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(3)どっぷりと嵌る

正ちゃんはアナルセックスの回数を重ねるにつれ、さほど苦労せずにマーくんの性器を受け入れて、深い快感を覚えるようになっていました。
そしてゲイバーの『アソコ』に来るのも、楽しみになっていました。ここに来る客はほとんど常連で、温和な人たちばかりです。
それにマスターは、ターくんとの初結合のとき、手助けしてくれた大恩人です。いつかはお返しに、マスターにもお尻を捧げるつもりです。

今日も正ちゃんは、晩飯のあと、アソコのあるビルに立ち寄りました。
そのエレベーターの前で、ターくんにばったり出会いました。
「あれ、ターくん。もう会社は終わったの」
ターくんは慌てたように、早口で答えます。
「えっ、ええ、今日は会社で決められた、早帰りの日です」
心なしかここで正ちゃんに出会ったことが、気まずいような表情です。
二人して店に入ると、すでに4人の先客がいました。
その中のひとりを見て、正ちゃんはエッと思いました。
(七尾和繁!)
シゲさんは、ずっと学校が一緒だった幼馴染です。
先方も、オヤッという顔をしています。
シゲさんは、旅番組やトーク番組に出演している、テレビタレントです。店の客たちも知っているらしく、親しみを込めた目でシゲさんを見ています。
正ちゃんは、子供時代からこのシゲさんにはとてもかなわない、という思いがありました。学業を競い合った仲ですが、シゲさんは、スポーツ万能で、男前で、いつも人気の的でした。

そのシゲさんが、正ちゃんのところに歩み寄って言いました。
「正ちゃん、この店に来たってことは、お前、オトコ色に染まったな」
そこで、横にいるターくんにウインクして、マスターに声を掛けます。
「じゃあぼくは失礼する。カンちゃん、ご馳走さま」
彼は去り際に、正ちゃんの尻をサワッと撫でました。
シゲさんの姿が消えたあと、ターくんが「アッ」と声を上げました。
「用事があるのを忘れていました。すみません、先生。失礼します」
(えっ、どういうこと?)
正ちゃんが反応する前に、ターくんは慌てて店を出て行きました。あとに残された正ちゃんは、ポケッとした顔付きです。
(せっかくターくんと会えて、今夜はいいことしようと思っていたのに)
そんな正ちゃんの顔を、マスターは同情するように見ています。

「ううっ――あ、あ、あ――」
男が背後から押し入ってきたとき、その圧迫感に、ターくんは甘美な喘ぎ声をあげました。彼の菊座を押し開いて侵入してきた老根は、70の年輪を重ねていますが、壮年男の逞しさを持って、内部からターくんを揺さぶります。そしてなおのこと膨張して、肉襞を摩擦しながら奥へと侵入します。
ウケは久しぶりでした。ターくんはシーツに顔をうずめ、ひさしぶりの苦痛に耐えていました。
張り詰めてテラテラと光を反射する巨大な亀頭、血管が縦横にのたくる陰茎、それがいま自分の体内に入っているのです。

男との肉の交わりは、半年ぶりでした。ターくんはこのときを、どんなにか待ち望んでいたことでしょう。この男が相手なら、思い切り虐めてもらいたい、という気分です。ターくんはもっと苦痛を受け入れようと、背中をたわめ、尻をうしろに突き出しました。
男もターくんの気持ちが分かっていて、乱暴に背後から犯します。
「お前、ちょっと太ってきたか」
荒々しくピストン運動を続けながら、男がターくんに訊きます。
「いえ、気のせいでしょう――あ、あ、いい――」
深い快感から、声も満足に出せません。息も絶え絶えといった印象です。

男はいったん引き抜くと、ターくんを仰向けにして、ベッドの縁に尻を持ってこさせ、前から無造作にズググと突き入れました。
そして本格的に腰をうねらせ始めました。それは興奮を伴う滑脱感で、マゾ的な快感がターくんの中で燃え上がってきます。
赤く上気した顔、荒い息を吐く半ば開けた口――大好きな顔を見上げて、ターくんはウットリとします。(ああ、いい顔だ)
男の動きが速くなってきました。
体の奥深いところまで侵入する圧迫感――濡れた滑脱――そのうちターくんはなにも考えられなくなりました。
男の息遣いが切迫したものにかわって、身体が震えだします。
(ああ、もうすぐ――)
射精のうずきを感じ取って、ターくんは神経を集中しました。男がウッと呻いたとたん、体内に埋めこまれたものがグワッと膨らみ、精液が直腸内に吐き出されるのを感じました。感動する瞬間です。

