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(2)二人きりの夜 |
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義父の住む仙台に出張すると決まったとき、ぼくは淡いときめきを覚えた。
いささか不謹慎だが、ぼくは、会社の部長に対してと同時に、女房の父親に対しても密かな想いを抱いていた。早くに妻を亡くした義父は、仙台の一軒家に独り住まいをしていた。 そして実際、仙台の家で義父の顔を見たとたん、ぼくの淡い期待は、肌のあわ立つような熱望に変わっていた。 久しぶりに見る義父は、ますます魅力的なお年寄りになっていた。156センチ、54キロの身体。小柄だが均整の取れた体型をしている。形の良い白髪の頭は、几帳面な性格そのままに、きっちりと七三に整髪され、蛍光灯の光を受けて銀色に輝いている。 小柄な身体つき同様、顔も小振りだが、味のある魅力的な顔立ちをしている。薄い眉毛とべっ甲縁メガネの奥の生き生きとした眼、小ぢんまりとした口と顎。唯一大きな鼻が顔のど真ん中にあるおかげで、繊細というより、むしろのんびりとして大陸風な印象を与えていた。たしか72歳になるはずだが、良く日焼けした義父の顔は、壮年男の覇気が滲んでいる。 ![]() 「お父さん、今夜はお世話になります」 あわ立つ気持ちを無理やり押さえて、ぼくは挨拶した。 義父はおだやかに微笑んで、歯切れよく言った。 「きみなら、いつだって大歓迎だ。ところで土曜日は休みだろう。今晩だけでなく、日曜日までいたらどうだい?」 実のところ、内心では義父の誘いに期待していた。 しかし、3晩も義父と二人きりで居ると、自分の気持ちを隠し通すことができるのか、自信がなかった。バカなことをやって、義父に軽蔑されるのではないだろうか。 ぼくは、どっちつかずの返答をした。 「ええ、そうしたいのはやまやまですが――ひょっとしたら明日のうちに、東京に戻ることになるかも知れませんから――すみません」 「おいおい、謝らなくてもいい。じゃあ、都合が良ければ、ということにしておこう」 義父はあっさり言うと、ぼくの顔を見上げながらつづけた。「夕飯は食べたのだったな。じゃあ少し飲もうか」 そこで思いついたように「その前に風呂に入るか――きみも、一緒に入りなさい」 お義父さんの裸が見れるんだ――。義父の言葉を聞いて、にわかに心がざわめいた。と同時に、義父の微妙な言い回しにも気がついた。普通なら「きみも一緒に入るか?」と聞いてくるのに、今は断定的に「きみも入りなさい」だ。なんでだろう?ぼくは義父の気持ちを推し量ろうとしたが、その表情からはなにも窺えなかった。 義父について脱衣場に行くと、義父はさっさと服を脱ぎだした。シャツを脱ぎ、ズボンを脱いで、その下は――想像通り、白の越中だった。義父はその越中さえも、無頓着に脱ぎ捨てた。 裸になった義父を見て、にわかに心臓が高鳴った。老人にしては、きれいな体だった。すんなりとした胸や手足、贅肉も目立たず、肌もさほど弛んでいない。そしてシモの毛は、70歳を過ぎているのにまだ黒かった。 それより目を惹いたのは、剥き出しになった男根だった。ずっしりと重たげで、実力ある者の物憂げさでぶら下がり、思わず見とれてしまうほどの逸物だった。それでいて義父の顔には、なんの奢りもない。チビの太魔羅とはよく言ったものだ。 にわかに息苦しくなった。 おもわず膝まずいて、頬擦りしたい誘惑に駆られた。 そのとき義父が、うながした。 「どうした?きみも脱ぎなさい」 「あ、はいっ!」 ぼくはそれだけ言うのが、やっとだった。 義父は、ぼくが服を脱ぎだすと、浴室に入っていった。その後姿のくりっと締まったお尻がかわいらしかった。 ぼくは裸になると、タオルで前を覆って浴室に入った。義父の裸を見たときから、ぼくのムスコは立ちっぱなしだったからだ。 義父は浴槽に浸かって、こちらを見ていた。 「ほう、昌輔くんはりっぱな体をしてるな。それに、きれいな肌だ」 義父の言葉に、ぼくは恥ずかしさでいっぱいだった。勃起しているのを悟られないように、体を屈めて、前を湯で流していると、義父が湯の中から立ち上がった。 「さあ、今度はきみが湯に浸かりたまえ。わたしは体を洗う」 義父が浴槽から出るとき、エラの張った図太いカリ首が目の前をよぎった。水を滴らせ、赤茶色に染まって、卑猥なモノを見ている気がした。 風呂から上がったあと、浴衣に着替えて酒を飲んだ。ぼくの脳裏には、まだ義父の性器の残像がちらついていた。あの男の道具が長年、義母を悦ばしていたのだと思うと、嫉妬にも似た感情が湧いてくる。 義父は、ぼくの思いに気づく由もなく、目も口元もなごませて酒を楽しんでいた。さほど会話は弾まなかったが、あたたかい幸せな時が流れた。考えてみれば、義父と二人きりになるのは、今夜が初めてだった。いつも二人の間には、ぼくの女房や子供たちがいたからだ。 義父の慈眼が、ぼくの顔をじっと見ていた。にわかにぼくは、東京を離れた一軒家で、義父と二人きりだということを意識した。 春とは言え、肌寒いこの季節、できることなら、義父の小柄な体をこの腕に抱きしめて、温めてやりたかった。そう思うと、股座が再び充実してくるのを覚えた。 ぼくは質問した。 「お父さんは、ひとりで生活していて、寂しくないんですか?」 「なーに、慣れたよ。家内が死んでずいぶんになるからね」 義父はこともなげに言った。ぼくは一縷の望みを抱いて、誘いをかけた。 「でも――人肌が恋しいと思われることも、あるんじゃないですか?」 「人肌が恋しい?」 義父はおっとりと微笑んだ。 ああ、いい顔だ――義父の笑顔を見て、ぼくは思わず「好きです、一緒に寝てください」と言おうとして思いとどまった。 「人肌が恋しいなんて、昌輔くんもロマンチックなことを言うね。なんでそう思うんだね?」 (それは、ぼくがお父さんの温もりを求めているからです) 頭の中では告白していた。でも言えなかった。 義父は、ぼくを魅了する穏やかな笑顔で、さわやかに言った。「ありがとう、昌輔くん。きみがわたしの身を案じてくれているのには、感謝するよ。でも大丈夫、わたしなりに人生を楽しんでいるからね」 義父がどういう人生の楽しみ方をしているのか知らなかったが、一縷の望みもあきらめざるを得なかった。義父も会社の部長と同じように、根っからのノンケなのだ。 義父は酒が好きだが、さほど強くなかった。小一時間が過ぎ、義父はいつしか畳の上で横になっていた。かすかに鼾が聞こえてくる。 「お父さん、そろそろ寝ますか?」 声をかけたが、何の反応もない。ぼくは義父に近づくと、肩に手を置いてそっと揺すった。 「お父さん、風邪を引きますよ。さあ、布団で寝ましょう」 義父は、「んん――」と言ったきり、眠りつづけていた。 |
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20/08/28 06:40 神亀
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