目 次
■ 老春の街(前) -  (3)
(3)

見るだけでなく、じかに触れてみて、マスターの身体のすばらしさに気づいた。ぽっちゃりとした身体は、適度の張りと柔らか味をもって押し返してくる。
きめ細やかな肌も、目を楽しませた。顔をよせると爽やかな石鹸の匂いがして、人好きのする顔に朱がさしている。
太ももの付け根に、『健さん命』の刺青があるのを見つけた。
「なに、これ?」と浜やん。
マスターが聞いてくれるな、と言うように、いやいやをした。

浜やんは女相手に磨いたテクニックを使いだした。指の後を追うように舌を這わせて、ふくよかな起伏をたどりつつ、肉の弾力と芯のある柔らか味を賞味する。
胸から腹へ、臍でちょっぴり立ち止まって、茂みのある小丘を彷徨う――。
薄い茂みの中から、クワイのような皮付き球根が、頭をもたげかけている。
積極的な浜やんに比べ、マスターは素朴で幼く、いつまでもためらっていた。
恥知らずが、浜やんをそそのかす――。
69の体勢で、目の前の球根を口に含み、舌のさきでなぶりだした。小さな膨らみが命を蘇らせて、みるみる固く膨らんでくる。
「ああ――」
マスターのなめらかな肉体に、さざめきが立ち始めた。ついで、かわいらしい指がためらいつつ、浜やんのオトコを探りあて、まさぐりはじめた。
幼い指の動きに、少年時代、皮を剥きたての頃の新鮮な不安が湧き上がってくる。
マスターは自分の気持ちに素直になって、遮二無二舌を使いだした。

「あ、いい――そこを舌でくるむようにしてごらん」
「そこ、そこ――くぼみを重点的に」
「そう――こんどは、裏側のふくらんだところを――」

マスターは言われるままに、うっとりとした表情で奉仕し続ける。
しばらくして、浜やんは半身を起こすと、マスターのぽっちゃりとした短い足を大きく開かせ、鼻先すれすれの谷間の壮観を観察した。
小皺を集めてゆるく閉じた菊門、丸まるとした淡紅色のタマタマ、薄紅色に色づいた蟻の門渡り――普段お目にかかれない恥部が、生々しく目に迫る。
浜やんは豊満な谷間に顔を埋め、舌でくすぐったり、入り口を舐めほぐしたりした。次に指を使ってじんわりと広げていく。
太ももがふるえ、豊満な尻が泡立った――。



浜やんは起きなおって、位置を探ると、一息に浸透した。
「はあっ!」
マスターが鋭く息を洩らした。
「うっ、くくくっ――」
歯をくいしばりつつも、マスターは必死に耐えている。
びっちりと詰まった肉の関門を、むりやり切り開いていく感触――。皮が根元にひきめくられる緊縛――。
浜やんは必死になって太った腰を抱きしめ、押えつけ、迫りくる潮に耐えた。
全長をぴっちりと覆い包む粘膜の微熱、息吹き、蠕動――怒りの形相をした男根に、もろもろの感触が押し寄せてくる。
もどかしくも、じょじょに募る熱情に急かされて、動き出した。
くちゅくちゅ、ずぐずぐ、ぐにゅーっ――。
濡れた滑脱――結合部の立てる湿った音。
動きは、速く、速く――ふいにマグマが急上昇して、痛切な射出感に息を詰まらせ、弾け飛んだ。
じょじょに脈動が収まるなかで、浜やんは、マスターの柔らかい肉体に覆い被さり、安息の闇に沈み込んでいった。

いったん情を交わしてからは、浜やんとマスターの仲は、急速に親密になった。
今夜も浜やんがバーに行くと、まず挨拶がわりにマスターのお尻を撫で、こんどの連休にスズキ釣りの一泊旅行にいかないかと誘う。マスターが無二の釣り好きだということを、知っての誘いだ。
案の定、マスターは小さな眼をかがやかせて、それはぜひ行きたい、ついでに藤井先生も誘ったらどうかと言う。
――スズキ釣りは以前、先生に連れて行ってもらったことがある。あれは面白い。針にかかったときの手応えは、まるでアノときのクライマックスに似ている。それに先生は、二度とお目にかかれないような、すごい大物を釣り上げた――と言う。
聞いていて、浜やんの負けず嫌いがむくむくと頭をもたげ、心安らかでなくなった。
どれくらいだったと聞くと、マスターは、おぼつかなげに両手をひろげる。
それを見て、浜やんは軽蔑したように、鼻をならした。

