(3)
耕平は栗田議員の勧めで、和服を作ることにした。お年寄りと接する機会が増えたから、和服のほうが親近感を与えるということだった。
店は、利用することの多い真山師匠が、紹介してくれた。
和服店の主人、樋口四朗は54歳、小柄できびきびとした男だった。
すでに師匠から連絡が入っていたのか、手際よく進めてくれた。まず着物と羽織の生地を選んだ。それから帯の色合わせをした。全体に渋い色調で、帯を少し目立つ色にして引き締めた。
生地選びが済むと奥の部屋に連れていかれた。そこでパンツ一枚の姿にさせられ、身体の寸法を測られた。
店主は作業をつづけながら、なにげなく言った。
「ところでもう師匠とできたんでしょう?」
あまりにもさりげなく言われたので、耕平は相手の言う意味が分からなかった。
「あのう、できたって――」
店主は含み笑いした。
「フフフ、隠さなくってもいいでしょう。これを師匠のお尻に入れたんでしょう」
ふいにパンツのふくらみを掴まれて、耕平は喘いだ。それでも男の手の動きに、陽根がムクムクと力を得てくる。
「うわあ、逞しい!うらやましい」
樋口が嬉しそうに言った。
そのとき、八百屋の親父が現れた。遠山大八、町では八ちゃんと呼ばれている。お調子者で、同級生の和服店の主人といつもつるんでいた。
彼は部屋の様子を見て、嬉しそうに言った。
「もう始めてるの。ヒーさんも気が早いね」
和服店の主人が言った。
「実は前から、お手合わせしたいと思っていたんですよ。あんたは高齢介護課の星だし、タチもウケもОKじゃないかってね」
(高齢介護課の星?タチもウケもОK?なに、それ?)
あれこれ疑問符が頭の周りを飛び交った。
今度は八百屋の親父が言った。
「そう。で、おれもその話に乗ったわけ」
耕平はパンツをずり下ろされ、ふたりがかりでバスルームに連れていかれた。耕平がその気になれば、ふたりを拒むこともできたが、彼は争いを好まなかった。根っからの優しい性格だったのだ。
ふたりの先輩格の男たちは、恭平の性器に悪戯しながら、尻穴にホースを差して洗浄した。まるで悪ガキそのものだった。
そして10分後――。
「はあっ!あ、あ、あ――」
背後に押し入られて、耕平は悲鳴をあげた。
昔、伯父の性器を受けたことはあるが、八百屋の逸物は、太くて生きがよかった。しかもそれは内部でなおのこと膨張し、腸壁をこすりながら奥へと入ってくる。彼はシーツを握りしめ、悲鳴を押し殺した。
八ちゃんは技巧を凝らさず、激しく腰を使った。一直線に突き入れて、引いて、また一直線に突き入れてくる。ウケの歓びどころか、これじゃまるで折檻だ。
そしてほどなく「うっ!」と太い声をあげて、早々と到達した。
体の奥深いところで奔流が起こった。
根元まで押し込んで内部を塞いでいた肉根が、快楽の放出を終えて引いていく。張り詰めたカリ首の広がりで、肉襞を引きずるように出てくる。それを追うように、白濁した男の精が流れ落ちてくる。
すかさず別の肉杭が秘門を塞ぎ、ズグズグと容赦なく打ち込まれた。
今度は和服店のヒーさんの番だ。
「ああ――そんな」
ようやく終わったと思っていた耕平は、新たな攻撃にたじろいだ。
ふたたび荒々しい抽送が始まった。疲れ知らずの男の凶器が、肉襞を激しい勢いで通過する。ついで深く繋がったまま、こねくりまわし、えぐりあげた。
「ひっ、ひいいっ!」
耕平はあごをのけ反らせて、悲鳴を上げた。
苦痛と同時に、もう滅茶苦茶に虐めて、という自虐的な気持ちが生まれた。男の太い茎を受け入れた腸壁が、ひくつくのを感じた。
ふいに恭平の内部で、どんでん返しが生じた。苦痛が快感に変わったのだ。さらなる快感を求めて、彼は自ら尻をうねらせていた。
感度が深まって、ヒーさんがグイグイとえぐりあげた。
「ああっ!――いいっ――いいいっ!」
耕平の口から、あられもなく声が洩れ出た。
ふいに絶頂の痙攣が、身体を走った。
「あっ!あっ、ああーっ」
ふたりの身体に挟まれた先端から、男の精が吐き出された。触られることなく、後門に加えられた刺激だけで、到達してしまったのだ。
それを追い詰めるように、なおも強く腰を入れ、激しく抽送された。
内部がさらに敏感になり、深い快感に、全身がおこりに罹ったように打ち震えた。
「あううっ――あ、あ、あ」
もう、何もかも分からなくなった。快感が腸壁を走り、突き抜けていく。
これでもか、これでもか、と打ち込まれた。
「も、もう――死ぬうっ」
ふたたび痙攣がおこった。しかし、洩れ出た精はわずかだった。
そのとき男の凶器が奥深くねじ込まれ、ドクンドクンと脈打った。ようやくヒーさんが到達したのだ。
――*――
「でも、栗田さん。それってなんだか、私が男娼みたいじゃないですか?」