「お前を相手にしたあとは、いつも10歳は年取った気分になる」
男はターくんの顔を両手で挟んで、愛情込めたキスをしました。「この可愛らしい顔がいけないんだぞ。年甲斐もなく俺をハッスルさせる顔だ」
ターくんは嬉しくて、相手の顔を見上げながらつぶやきます。(お父さん)
テレビで見慣れた顔――七尾和繁は、ターくんにウケの悦びを教えてくれた男です。円堂先生と同じ70歳ですが、信じられないほど精力絶倫で、とにかく化け物のような男なのです。
若いころレスリングで鍛えた肉体、ロマンスグレーの頭に澄んだ瞳。上品な顔の中で、大きな鼻が、のんびりとして、したたかな大人の味を添えています。
それに経歴がまた風変りです。大手企業の社長を務めたあと、テレビタレントに転身して、お茶の間でも中高年を中心に、彼のファンは多いのです。

そんな経歴の持ち主ですが、シゲさんはざっくばらんに話しかけてきました。場所はカンちゃんのゲイバー。その日のうちに、二人はターくんのマンションに行きました。
二人は裸になって、お互いの性器の大きさに驚きました。と同時に、わくわくする興奮を覚えました。
最初はシックスナインで大きな性器を慰めあったあと、シゲさんはターくんのお尻を所望しました。
最初はとても無理だと思いました。ターくんは身体が小さいので、ウケを期待されることが多く、これまで何本かのオトコを受け入れています。でも、シゲさんのモノは倍近く大きいのです。
しかし愛あれば通じるように、唾液でトロトロになった軟らかい蜜壺が、怒りの形相した魔羅を受け入れたのです。
それは妊婦の生みの苦しみに似ていました。苦しみのトンネルを抜けた先の、感激と悦びに満ちた世界――。
すっかり終わったとき、ターくんは大きな体にしがみついて泣きました。

その夜から、ターくんは恋の虜になりました。テレビに映るシゲさんの姿を見ただけで、自分の身体がじんわりと濡れて開いていくようでした。
二人の親密な交わりは続きましたが、会う機会はきわめて少なく、せいぜい年に2回くらいなのです。
やがてターくんは悟りました。いくら彼がシゲさんに対して献身的に尽くそうと、シゲさんの心を自分ひとりに繋ぎ止めておくことは無理でした。では、シゲさんと縁を切るかといえば、そんなこと到底できません。あの体の芯までジンと熱くなるような笑顔、体内を揺さぶる快楽棒――それは、円堂先生と親密なお付き合いが始まってからでも、捨てがたいことでした。
結局、ターくんは、シゲさんの多情に憤りを覚えながらも、滅多にないシゲさんからの連絡を待ち続けているのです。


正ちゃんは、この前のことが気になって仕方がありません。旧友のシゲさんに出会ったことも予想外でしたが、それより、逃げるように店を出て行ったターくんのことが気になるのです。
あれから1週間ほど経ちますが、ターくんからの連絡はありません。若いターくんは、そろそろ精の放出欲に囚われているはずです。それでもお誘いがないということは、ターくんが正ちゃんを避けている、としか思えません。(ぼくはなにか、嫌われることをやったのかなあ)

そんな正ちゃんの様子を、アソコのマスターは同情して見ています。彼は、ターくんがあの七尾和繁とデキているのを知っています。あの夜も、ターくんは言い訳して店を出ていきましたが、その実、七尾和繁のあとを追っかけて、その夜は二人でしっぽりと濡れたはずです。
そんなこととは露知らず、ひとり思い悩む正ちゃんがかわいそうでした。
(なにか気晴らしが必要だな)
そこで正ちゃんに声を掛けました。
「ねえ、正ちゃん。今夜は二人でいいことしない?」
正ちゃんはマスターの誘いにすぐ合意しました。肛門性交のお手本を示してくれた恩義があったからです。

