目 次
義父の横顔 - (5)養父の秘密
母子家庭で育ったぼくは、母の病死によって孤児となった。そのときすでに16歳、ぼくにとって幸いだったのは、通っていた私立高校の数学教師が、ぼくを引き取ってくれたことだ。
ぼくの養父となった先生は独身だった。いつだったか、そのことについて養父に聞いたことがある、「父さんは、結婚しないの?」と。養父は困った表情をして「一度結婚したことがある」と言って付け加えた。「でもすぐに別れた」と。
当時、養父は51歳、細身で髪の毛が薄かった。だから年齢以上に老けて見えた。性格は律儀で、几帳面で、そして寡黙だった。
ぼくは学校で養父を「先生」と呼び、家では「父さん」と呼んだ。
母一人子一人で育ったぼくは、今度は父一人子一人の生活を送ることとなったのである。
しばらくの間、先生と父親のギャップに慣れなくて、違和感があった。
ぼくは小さいときから、父親という存在に憧れの気持ちがあった。父親のイメージは変化したが、夢精を経験したあとは、優しい目をしたふくよかな身体つきの年配者に憧れた。自分では気づいていなかったが、心の底では性欲の対象と見做していたのだろう。
新しい養父は、そういった理想のイメージとかけ離れているが、すぐ身近に年配の男性がいるというだけで、ぼくは肌の泡立つようなときめきを覚えていた。
ぼくは養父が教師を務める高校を卒業したあと、地元の大学に入って家から通学した。

20歳になった春、ぼくは養父の秘密を知ることとなった。
その日は土曜日で、朝から大学に行って部活の剣道をやっていた。練習は午後もやる予定だったが、監督の都合で取りやめになった。仲間たちと店で昼飯を食べたあと、彼らと別れてマンションに帰った。
玄関ドアを開けると、見慣れぬ靴が目に入った。(あれ、お客さんがきてるのか)と思いながら部屋に上がると、なんとなく異様な空気を感じた。
養父の部屋のドアが半開きになっている。
そっと覗き見たぼくは、ギョッとした。

カーテンを閉めた密室で、大人が二人、あられもない姿で絡み合っていた。
ひとりは養父だった。そしてもうひとりは――同じ高校の校長先生!
シャツとネクタイだけ身に着けた養父は、大股開きに脚を抱え込んでいた。校長先生は、養父の男根やタマタマを嫌らしい手つきで弄っている。
淡い照明のなかで、開かれた尻の狭間や、やわらかく息づく菊の門が浮かび上がった。
校長の太い指が、筋張った男根をしごき、垂れさがった袋が揺れ動いた。その内もう一方の手が谷間に沿って這い進み、指先でヌメッとした皺の集合体を揉み始めた。
「ああっ!パパ――駄目っ!」
(パパ?!)ぼくはわが耳を疑った。謹厳実直と思っていた養父が、校長をパパと呼んだのだ。それに応えて、校長の声が聞こえた。
「何ですかな、教頭先生。駄目なんですか――」
言いながら校長は、顔を近づけて、フワッと息を吹きかけた。
ピンク色のつぼみがヒクンと動いた。
「ほほう、きれいな菊の花だ」
校長は指の腹にオイルをつけて、皺の集合体をやさしく押し揉むように撫でた。
「ひっ!」
養父が喘ぎ、菊紋がキュンとすぼまった。
指の腹全体で菊座をマッサージしていたと思うと、人差し指がじんわりと秘門に潜り込んでいく。
「ああっ!パパ――駄目です――」
養父がくぐもった声で言った。
「おや、教頭先生、本当に駄目なんですか。じゃあ、こちらはどうですか?」
校長は、菊座を弄りながら、男根を口に咥えた。
「ああっ!」
養父が顎をのけ反らせた。
校長は、かたや咥えた男根を抽送させながら、もう一方で秘門に指を挿入して、浅く抽送する。指の動きにつれて、薄紅色の粘膜が表情を変える。膨らんだり窪んだり――ゆっくりと引き抜くと、指にまとわりつく肉襞が離れて、ヌプッと可愛らしい息を吐く。
男根と秘門の2か所を同時に責められて、養父は身もだえして善がっている。
ぼくはその場に化石となって、二人の痴態を見守った。
立派な大人が――それも高校の校長先生と教頭先生が、昼日中から睦み合っているのだ。



二人は合体しようとしていた。
四つん這いになった養父の背後から、校長が太短い逸物をあてがい、ゆっくりと埋めていく。何度か押し込んで、ふいに養父が喘ぎ声をあげた。
「はあっ!あああっ――」
校長が満足そうな声をあげた。
「全部入りましたよ、教頭先生。すごく締まりが良い」
養父はシーツにしがみついて、じっと耐えている。
校長は養父のわき腹を掴み、ゆっくりと抜き差し運動を始めた。太った双丘が、横に膨らんだり、縦にすぼんだりしている。
クチュクチュ――ズグズグ――ヌププ――。
二人の身体の間から、かすかに湿った音が聞こえてくる。
養父の声が、呻き声から甘い調子に変わってきた。
「ああん――いい」
校長先生が動きに合わせて、声を出す。
「いいですよ――いいですよ」

