。 「それでもセイちゃんは、私と付き合いますか?」 セイちゃんはそっと頷くと、口を開いた。 「その覚悟で今日は来ました」 それからぽつぽつと話しだした。 「お恥ずかしながら、あなたに犯されることを夢見てきました。どう準備したらよいかもネットで知識を得て、浅草の店で張り型や直腸洗浄器を買って、毎晩寝る前に試しました――」 教職経験者が大人の玩具店に行くのは、相当の勇気が要っただろう。私が感心していると、セイちゃんは持ってきた紙袋の中から、小さなビニールのバッグを取り出した。直腸洗浄用のシリンジとラブオイルの容器が入っていた。 「もしもの時には使うつもりでした」 状況は急展開した。そこまで用意しているのなら、善は急げ、である。 新宿御苑の近くに、以前利用したことのあるデイユースのホテルがある。私たちはそのホテルに行った。 部屋で二人きりになると、さすがにセイちゃんは緊張した面持ちだ。 上着を脱がせて、そっと抱き寄せた。そのまま唇を合わせる。 口付けしながら乳首の膨らみをまさぐると、セイちゃんの身体がピクリとした。 徐々に熱情が高まってくる。 私たちは性急に服を脱いだ。 裸のセイちゃんは、小柄だが思いのほか肉付きが良かった。体毛が無く、きれいな肌をしている。性器は小振りだが、早くも頭をもたげている。70歳にしては、至極元気が良い。 私たちは裸になってベッドに横たわり、愛撫しながら口づけし、逆さ絵になってお互いの性器を口で慰めた。セイちゃんは未経験だが、知識はあるようだ。 セイちゃんが仰向けになって身体を開き、いよいよ合体のときがきた。 ほっこりした白い尻の狭間に、菊座がひっそりとたたずんでいる。つつましやかに口を閉ざして、皺のひとつひとつがぷっくりとうす紅色に輝いていた。 指の先でそっと触れると、とたんにキュッとすぼまる。 私は時間をかけて、処女の菊座をほぐしだした。その間、セイちゃんは両脚を抱えながらも、目をしっかりと閉じていた。 いよいよ挿入しようとすると、セイちゃんの身体が震えだした。 「大丈夫。優しく入れてあげるから」 私は安心させるように言って、あてがうと、じんわりと力を加えた。 処女の恐れか、入口は固く閉ざして、入れるのに苦労した。 「さあ、力を抜いて。痛くない――痛くないよ」 催眠術のように声をかけながら、入れては抜く行為を繰り返した。 先端がじょじょに奥まで入っていく。 あと少し――あと少し――不意にカリが潜り抜けた! 「ああっ!」 セイちゃんが喘ぎ声をあげた。 痛いほどの締め付けだった。私は気を取り直すと、さらに奥へと突き進めた。 「ああっ、待って――痛い――痛いですゥ」 セイちゃんが身もだえして、苦痛の声をあげた。 この痛みがあればこそ、処女喪失の思い出として強く残るだろう。私は勝手に解釈して、そのままズグズグと根元まで挿入した。 完全に入り込んだところで、しばし静止した。 セイちゃんは顔を歪め、目をしっかりと閉じている。 (フフ、いい顔だ。俺の野生の雄叫びを、たっぷりと聞かせてやる) ――このサディスト。少しは老人の身にもなってみろ。 心の声がしたが、そんなことは構っちゃおれない。 私はおもむろに腰の動きを開始した。 ![]() |
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21/08/29 05:39 神亀
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