黄色っぽいスタンドの光に、正ちゃんとマスターの裸が浮かび上がっています。小太りの体と少年のような体。場所はマスターの賃貸アパート。
始める前にマスターから提案がありました。
「ねえ、正ちゃん。ちょっと面白くするために、なりきりごっこをしない?」
「なに、なりきりごっこって?」
「例えば、お医者さんと患者とか、ご主人と奴隷とか、その役柄になりきって、セックスをするんだよ」
「ええっ、難しそうだな。それで、カンちゃんはどんな役柄を考えてるの?」
「そうだな、新しく入社した女子社員と上役の部長はどう?」
「ええーっ、女子社員!」
「そう、イメージがかけ離れているほうが、面白いよ。要は、想像力の世界だからね」
結局、歳の若いマスターがタチ役つまり部長を、正ちゃんは新入女子社員(!)をやることになりました。

ベッドに横たわる正ちゃんの肌の上を、マスターの手が這いまわります。肩から胸へ、乳首でちょっと立ち止まって、形よく膨らんだ腹へとさがります。
「ずいぶんおなかが出ているね。きみ、誰かに種付けされたんじゃないの?」と上司の声で言います。
その手が下腹へと彷徨います。薄い草むらをかき分け、頭をもたげかけた陽根を避け、蜜袋を挟む太ももへ――広げた掌が太腿の内側の柔らかい肌にそって、ゆっくりと滑ります。その肌は、手のひらに吸いつくように、しっとりと汗ばんでいます。脚のあいだをすべる指が、尻の付け根の秘めやかな部分に触れたかと思うと、すっと退きます。
「ああん」
正ちゃんは思わず声を出しました。
「ああん、てなんだね?どうして欲しいの?」
部長になりきったマスターが、ほくそ笑みます。

今度はうつ伏せにされました。
ぽってりとした双丘に沿って、あたたかい掌が這いまわり、弾力を楽しむように掴みます。悪い指が双丘の狭間に潜り込み、窪みにひそむ蕾を見つけます。そこの柔らかみと、潤いを楽しむように、軟らかな縁にそって指が蠢きます。
「ああん、もう」
正ちゃんは、じれったさに尻を揺すります。
「うん、もう、どうして欲しいの?はっきりと言ってごらん」
こんなことが続いたあと、ようやくドッキングすることになりました。

正ちゃんは四つん這いになって、男が入ってくるのを待っていました。焦らされて、焦らされて、もう一刻でも早く入れて欲しいのです。
「よおし、今夜は腰が立たなくなるほど嵌めまくってやる」
背後からマスターの声がして、男根があてがわました。それから一呼吸あって、グニューと入ってきました。
「あっ――いいっ!」
ターくんとは違う感触でした。太い亀頭に慣れ切った菊座は、標準サイズの逸物を、すんなりと呑み込みます。
それでも飛んでしまいそうな快感を覚えました。
一直線に貫いて、すっかり没入すると、しばしの休憩。それから小刻みに動き始めました。
クチュクチュ、チュププ――湿った音がつづきます。
それに合わせて正ちゃんは、いつしか善がり声を出しています。直腸の内部が潤って、ほどよい太さの肉矢が滑らかに往復運動をします。

マスターは、ウケだけでなくタチでも床上手でした。先を急がず、緩急つけて、したたかに細い腰がうねります。
じょじょに良くなってきました。快感の波が、何度も、何度も、押し寄せては、引いていきます。体が熱くなってきました。
「ねえ、カンちゃん――なんか、変になりそう――こんなの初めて」
正ちゃんは陶然となって、うわごとのように言っています。

途中でマスターは抜け出ると、タオルで汗を拭きました。
「ふう、疲れた。ねえ、正ちゃん、小休止してワインでも飲む?」
返事を待たずに立ち上がって、マスターはワインを取りに行きました。
冷えたワインは喉に心地よく、火照った体を冷ましてくれます。
さすがにマスターはベテランだけに、ゆったりと愛の交歓を楽しむことを知っています。
正ちゃんはワインを飲みながら、すっかりくつろいでいます。ターくんに対する心配は、彼の頭の中からすっかり消え失せていました。


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20/06/29 06:30 神亀

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