(4)
その日の釣りを中止して、3人は宿に戻っていた。先生はすっかりしょげかえって、バスタオル一枚の姿で震えながら、薄暗い部屋の片隅に沈んでいる。
濡れネズミと言うべきだが、先生は顔も、肩も、おなかも、どこもかしこも丸々としているので、その姿はさしずめ、濡れ達磨といったところだ。
「だから言ったでしょう、あぶないって」
浜やんは、文句を蒸し返た。
「そうですよ。たかがションベンの飛ばしっこで、年甲斐もない」
マスターが追い打ちした。
「おかげで、釣りがパーだ」と浜やん。
「そう、せっかく新幹線に乗って、ここまで来たのに」とマスター。
どうやらふたりの非難は、逆効果を誘発したようだ。先生はふてくされて、ふたりを睨み返し、ボソッと言った。
「ふん、ちょっと泳ぎたくなったんだ」
この期に及んでも、あいかわらず負け惜しみだけは言う。浜やんはちょっと意地悪な気持ちになって質問した。
「へーえ、私たちの放出した、おしっこの海で――それで、どんな味でした?」
「ふむ、おまえのチンポほどではないが、けっこう、いける味だった」
先生は座りなおした。「ねっとり、とろり、として――どことなく、ほのかな甘味があって――それに、海水の塩分が適度に効いていて、いい味やった」
ここまで負け惜しみが言えれば、芸術賞ものだ。
先生はすっかり立ち直って、余裕の表情で浜やんとマスターの顔を交互に見やった。
「しかし、ぼうやたちも助かったな、釣りができなくなって」
「どうして!」
声を揃えたふたりに向かって、先生はゆったりと座り直す。
「だって、そうだろうが。もしも、あのまま釣りに出ていたら、きみ達、いまごろは自己嫌悪におちいっているんだぞ」
「なんで!」「なんでですか」と浜やんとマスター。
「そう、いちいちハモって、騒ぐんじゃない。いいか、釣りを続けていたら、一番大きいのを釣り上げるのは、決まってるだろうが」
先生は、そこでふんぞり返った。「もちろん、わしだよ」
おもむろに、浜やんが言った。
「だったら一日延長して、明日の朝、釣りにでましょうよ。そこで勝負だ」
「お――おう」
先生の反応は一呼吸遅れた。「わしは構わんぞ。――マスターが良いならな」
そのマスターがうなずくのを見て、浜やんが言った。
「じゃあ決まりだな。で、先生が負けたら、何をしてくれるんですか?」
「なんだ、それは?」と先生。
「罰ゲームですよ。さっきおっしゃったでしょう、一番大きいのを吊り上げるのは、わしだって。それができなければ、先生は何をしてくれるのですか?」
「ふん、わしが勝つのは決まってるけど。――何をして欲しいんだ?」
「お尻を貸してください。先生のすてきなお尻は、まだ試していません」
「バカッ!何を言うか!」
先生は怒鳴った。少し声を落として「わしの尻はこの10年、使ってないわ。お前のデカブツなど入るか」
「大丈夫ですよ、先生。穴をじゅうぶん解して入れるから」
浜やんは言って、下から先生の顔をうかがった。「それともなんですか、先生。負ける心配でもしているんですか」
「バカ、わしが負けるわけないだろ!」
そこで先生は、宣言するように言った。「よし、分かった。百万が一、わしが負けたら尻を貸してやる。それでお前のほうは、負けたら何をするんだ?」
「それは先生が決めてください」と浜やん。
先生はずるそうな目つきで浜やんを見ていたが、おもむろに言った。
「1月の町内会宴席で、裸踊りをやってくれ。ご婦人連中も目の保養になるだろう」
一瞬戸惑ったが、浜やんは胸を張った。
「分かりました。この勝負、お受けしましょう」
そこでマスターのほうを見た。「で、マスターはどうするの?」
それまで横でふたりのやり取りを聞いていたマスターは、あわてて手を振った。
「あ、私は立会人と言うことで――」
――*――
藤井先生は皮を剥かれた白熊のように、布団の上で四つん這いになっていた。
81歳、86キロの肉体だが、トドのように満々と肉がついて、みずみずしい。
でっぷりとした白い尻が横に張りつめ、大きなタマタマが、タヌキの猥歌のように、重そうにぶら下がっている。その広大な谷間の中心部には、灰色の産毛で縁取られた肉感的な蕾が、慎ましやかに潜んでいる。
尻を掲げた先生から少し離れてマスターが見守る中、浜やんはマスター愛用の張形を右手に、貫通式の準備にとりかかっていた。まずは小振りの張形にオイルを塗りこめ、開かれた狭間におごそかに挿入していく。
「ひっ!」
先生が本能的に腰を引いて、息を詰めた。
「だめだめ、先生。逃げちゃあ駄目だって」
浜やんは断固として張形を突き入れ、ゆっくりと出し入れした。開口部がこなれてくると、ひとまわり太い張形に替え、回転運動を加えた。
「うっ、くくく――」
初体験でもないのに、先生がでっぷりとした尻をくねらせながら、苦しそうに布団に顔を埋めた。それもそのはず、長年ウケを楽しんできた先生だが、7歳年上の相方が立たなくなってから、尻は10年近く使っていないのだ。ずいぶん狭くなっているだろう。
