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(9)人それぞれに |
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シニアサロンに伊藤会長はじめ数人のクラブ会員が集まっていた。その日の話題は、パソコン教室の創設についてだった。中高年の女性を中心に、パソコンを使えるようになりたいという要望が増えていた。男は会社でパソコンを使う機会が多いが、中高年の女性は専業主婦が多いのでパソコンに疎かった。
そこで週一回か月に数回程度、シニアクラブ主催でパソコン教室を開こうということになったのだ。 会場はサロンを使えばいいが、問題は講師だった。受講料はできれば無料にしたかった。そのためには講師も、ボランティアでやってくれる人を探さねばならない。シニアクラブの男性会員の中でパソコンに習熟している人物を探した結果、何人か見つかったが、いずれも人に教えるとなると二の足を踏んだ。 それにパソコン機材の問題がある。電源やインターネットに繋ぐ備品類は、シニアクラブの予算で購入できるが、パソコン本体は高額なため、参加者の個人負担とならざるを得ない。裕福な人は良いが、あまり経済的に余裕のない人は、とても揃えることができない。 しかしそんな問題は、サロンに遅れてやって来た木原正人副会長が、即座に解決策を出した。 「一度、区役所の高齢福祉課に相談したらどうですか。あそこの宮内課長は優しいから、親身になって相談に乗ってくれますよ」 さっそく伊藤会長が区役所に電話した。宮内課長に繋がり、30分ほど課長の時間をいただきたい旨伝えると、今日の午後3時以降ならいいと言う。そこで3時に約束して、電話を切った。 あまり大人数で押しかけても、向こうの迷惑になるということで、伊藤会長と木原副会長、それに女性が二人ということになった。その中に、パソコンを買ったばかりの山下和江も含まれていた。 伊藤と和江の間では、まだ微妙な気まずさが残っていたが、ほかの人間は知る由もなかった。 区役所には伊藤の車で行くことになった。昼食後の2時半に、マンションの玄関ホールに集まることにした。木原だけは、知人の病院見舞いの予定があったので、区役所で合流することにした。 河合昌介は、内田老人が足を骨折したというニュースを、老人の娘、節子から聞いた。節子はさほど重大な怪我と考えていないようだ。 「いえね、年寄りにはよくあることなのよ。骨がもろくなっているから、ほんの小さな段差でも骨折したんですって」 そこでコロコロと笑った。「骨折と言ったって、小指の付け根のところのひび割れ。ボルトで縫い付けたから問題ないそうよ」 河合昌介は、痛そうに顔をしかめた。(ボルトで縫い付けることが、そんなに軽いことなの?) 老人の入院している病院名を聞いて、すぐ見舞いに行くことにした。自宅を出るとき、ふと思いついて、彼が一番気に入っている万華鏡を、お見舞い品として持って行くことにした。モロッコのアラベスク文様にヒントを得て、中に入れる具に苦心した作品だった。 受付で聞いた病室に行くと、二人部屋で、天井から吊るしたカーテンで仕切られただけの部屋割りだった。 内田老人のベッドは奥の区画にあった。カーテンの隙間から覗き見ると、あいにく老人は眠っているようだ。右足に白い包帯が巻かれ、枕元の壁に松葉杖が立てかけてあった。 老人の寝姿を見て、昌介はハッとした。 浴衣の裾が乱れて、弛んだフンドシの隙間から、大きな男根がぞろりと露出していた。渋茶色にふすぼっているが、ズル剥けの大きな亀頭や色濃い血管の浮き出た太い陰茎は、往年の雄姿を忍ばせる。 昌介は唾をごくりと呑み込んだ。 内田老人の寝顔を見る。ついで隣の様子を窺う。カーテンで見えないが、隣の患者も眠っているようだ。 滅多にないチャンスだった。 昌介は手を伸ばした。興奮から、ぶるぶると震えていた。 そっと撫でるように触った。それから掌で握った。 ゴムのように柔らかだが、ボリュームたっぷりだった。もっとよく見ようと、顔を近づけた。かすかな恥垢の匂い――懐かしい、親密な匂いだった。 彼は老人の顔を窺い、思い切って舐めてみた。 しょっぱくて、美味しかった。 昌介はすっかり淫らな気分になっていた。彼は大胆にも、老人の逸物を口の中にすっぽりと咥え込んだ。グンニャリとしていたが、息苦しいほどのボリューム感だった。 竿に沿って小さく抽送していると、少し芯が通ってきた。それに、大きさと硬さを増してきたようにも感じた。 自立するほど硬くはならないが、昌介は幸せ感でいっぱいだった。これまで彼の体を通過していった、どんな男のものより、このやわらかい老根のほうが、はるかに愛おしいと感じた。 そのとき微かな声がして、老人が身動きした。 昌介はあわてて口を離した。唾液で濡れた肉根が、隠微に濡れ光っている。 顔を上げると、ちょうど老人が目を覚ましたところだった。 瞼の隙間から老人の瞳が昌介を認め、驚いたように見開かれた。 昌介は何食わぬ顔で挨拶した。 「ちょうど今来たところです。足の具合はどうですか?」 高齢福祉課の課長、宮内俊夫は、来訪した老人たちの中に木原正人の顔を認めて、にわかに胸が騒ぎ出した。サウナでの落花狼藉は2年前のことだが、あのときの苦痛がまざまざと蘇ってくる。 シニアクラブ会長の伊藤が、来訪の趣旨を説明した。最近老人たちの間で、パソコンを学びたいという希望が増えてきた。