目 次
老春の街(後) -  (4)
(4)

深川祭りが近づいて、あけぼの町もその準備にとりかかっていた。
町内会の総務を担当している清志は、シニアクラブの副会長であるカズさんと、事前の打ち合わせをすることになった。
カズさんに電話すると、暑いので、空調のきいたホテルで打ち合わせをやりましょう、部屋の予約は私のほうで取ります、と言った。
ホテルと聞いて一瞬どきりとしたが、カズさんが現役時代、よく利用していたビジネスホテルと聞いて、少し納得した。

待ち合わせのホテルに行くと、カズさんがラウンジのソファーに座っていた。その姿を見た途端、清志の心がときめいた。
カズさんが立ち上がって、手を挙げた。
「やあ、カンちゃん。今日は一段と暑いですね。どうです、仕事の前に、サウナに行って汗を流しませんか。すぐ近くにありますから」
そこで清志が手にした書類入れを見て「荷物はフロントに預けておきましょう」
カズさんは荷物を預けると、清志の腰に腕を回してドアに向かった。
まるでカズさんに抱かれているような気分で、清志はおとなしく従った。
昼下がりのサウナルームは空いていた。
カズさんは慣れた様子でロッカールームに行き、さっさと服を脱いだ。想像通り、ほどよく肉の付いた立派な身体だった。そして、思わず見とれてしまうような逸物が、股間で重そうに揺れ動いていた。
清志はどぎまぎして服を脱いだ。自分の皮を被った貧弱な性器が恥ずかしかった。

サウナからホテルに戻って、カズさんの後について部屋に行くと、そこは会議室ではなく、どこにでもあるビジネスホテルの宿泊室だった。
ベッドが部屋の大半を占め、隅のほうに申し訳程度に書き物机とテレビがある。
(えっ、どういうことなの?)
清志は何か言おうとしたが、声を出す前にカズさんが行動した。
ふいに抱きすくめられ、すかさず口づけされた。唇を合わせたまま、器用な指が身体をまさぐり、乳首の突起を刺激された。
「ああ――んん――」
清志が反応する間もなかった。
ベルトが緩められ、ズボンが引き脱がされていく。そのままベッドに押し倒され、皮をむくようにパンツがめくられた。

あまりの急展開に、清志はただ茫然として、相手のなすがままだった。
彼の下腹部にカズさんの顔が近づき、皮被りの性器が吸い込むように咥えられた。
「あっ、そこは――」
清志は自分の貧弱な性器が恥ずかしかった。それでも器用な舌の動きに、狂おしいほどの欲情が沸き起こった。
カズさんは吸茎しながら、自らのズボンのベルトを緩め、前を開いて性器を出した。それから逆さ絵の要領で身体を反転させると、上にのしかかってきた。
清志の顔の位置に、ズボンの合わせ目から、ギョッとするような図太い逸物が突き出ている。相手の意図をくみ取って、清志はおずおずと掴んだ。
太かった。それに隆々と息づく力が伝わってくる。思い切って舐めてみた。
男の道具を口にするのは初めてだった。多少しょっぱくて、奇妙な味だった。唇を開いて口腔に迎え入れた。それはなおも膨らんで、息苦しさが募った。

男と男だけができる、官能の極みだった。ふたつ巴の口淫がふたりの情感を高めた。
カズさんは念入りに吸茎をつづけながら、後ろの秘肛をまさぐった。
じょじょに舌の動きが激しくなった。膨れた陰茎を舌でくるみ込み、しごき上げ、くびれに軽く歯をあてて先端を吸い上げる。
とろけるような甘美が、一気に強烈な快感に変わった。
泣きだしたいような、叫びたいような快感――。
「ああっ!――あっ!」
息の止まるような一瞬が来た。
最後の一滴まで吸い取られるような喜悦のなかで、清志は、腿を突っ張らせて痙攣を繰り返した。

清志はしばらくボーっとしていた。
カズさんはいったんベッドから抜け出て、戻ったときにはオイルの容器を手にしていた。
逞しい腕が、清志の身体をうつ伏せにした。ついで、白い双丘に両手がかかり、左右に押し開かれた。
「きれいだ」
ひとこと、声が聞こえた。狭間に息を感じて、思わずククッと閉めた。
あらわにされた薄桃色の蕾に、舌が差し入れられた。
「ひっ!」
くらくらする羞恥と快感にとらわれて、清志は喘いだ。射精した気だるさの中で、身も心もカズさんに捧げる気分になっていた。
秘肛をまさぐる舌の動きに反応して、胎内の肉襞がひくつくのが、自分でもわかった。
指が添えられ、皺を集めた蕾が左右に押し広げられた。ピンク色の内襞がめくれ、そこを尖らせた舌がいやらしく舐める。
「ひいっ!」