それにしても、釣りの勝負に負けた先生は、いつになく従順だった。四つん這いになり、押し黙って、ひたすらシーツに顔を押し付けている。
今や肉厚の秘門は、オイルに濡れ光り、軟体動物の口のようにぬめっていた。それを見て、浜やんの下腹部に力がみなぎってきた。
「先生、そろそろソウニュウしますよ」
浜やんはパンツを脱ぎ、マスターの期待に満ちた視線を感じつつ、先生の太い脚を押し開いて、その間に膝を進ませた。そのままやわらかい蕾にあてがい、先端でグニュグニュと押し滑らせる。
先生が慌てて言った。
「あっ、ちょっと待てっ!」
かまわずグッと突き入れた。
「うわあっ!」
先生が可愛らしい悲鳴をあげた。
先端部が、熱く、滑らかなものに包まれたとたん、浜やんの興奮度はいっきに上昇した。彼は衝動に駆られて、グウーッと奥まで突き入れた。
「ぬおおーっ――いっ、痛い!抜いてくれーっ!」
先生は尻をゆすって抜け出ようとしたが、浜やんは突き入れたまま、しっかりと太った腰を押さえつけていた。マスターとは違った、圧倒的な挿入感だった。肉厚の管が全長をぴっちりと締めつけ、粘膜を通して豊満な柔らか味が伝わってくる。
「本当に入ってるんですか?」
必死になって苦痛に耐える先生の横から、マスターがのんびりと聞いた。
浜やんはマスターのために、すこし腰を引いて、結合部を見せてやった。あんぐりと口を開けた軟体動物のように、肉杭の円周にまとわりつく肉の管――。
「うわあ、すごい!こんな太いモノが入っているんだ」
自分も受けたことがあるのに、マスターが感心したようにため息をつき、それから先生の耳元で質問した。
「先生、どんなですか?浜やんの太いチンポを嵌められて」
「うるさいっ!黙っとれ」
先生は怒鳴ったが、シーツに顔を押し付けているので、くぐもった声にしかならない。
「先生、すごく具合がいいです。じゃあ、そろそろピストンしますね」
と浜やんが言った。
「待てい!慣れるまで、しばらくじっとしてろ」
先生が慌てて言ったが、浜やんは構わず、ゆっくりと腰を使い出した。
「うわあっ!動くなってば!」
先生がシーツにしがみついて、抜け出ようと大きな尻を左右に揺すった。そうはさせじと浜やんは、先生の肥えた腰をぐっと押さえ込んで、ゆっくりと先端まで引き出しては、またゆっくりと押し込み、そして素早くつついた。
ズググッ、ズニューッ、チュボチュボッ――。
「うぎゃあっ!――ああっ、ひいーっ!」
奥までググウーッと突いた。
「ぬああっ!」
ふたたび、そおーっと突いた。
「あ――くうっ!」
浜やんは、すっかり好色な気分になっていた。昔、女たちを身体の下に組み敷いて、善がり狂わせていた頃の充実感――それを今、感じていた。
(男でもこんなに狂うんだ)
彼は、まったく頭の上がらなかった先生を、屈服させていることに、小気味よい快感を覚えていた。(先生、病み付きになるほど可愛がってあげますよ)
先生は、ただひたすらシーツにしがみついて、うめき声をあげている。
いっぽうマスターは、密かにビデオカメラを構えて、交合の様子を撮影していた。なにしろ尊大な先生が、息も絶え絶えに悶えている姿は、めったに見られるものじゃない。
でっぷりと太った大きな肉体を、小柄な優男が犯しているのだ。傍のマスターには、まるで牛若丸が弁慶を犯しているように見えた。
浜やんは、女たち相手に磨いたテクニックを駆使して、腰をたくみにうねらせた。
クネクネ回して、ズンズン突いて、クニュニュとねじり込む――。
不意に先生が、尻をすぼめた。と同時に、太いイチモツを咥える肛門括約筋が、キュウッと締まり、少しの間があって、ふたたび握り締めてきた。
このふいうちに、浜やんはあやうく達しかけたが、下腹部を緊張させて、かろうじてこらえた。どうやら先生は、早く終わらせようとする作戦に出たようだ。
(その手には乗らない――)
浜やんは気息をととのえると、慎重に先生の背後を侵しつづけた。
内部がいっそう潤ったようだった。しっとりとして、動きが滑らかになった。
浜やんはこの上ない幸せを感じながら、ピストン運動をつづけた。心なしか先生も、すこし感じているようだった。
グッチョン、グッチョン、ズニューウッ、ズグググ、ピチャピチャ――。
昼下がりの密室で、濡れた卑猥な音が限りなくつづいた。
横ではマスターが、ビデオを撮り続けていた。おそらく今晩は、ビデオをつまみに、酒でも飲むつもりだろう。
浜やんはすっかり好色な気分になって、ビデオ撮影を意識しながら、体位に変化をつけて先生を犯しつづけた。
後背位から松葉崩し、帆掛け舟――先生の豊満な体を開けるだけ開かせて、できるだけ卑猥に見えるように交わりつづけた。
そして、今や明確に、先生も受け身の悦びを感じているようだ。野太い声はすっかり影を潜め、か細いすすり泣くような声に変わっていた。

かくして、浜やんの町内諸氏とのおつきあいは、一段と本格的になってきたのである。
しかし、まだ本人は気づいていなかった、自分自身にMの性向があるということを。