「なんだ、それくらいなら、並みじゃないか」
「そうかなあ――先生のは、でかいと思ったけどなあ」
「あの人のでかいのは、態度とお尻と、タマタマだけだよ。――私が釣ったので、最高はこれくらいあったかな」
浜やんは精いっぱい両手をひろげて、大きさを示した。
そこでマスターが、急に黙りこんだ。彼が静かなのは感服している証拠だ、と浜やんはますます活気づいて続ける。
「まあ、そのくらいなら、年寄りにしては健闘してる、と言っておきましょ」
「――」
「しかし私の釣ったのにくらべれば、大人と子供の差だな」
「――」
「小さい、小さい」
「――」

そのとき浜やんは、うなじがチリチリするのを感じた。理屈では説明できない、第六感が働いたのだ。恐る恐る振り返ると、藤井先生がいた。肉付きの良い顔は、心なしか強ばって、赤みがさしている。
「あっ、先生、いたんですか?」
にわかに明るく振舞う浜やんをジロリと見て、先生はしばらく黙っていたが、おもむろに口を開いた。
「ぼうや、なにか小さいと言う声がきこえていたが――なんの話だ?」
先生の声は低く、危険な響きを帯びている。
そのあと、先生の嫌味をさんざん聞かされたあと、結局、3人そろってスズキ釣りに行くことになった。

3人は東北新幹線からバスに乗り継いで、目的の漁師町にたどり着いた。宿に荷物を預けいったん外に出て、漁師の集まる海鮮居酒屋で晩飯を食べた。
晩飯の後、釣り宿の部屋に戻ると、どういうわけか、蒲団は二組しか敷かれていない。
そのうち、宿の主人がやってきて、揉み手をしながら申し訳なさそうに言う。「今晩は予定外に客が多くて、あいにく蒲団がふたつしかありません――」
「なあに、かまわんよ。繁盛してよろしいですな」
いつもは口うるさい先生が、意外にもあっさりと理解を示した。
それから、浜やんとマスターに向かって「ささ、きみたち、そちらの蒲団を使いなさい。今夜は、わしに遠慮をしなくてもいいんだよ」
先生は意味ありげにウインクして、自分はさっさともう一つの蒲団にもぐりこんだ。それから、片肘枕にふたりのほうを見て、にやにや笑いをうかべている。
浜やんたちはモジモジとしつつも、つつましやかにひとつ蒲団に忍び込んだ。マスターが蒲団の中で丸まって、浜やんに背中を見せる。浜やんは、といえば、先生の意地悪い視線を感じつつ、薄暗闇の天井をにらみつけている。
アルコールと時の刻みが、身体の緊張をときほぐしてくる頃、片腕を通じてマスターの体温が伝わってくる。柔らかさと弾力のある感触が、乙な気分を増幅する――。

暗闇に、すさまじい鼾がとどろきだした。横を見ると、先生は口をあんぐりとあけて、ひたすら桃源郷にもぐりこんでいる。
恥知らずが頭をもたげてくる。
浜やんは身体の向きを変えて、蒲団のなかの豊満な誘惑に体を擦りよせ、その柔らかみをまさぐり始めた。
たぬき寝入りのマスターが、それにこたえてお尻を後ろにつきだした。
蒲団の中で、苦労してパンツを脱ぐと、直の接触に快感が倍増する。
たまらず、マスターがこちらに向き直り、しがみついてくる。口を吸いながら、お互いの身体を愛撫する。肉欲の不安が募った。ふたりは性急に結合した。
暗闇に熱気がたちこめ、弾む息に、密やかな行為が増幅される――。
「あ、はあっ!いいっ――」
夜の闇に、マスターの押し殺した声が沁みわたった。

釣り宿を出た未明、3人は堤防の端に立って、仲良くならんで連れションをした。男の道具も縮こまるほどの寒さに、小便の放物線から湯気が出ている。
そのうち誰が一番遠くまで飛ばせるか、ということになって、皆一様にいきんで、腰を前に突き出した。
夜明け前の水面は黒々として、波の音に交じって、放水を受けた水しぶきの音が、とぼとぼと聞こえてくるだけ。波紋も、さわやかな水の流れも、見ることができない。
例によって、年甲斐もなく、先生が負けず嫌いを発揮する。太鼓腹を突き出しつつ、じりじりと前ににじり寄る。
「先生、あぶないですよ」
「ケッ、子供じゃないんだ」
「だって――」
「だっても、くそも――あっ、ああっ――」
案の定、バランスを崩して、先生が両手をばたつかせる。あわてて伸ばした浜やんの手先をかすめて、その巨体が宙に舞った。
[19/08/18 05:52 神亀]
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