いよいよ男を迎え入れる段階にはいった。
清志はベッドの上で仰向けになり、両膝を抱え込むポーズを取らされた。すぐ前にはカズさんが膝立になって、ほの暗い股間から天狗のお面のように逸物が突き出ている。
濃いライラック色に染まった亀頭が、蝮の頭のようにまがまがしく張り詰めて、オイルで生々しく濡れ光っている。
(怖い!)思わず逃げ腰になった。
ラブオイルでぬめる秘門に、硬く膨れ上がった先端があてがわれた。力が加えられると、じゅうぶん解された蕾が、じんわりと広がっていく。
頭が半分入ったところで少しの抵抗があった。グッと押し込めるとずるりと没入した。
「はあっ!」
清志があごをのけ反らせた。
関門を潜り抜けたところで、強烈な締め付けが待っていた。
「うっ!――くうっ」
今度は、カズさんが呻いた。
完全に入り込むと、男の形状そのままに肉襞が押し包んだ。
ズキン、ズキン――逞しい息吹が直に伝わってくる。
(ああ――カズさん)
清志は口の中でそっと、カズさんの名を呼んでみた。苦しみは消え、なんとも言えない喜びが湧いてきた。



合体したまま、カズさんが訊いてきた。
「こんなことをして、良かったのですか?」
普通の人間が聞けば、何をいまさら、と思うだろう。強引に操を奪っておいて、良かったのかもへったくれもない。
しかし清志は、普通の状態ではなかった。何の前触れもなく強引に犯されたとはいえ、夢にまで見た人と現実に、肉の交わりをしているのだ。
固く目を閉じた清志は、そっと目を開けた。
歳を取ることが資産となっているようなカズさんの温顔が、じっと彼を見ている。
(ああ、カズさん――大好き)
狂わしいほどの恋情が湧いてきた。彼は思わずカズさんの身体にしがみついた。

とたん、肉襞が蠕動する生き物と変わり、男の象徴を奥へと引きずり込む動きが起こった。
「うおっ――これは――」
内部の動きを感じ取って、カズさんが驚きの声をあげた。
深い愛情が引き起こした、奇跡である。あれほど恋い焦がれたカズさんと、ついに結ばれたのだ。これまでの様々な感情があふれ出てきた。清志は随喜の涙を流しながら、自ら尻をうごめかしていた。

カズさんが控えめに腰をうねらせだした。じょじょに大きく、速く――。
熱気がふたりを覆い包んだ。
今や遠慮会釈なく、カズさんは抽送運動を繰り返していた。極限まで膨れ上がった男の根が、内襞を押し広げながら、激しく行き来する。
(ああっ――カズさんに犯されている)
エネルギッシュな力を打ち込まれながら、清志は身も心もとろけるような幸せを感じていた。男を咥え込んだ肉襞がひくつくのが、自分でもわかる。止めようとしても、どうにもならなかった。
苦しい――でも、気持ち良かった。身体の隅々までカズさんの刻印を押されている、充実感だった。カズさんのひと突きひと突きが、ズンズン高みへと押し上げていく。意識が飛んでしまうような快感が渦巻いた。

ふいにカズさんが腰を強く押しつけてきた。
深く挿入されると、肉筒の奥に清志を狂わせる核があった。張り詰めた先端が、そこを刺激した。衝撃的な快感が、体の芯を駆け抜けた。
「ひいーっ!」
清志は声にならない悲鳴を上げ、その身体が反り返った。

ふたりはホテルの前にいた。清志の顔にはいくぶん恥ずかしさと、そして満ち足りた歓びが浮かんでいる。
「じゃあまた」
和敏は何事もなかったかのように、軽く手を振った。
清志は丁寧に頭を下げ、その場を立ち去った。若干、歩きづらそうだった。
その後ろ姿を見送る和敏の顔に、笑みが広がった。
(ふふ、かわいい。そろそろお付き合いの相手を、カンちゃんに絞り込むか)

和敏が家に戻ると、義父が近ごろ始めた小唄が聞こえてきた。

   最初には さほど好きとは思わねど〜
   会うたび毎の 親切が〜
   身に沁みじみ〜 沁みて
   今じゃあ こちらから命がけ〜
[19/09/01 00:33 神亀]
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