校長先生は途中でいったん引き抜くと、養父を仰向けにして両足を引き上げた。そのまま男根をあてがい、前から挿入した。
養父の顔が見えた。目を閉じ、あごを反らせ、口を開けている。禿げあがった額に、汗がにじんでいた。
校長の大きな尻が、前後に力強くうねった。太った背中は汗がしたたり落ちている。その動きは、60歳に近い年齢だが、疲れを全く見せない。
ヌッ、グニュウ――ズズ、グニュウ――。
性行為は延々と続いた。
「そろそろ、行きますよ」
校長が言って、激しく腰を打ち付けだした。
ジュグ、クチュッ、ジュグジュグ――。
「ああっ!ひっ、ひいいっ――」
濡れた卑猥な音に、養父の哀れっぽい声が絡まった。
そこでぼくは我に返って、そっと部屋を出て行った。

養父と校長の卑猥な姿を目撃して以来、養父に対する見方が変わった。養父もぼくと同じように、父親という存在に対して憧れる気持ちがあるのだ。だから、あまり歳の違わない校長に対して、パパと呼んで、父親の像を重ねていたのだ。
その後、ぼくは何食わぬ顔をして、養父に接した。養父から話し出さない限り、ぼくからは何も言わないつもりだった。
二人の交合の場面を見たのは一度きりだが、おそらくその後も、二人の仲は続いているのだろう。
ぼくは大学を卒業したあと、電子機器メーカーの会社に就職した。初任給でネクタイをプレゼントしたとき、養父は目を潤ませていた。
それを見て、ほんのちょっぴり、恩返しができた気分になった。

ぼくが26歳の誕生日を迎えたとき、養父に引き取られてちょうど10年の節目になる。養父は61歳、高校を退職して学習塾の講師になっていた。
その年、養父にとっては大変な悲劇が待ち構えていた。長年密かに付き合っていた元校長が永眠したのだ。梅雨が終って、いよいよ本格的な夏になろうとした時期だった。
養父の落胆ぶりは大きかった。しばらくは生きる屍のように、まったく生気が無かった。ぼくが話しかけても、うつろな返事しか返ってこない。
なんとか養父を慰められないか。いろいろ考えた末、二人の休暇が取れる日に合わせて、草津温泉に連れていくことにした。

上野から長野原草津口まで特急電車で行き、あとはバスで草津まで行った。
宿に着くとまず露天風呂に浸かった。細身だった養父は、少し太ってきて、うっすらと脂肪の層に覆われた身体つきになっている。養父の裸を目にすると、6年前に目撃した養父と校長の絡みが思い出されて、妙な気分になってくる。
宿の食事は、養父の好物の和牛ステーキと湯葉鍋、締めはソバが出た。旅が刺激になったのか、養父は食が進んできれいに平らげた。
食後、縁側のソファーに座って、焼酎の水割りを飲んだ。
「ぼくが父さんの子供になって、ちょうど10年目になるよ」
ぼくが言うと、養父は感慨深そうな表情をした。
「もう10年になるのか――月日の経つのは速いものだな」
「あのとき、父さんはどうして、ぼくを引き取る気になったの?」
「それはお前が、目立つ存在だったからだよ」
「ぼくってそんなに目立っていたかなあ」
養父はフッと微笑み、しんみりとした口調で言った。
「お前は大人しかったけど、妙に惹きつけるものがあった。それに、苦労して女手ひとつでお前を育てていたお母さんの気持ちが、私に乗り移ったのかもしれない」
「母さんは――」
そこで、諸々の思いが込み上げてきた。母のことを話そうとして、その顔を思い浮かべた途端、涙が止めどもなく溢れてきた。10年前のことで、すっかり気持ちの整理がついている、と思っていたのに――。
「ごめん――何だか――涙が止まらなくて――」
ぼくは話そうとして焦ったが、言葉にならなかった。
そのとき養父が、テーブル上のぼくの手をそっと握ってくれた。
養父の顔を見ると、分かっているよ、と言うように頷いていた。これでは養父を慰めるどころか、自分が慰められている――。

その夜、ぼくは養父の布団にもぐり込んだ。
養父は驚いたようだが、ぼくの目を見て気持ちを察したようだ。
ぼくたちはお互いの身体に腕を回して、擦り合った。気持ちが昂ってくると、裸になって直に肌を合わせた。
ぼくは男色行為の経験はないが、養父が教えてくれた。お互いの乳首や性器を指と舌を使って慰め合った。
そして最後は、養父の後ろに怒張した性器を挿入した。養父は、さすがに苦しそうにしていたが、そのうち大きさに馴染んで、ぼくの快楽に同調した。
ぼくは背後から養父の身体にしがみついて、息を弾ませながら腰をうねらせた。
体の一点で結ばれているだけなのに、強い一体感を覚えた。
気持ちが高揚して、養父が好きで好きで堪らない気分になってくる。
この先、養父とどんな生活をしていくのか?――そんな心配は、募りくる快感に吹っ飛んでいた。
[20/11/09 05:57 神亀]
前のページへ
次のページへ