そこでパソコン教室を開こうと準備しているが、問題なのは、講師とパソコン購入費用の件。そこで、区役所側の援助がいただけないだろうか――云々。 伊藤に代わって木原正人が、希望する区側の援助を、具体的に話しだした。 その話しぶりたるや、宮内とのアノ出来事など全く無かったかのように、のうのうとしたものだった。 「――講師はシニアクラブ会員の中から探そうと思っていますが、立ち上げの初期段階は、パソコン教室を体系づけられる専門家の講師が必要です。受講料無しにしたいので、ボランティアでやってくれる人を探しています」 木原は宮内課長の目を真っ直ぐに見て、微笑みかけた。「そこで区役所のほうで、人材や教材を援助していただけないかと――タダで」 宮内課長は生真面目に答えた。 「それは難しいお話ですね。区が特定の団体に対して援助すると、色々と問題が出てきますので――」 「せこいこと言わないの――」 木原はつぶやいた。「何か大義名分を考えられませんか?プライベートな援助でもいいんです。宮内課長はパソコンに精通されてるし、おうちも近いでしょう?」 「いや、私はそんなにパソコンに詳しくは――」 「またまた、謙遜しちゃって。ところで、区からパソコンを何台か寄付していただけませんか?」 宮内はあわてた。 「いや、それも特定の団体に寄付するのは、問題が――」 「なんかいい知恵はないですか?高齢福祉課って、そのためにあるんでしょう?なんだったら、ぼくたちから直接、区長にお願いしてみましょうか?」 シニアクラブのほかの3人は、呆気に取られて木原副会長の話を聞いていた。 次から次に攻め口を変えてお願いする。それも――なんかすごく厚かましいお願いをしているような気がする。 結局、講師と教材の件は、何とか大義名分を立てて、1,2回くらいは対応できるように検討して見る。パソコンの寄付の件は、難しいと思うが、上司に相談してみる――と言うことで、その日の会合は終わった。 別れ際に、木原が宮内の横にすり寄ってきて、「お願いしますよ、宮内課長。あなただけが頼りなんだから」と言った。 宮内は、ごつい手が自分の尻を無遠慮に撫でるのに気づいた。 思わずゾクッとする快感が走った。そのあと怒りが湧いてきた。 (何だよ、この不良老人。公共の場で尻を触るなんて――) ――*―― 欅の木もすっかり色づいてきた。河合昌介は長袖シャツにジャンパーを羽織って、根津神社の境内を歩いていた。 内田老人は退院したあと、自宅でリハビリ中だと分かっていたが、いつもの習性で目は老人の姿を探している。 見舞いに行ったときは、自分でも大胆なことをやってしまった。 あのときの味や舌触り、喉を圧迫するボリューム感は、今思い出しても身体が熱くなってくる。 あのとき以来、外に出ると、道行くお年寄りたちの股間が気になる。ズボンの前の膨らみを見て、大きさや形を無意識に想像する。 歩きながら昌介は、幸せそうに微笑んだ。 ![]() 神社のトイレに入ったとき、また内田老人のことを思い浮かべた。 (ここで並んでおしっこをしたんだっけ――) 小便器の前で用を足していると、人の気配を感じた。そっと横を見ると、体格の良い60代と思える男がいた。父性愛あふれる顔つきだ。 「お早うございます。今日も良いお天気ですね」 男は横に並んで立って、明るい声で挨拶した。健康的に日焼けした顔の中で、白い歯がひかった。 「あ、お早うございます」 礼儀正しく声を掛けられて、昌介はもごもごと返した。そして狭いトイレの中で、男前とふたりきりなのを強く意識した。 横から放尿の水音がしだした。それがあまりにも勢いの良い音だったので、思わずそちらを見た。 (うわっ!)昌介は、心臓が飛び出るような衝撃を受けた。 男の手元から、カリの発達した逸物がはみ出していた。その先端から健康的な勢いで小水が放出されている。 ソレから目を逸らすことが出来なかった。内田老人より若いだけに、はるかに力強く、瘤が盛り上がったように、まがまがしい形状をしている。 昌介の見ている前で、男は放尿を終え、手にしたモノをゆうゆうと打ち振ってズボンに収めた。 男が横から退いて、そこで初めて昌介は我に返った。とっくに放水し終わって、外に出しっぱなしだった己が分身を、ズボンに収めた。 小便器から後ろに下がったとき、男の身体にぶつかった。 (えっ、まだいたの!) 振り返ると、悪戯っ子のような目がこちらを見下ろしていた。そして、不意に抱きすくめられた。 (何っ!何なの、この行動力は!) 昌介はあわてたが、大きな体に抱き締められて、身動きできなかった。 男は強引に唇を重ねてきた。これほど興奮の伴うキスは初めてだった。 その男、木原正人は、顔を離すとのんびりと言った。 「以前、病室で寝ている内田のお爺ちゃんに、悪戯していたでしょう?おかげでぼくはお爺ちゃんにお見舞い出来なかった。そのお詫びに、今度はぼくにも悪戯して欲しいな」 かくして根津の街のあちこちで、出会いがあり、友情が生まれ、愛が芽生える。彼らは老境に入っても意気盛ん。大いに遊び、笑い、ときに悩みを共有する。 さながら万華鏡のように、きらびやかに変化しながら。 人それぞれの余生がある。 おしまい |
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22/03/30 08:54 神亀
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