(2)男色地獄
夕食を終え、シャワーで一日の汗を洗い流したあと、高山秀樹は神谷神父の部屋に行った。
こんなおそい時刻に呼ばれるのは、初めてのことだった。
老神父は、就寝用の薄地のローブを身にまとい、書き物机から顔をあげて、秀樹にベッドの横にある椅子を勧めた。いつにない師の厳しい表情に、何が起こったのだろう?と秀樹はいぶかった。
向かい合わせに座ると神父は、秀樹と下村芳実の淫行を目撃したことを、とつとつと話しだした。その間、老師の顔は、おっとりと練り上げられた品位をもって、若い助手の目をじっと見ていた。
老神父の七三に整髪された白い短髪が、照明の下で鈍く反射し、丸く後退したひたいは艶やかで、ほとんどしわも見あたらない。ピンク色をした上品な唇やなめらかな頬に、老人の持つあまいムードが漂っていた。
秀樹は話を聞きながら、ローブの下で息づく、師の柔らかい肢体を意識した。夜間、私室で就寝着を身に付けたその姿は、なにかゾクゾクとする官能をくすぐる眺めだった。
そんな助手の思いに気付かず、神谷神父は話をつづけた。
「秀樹、きみはわたしに誓ったのじゃないかね。きみの悩み、そのう――同性愛の悩みを、わたしとふたりで解決していこうと――」
「でも神父さま。神父さまはわたしを救おうとしてくださいませんでした。それに神父さまからは、芳実さんのような愛情も感じられません」
「それは違う。わたしはきみを愛しているのだよ。きみが苦しいときには、いつでも相談相手になるつもりだった」
秀樹は頭を振った。そしてきっぱりと言った。「でも神父さまはあの女にしか――死んだあの女にしか、愛を与えてくださらなかった」
神谷清児は愕然とした。この助手は知っていたのだ、自分と若い女信者の情事を。
清児は立ち上がると書き物机から離れ、窓の所に行って、すっかり暗くなった外を見た。そうすることで、心の動揺を抑えようとした。
「あれは――」
清児は口ごもった。「どうしようもなかった――。でも、わたしが罪を犯したことに変わりはない」
秀樹は、老師の着るローブに浮き出た柔らかい線を目で辿りながら、熱心な口調で言った。
「神父さま、愛し合うことが本当に罪でしょうか?ではなぜ神は、人間に性欲を与えたのでしょうか?わたしは女に興味が湧きません。でもわたしは、芳実さん――それに神父さまに魅かれます。この気持ちはわたしにとって、自然な衝動です。ありのままに生きることが、なぜいけないんでしょうか?それに神父さまは先ほど、わたしを愛している、とおっしゃった」
秀樹は立ち上がって老師に近寄ると、親密なしぐさでその腰に腕を巻きつけた。神父があわてて彼の腕をふりほどき、あとずさった。小さな目が驚いたように見開かれている。
「わたしはそんな――」
神谷は言葉を失って、首を左右に振った。
「わたしも神父さまを愛しています。これまでずっと抑えてきました。でも今は、無性に神父さまと愛し合いたい――」
秀樹が近づくと、神父は壁にへばりついて、恐怖の目で彼を見上げた。その様子は、どこにでもいる年老いた男の姿だった。
秀樹は急に怒りを覚えた。
自分の心に闖入してきて、いかにも自分に気がある素振りをした老師は、最後の瞬間に、自分を裏切ろうとしているのだ。
(それとも、無理矢理に犯す演技を期待しているのだろうか?)