「きみ、勘違いしてもらっちゃ困るな。区の職員は公僕だよ。区民サービスに努めるのが公僕の役目じゃないか」
「でも区民サービスって、なんか違うと思うんですけど」
「あっ、それはきみの勘違い。そりゃあ、公に発表できることでもないけど――寂しいお年寄りを慰めてあげるのは、立派なサービスじゃないか」
珍しく耕平と栗田議員の意見が食い違った。
原因は、栗田が依頼した(命令した)内容だった。
養老院に入っている鈴木という老人を抱いてやってくれ、というのだ。老人は御年82歳になるが、昔恋人と付き合っていた時代が忘れられない、天国からお迎えが来る前に、今一度、オトコをお尻で味わいたい、と言っているそうだ。
「鈴木さんは、私が大恩あるお方なんだ。だからぜひとも、彼の願いを叶えてやりたい」
「だったら栗田さんが、お相手をすればいいじゃないですか」
「きみ、私はウケだよ。ウケがどうやって出来るんだ」
ああ言えばこう言うやりとりがあって、結局耕平は、養老院にいる鈴木老人に会う羽目になってしまった。
鈴木三郎は穏やかな顔つきの陽気な老人で、耕平の訪問を無邪気に喜んだ。背は低いが、82歳にしては肉付きが良く、福々しい体型をしている。
耕平が名前を名乗ると、眼鏡の奥のつぶらな瞳が夢見るようにこちらの顔を見て、ついで視線を落として股間のあたりを見る。そしてひとこと言った。
「大きそうだね」
「はい?」
相手の真意をはかりかねて老人の顔を見ると、幼児のように純真な輝きをおびた瞳と目が合った。どうやら耕平が、何のために来たのか理解しているようだ。
その証拠に、鈴木老人は、はっきりした声で言った。
「お尻はきれいにしている。さっそくやろうか」
(えっ!)耕平はあわてて周囲を窺った。談話室には5、6人ほどの老人がいたが、こちらに関心を持っている者はいないようだ。
「あ、それから、ぼくのことはサブちゃんと呼んでね」
老人は通りかかった施設の女性に声をかけた。「チーちゃん、この人をぼくの部屋に連れて行っていい?」
声をかけられた女性は、愛想よく言った。
「ええ、サブちゃんの言っていた甥御さんね。時間はどれくらい?」
「んーと、1時間くらいかな」
「じゃあ大丈夫ね。5時に血圧を計るわヨ」
5時までは、あと2時間ある。(それにしても、おれが老人の甥だなんて、よく言うよ)
それに、まさかここでやるとは思わなかった。そこで老人に訊いた。
「あのう、ここでやるんですか?」
「ああ、そうだよ」
当然のような顔をして、鈴木老人は言った。
「でも、音が外に漏れるんじゃないですか」と耕平。
「大丈夫だ、ぼくはそんなに騒がしくないから」
老人は何食わぬ顔で言った。
部屋は、意外に思えるほど整頓が行き届いていた。
壁に添ったベッドのほか、窓際に作業机があり、その上に作りかけの帆船が置かれていた。全長30センチほどのミニチュアで、作るのに根気がいりそうだ。
鈴木老人はさっさと服を脱ぎだした。ふくよかな裸体だった。体毛がなく滑らかで、少し弛み気味の肌が年配者らしい。老人は耕平にも促した。
「時間がない。さあ、コーちゃんも早く脱いで」
(コーちゃん?)老人が勝手につけた愛称を口の中で反芻しながら、耕平もシャツのボタンを外し始めた。
最初は、仰向けに寝た耕平の足の間に腹ばいになって、老人が尺八した。入れ歯を外しているので、歯を当てられる心配がない。
男の根がギンギンに硬くなると、老人は自分の尻にオイルをつけて、いとも無造作にまたがってきた。入れるのに苦労したが、ようやく根元まで収めた。きつい締め付けはないが、まったりとした感触だ。
くびれて三段腹になった生白い老体が、ゆっくりと上下する。ピンク色に染まった肉付きの良い顔が、幼児返りしたようにあどけない。
つぎはベッドから降りて、腰を曲げて縁に両手をついた老人に、背後から挿入した。驚くほど滑らかな挿入感だ。
82歳の老人との交合は、すべてがゆったりとしていた。
耕平は全長を使って、滑らかな管を愛撫するように、ゆるやかに抽送した。内部は微熱をもって肉の襞が絡みついてくる。刺激的な快感ではないが、子供の心を持つ無邪気な老人に、深い愛情を覚えた。
彼は腰をうねらせながら、口の中で「サブちゃん」と呼んでみた。
その間、老人は、「ぼくはそんなに騒がしくない」と言っただけに、ほとんど声を出さなかった。ただ、ときおり気持ちよさそうな吐息をつくだけだった。

終始穏やかな性交が終わったとき、鈴木老人は目も口元も潤ませて「お陰でいい思い出ができた」と喜んでいた。
耕平は黙って、ほっこりとした老人の身体を抱きしめた。老人が望むなら、いつだってお相手するつもりだった。