彼は手を伸ばすと、強引に老人の体を抱きすくめた。腕の中でもがく柔らかい肉体の感触に、急激に昂ぶった。
白髪の頭からいい香りが鼻腔をくすぐった。神父の頭に鼻をうずめ、その匂いを胸いっぱいに吸いとった。それから顔をずらし、なめらかな額から頬へと唇を押しつけた。
いよいよ我慢できなくなると、神父の体をベッドの上に押し倒した。老人は呻き、秀樹の体の下でもがいた。
その体を強引に押さえつけた。腰帯を解き、引き剥ぐようにローブを脱がせた。ついで、片手を老人の体のしたに差し入れ、腰を持ち上げると、下帯を解いた。
むき出しになった老人の性器――小さな体には不似合いなほど、長くて太くて、先端部はぼってりと分厚く膨らんでいる。まるで太った老ウナギのように、ぐったりと伸びきっていた。
秀樹は立ち上がると、自らベルトをゆるめ、ズボンを下げ、足から抜き取った。ブリーフ一枚になった股間は、大きな丸石を詰め込んだようにふくらんでいた。
神谷清児は恐怖に身をすくめ、息をひそめて、中年の助手が身につける最後の一枚をとるのを見つめた。
ぎょっとするような元気の良さで弾け出た。ぎんぎんに張り詰めて、天狗のお面のように反りくり返って――。
清児はくぐもった悲鳴をあげ、体をねじらせてベッドから逃れようとした。この男の逸物は、ずっと昔、ロンドン郊外のパブで、若い彼の体を蹂躙した年配の白人たちよりはるかに逞しく、しかも魔界のモノのようにまがまがしい形状をしていた。
高山秀樹はすっかり逆上していた。もはや相手が、尊敬してやまない神父であることも忘れていた。
小さな体を捕まえ、その足にからみつく布きれを取り去った。老人の裸体は、無力な幼児のように頼りなげだった。生白い体の中で、いちだんと白さを増す、ぷっくりと膨れた腹が目についた。
秀樹はベッドに上がり込むと、神父の体をうつ伏せにひっくり返した。腰の付け根から丸いふたつの球体に分かれはじめるあたり、そこに淡い影をおとすあわせ目が、いいようもなく卑わいで幼く見えた。
彼は両手で双丘を押し開くと、秘めやかな谷間に顔を埋めた。それから舌を使って、味わうようにじっくりと舐めまわした。
舌先が窪みに息づく軟らかい蕾に触れると、神父がひるんでベッドの方に腰を引いた。老人は哀れっぽい声で懇願しつづけた。
「おお、よしておくれ――こんなことはいけない――お願いだ――神罰があたるぞ」
しかし、やめなかった。秀樹は押し黙ったまま、魅惑的な開口部をほぐす作業を続けた。途中で舌に代わって、指を使いだした。
口に含んで唾液をつけた指先で、やわらかい皺の集合体を撫で、押し開き、吸いつくようなぬめりをもつ肛門括約筋を広げながら、内部に潜り込ませた。
「ああっ!――こんなこと――」
神父がすすり泣くような声を上げた。
構わず、つるりつるりと指を抽送させた。いくぶん老人の体から硬さがとれて、開口部もゆるんできたようだ。秀樹は指を2本にして、唾液をつけると、更なる拡張を始めた。
目的の箇所がじゅうぶん解れると、こんどは神父の口で自分の性器を慰めようとした。
老人は恐怖の目で屹立した男根を見つめ、口を固く閉ざして抵抗したが、頭をつかんで押し付けていると、ついに諦めたように小さな唇を開いた。いったん始めてみると、老人は経験者のように舌と口腔を使って、秀樹の興奮をよりいっそう高めた。
あとは、いよいよひとつになるときだった。
秀樹は、万が一と思ってズボンのポケットに忍ばせた、ラブオイルの小さな容器を取り出し、老人の秘部に塗りつけた。
老神父に四つん這いの体勢をとらせ、挿入する前に、目の前で開かれた双丘の合わせ目をのぞき見た。オイルを塗りつけられた秘門は、ピンクに色づいて清らかな輝きを見せ、緩く口を開きかけていた。
秀樹の欲情は、煮えたぎるように高まった。
やわらかく贅肉のついた腰に手を添え、男根を目的の箇所にあてがうと、前に突き進んだ。
「うわあっ!――ああっ――あぁぁ」
神父があわれっぽいうめき声をあげた。
腰をうねらせ、何度か突き刺したのち、ふいに先端が湿った温かいものに包まれた。
じんわりと押し進めた。
温もりと柔らか味が根元へと広がってくる。
同室の芳実とは違う感触だった。柔らかく包み込まれて、襞のひとつひとつが、絡みつき、吸いつくような感じだった。
いったん道がつくと、今度は老師の肉体を仰向けにして、ふたたび浸透した。
それから、ゆっくりと慎重に抽送しだした。
内部が潤ったようだ。それと共に、動きが滑らかになった。老師のほうを見ると、穏やかな顔を歪めているが、漏れ出る声は和らいでいた。
神父の様子を見て、いっきに熱情が押し寄せてきた。秀樹は腰の動きを速めた。分身を包む腸壁が微妙な動きをした。
めくるめく快感が襲ってきた。
彼はしゃにむに腰を前後した。そしてアッと言う間に射精した。
