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(6)最後の夜

いよいよ仙台から離れる前夜、和之の寝室に植田支店長が訪れた。
穏やかな顔と可愛らしいパジャマ姿を見て、和之は自分の気持ちを抑えるのに苦労した。
(一度でいいから、この人を抱きたかった――)
和之は、老人の腰に腕を回して、部屋の中に招き入れながら、冗談めかして言った。
「これは嬉しいご訪問だ。なんですか、支店長。まさか、夜の逢引でもやろうって言うんじゃないでしょうね」
支店長は、うつむき加減に、和之の顔をまともに見ようとしなかった。
そして、部屋に入ると唐突に、和之の大きな体にしがみついてきた。
「私を抱いてくれ」
和之にとっては、青天の霹靂だった。
「抱いてくれって、支店長はご自分のおっしゃってる意味が分かっているのですか?」
「ああ、私は――大内くんと経験済みだ。明日きみが居なくなると思うと、どうしても、自分の気持ちを抑えきれなくなった」

和之は小柄な体を愛撫しながら、まだ夢の中にいるような気分だった。
老人の裸体は、なめらかな丸みを帯びて、柔らかい中にも適度の張りがあった。肌もきれいだった。風呂に入ったあとなので、しっとりと潤って、愛撫する手の平によく馴染んだ。
和之は、老人の胸から腹へと、指の先を追って唇を滑らせながら聞いた。
「運転手と経験済みだとおっしゃいましたね。大内さんが支店長を誘ったのですか?」
「いや、私のほうから頼んだ」
「支店長がにわかに男色家になったとは、解せない話ですね。いきさつを聞かせてくれませんか」
支店長は、手と口による愛撫に、控え目に反応しながらも、とつとつと話しはじめた。
「皆にお堅い男だと思われているようだが、私だってそれほどウブじゃないんだ――。きみが鳥居さんや川勝会長、それに大内くんと特別の関係にあるのは、何となく感じていた。それで、大内くんを問い詰めたら、とうとう告白した。――あっ!」
男根をつかまれて、叉次は小さく喘いだ。先端が湿った温かいもので覆われる。ついで鈴口から尿道のふくらみにかけて、ねっとりと舌が絡みついてくる。
「あ――ああ」
支店長がひかえめに喘いだ。

「それで、どうしましたか?」
和之が口を離して、先を促した。
「私にだって煩悩がある。そのう――男色の世界にも興味がある。私は父を早くに亡くして、父性を感じる男性に密かなあこがれを抱いてきた。大内くんは、私が好きだと言うし、それで――」
「それで、どこまでやりました?」
和之は、老人の性器を弄びながら聞いた。小振りで包茎だが、指の動きにつれ見え隠れする、ピンク色の頭がなんとも可愛らしかった。
「どこまでって――」
「お下品に言えば、大内さんのチンポをしゃぶったり、お尻の中に入れさせたりしたか、ということです」
「ああ――全部やった」
「大内さんの太いチンポをはめられて、痛くなかったですか」
「痛いというか――すごく興奮して、よく分からなかった」
「じゃあ、おしゃぶりから始めますか」
和之は、逆さ絵の体勢になると、自分の股間を老人の顔の前にもっていった。

和之は尺八をつづけながら、支店長の尻を開いてみた。小じわを集めて柔らかく閉じた菊門は、かすかに色づいて、どことなくとぼけて見える。その菊門に指をそえて左右に押し開くと、ピンク色の清潔そうな色合いをしている。
「中も洗ったのですか?」
和之が聞くと、支店長は膨れ上がった男根から口を離して「ああ」と言った。それから恥ずかしそうに付け加えた。
「一番大切なのは事前の準備だ、と大内くんが教えてくれた」
叉次は、吉田の大きさにすっかり興奮していたが、そのいっぽうで怖い気持ちもあった。大内の魔羅でも受け入れるのは大変だったのに、いま唾液に濡れ光る吉田の魔羅はさらにひと回り大きかった。しかもカリ首が発達して、こぶが盛り上がったように禍々しく張りつめている。
(本当にこんな恐ろしいモノが、尻に入るのだろうか――)
しかし和之は、相手を痛がらせずに入れることに定評があった。彼は先を急がずじっくりと年配者の菊門を解きほぐした。指で広げるだけでなく、舌をつかって舐めほぐしたり、あるいは舌先を侵入させたりして、支店長の性感覚を高めていった。



正常位になって、いよいよ結合しようとしたとき、さすがに叉次は恐怖を覚えた。相手のほの暗い股間から屹立した魔羅は、彼が経験した大内の魔羅より倍近くも大きく見えた。彼の体は初夜を迎える花嫁のように、ぶるぶると震えていた。
ついに叉次は、弱音を吐いた。
「吉田くん、きみのは大きすぎる――入れるのは無理じゃないかなあ」
「大丈夫ですよ、支店長。痛くないように入れますから」
和之が安心させるように言って、叉次の太ももを押し上げながら、覆いかぶさってきた。尻の窪み全体に、亀頭がヌンッとあてがわれる。
「あ、待って――やはり無理だ――怖い――」
叉次は、部長の太い腕にしがみついて、喘ぐように言った。
「大丈夫、大丈夫。さあ、力を抜いて。大きく息を吸って――息を吐いて――」
巨大なものが肛門を押し広げながら、じんわりと入ってくる。
「あっ――あっ――あっ――あ、あ――」
叉次は口をいっぱいに開け、息苦しさに耐えた。
自分の体が極限まで押し開かれていく――。

いよいよ我慢できなくなったとき、部長が体を乗り出して、口づけしてきた。口蓋をねぶられて、舌を吸われた。新たな興奮に、束の間、股間の苦痛が消えたようだ。
そのとき、巨大な亀頭部が、ズニュルンと入ってきた。
「ひっ!はああっ!」
亀頭が入ると、動きが止まった。
時間が凝固したようだった。
叉次は、口をあんぐりと開け、あごをのけ反らせた姿勢で固まっていた。あまりに大きく拡張されて、肛門括約筋が麻痺し、痛いのかどうかさえも分からなくなった。
それを見計らったように、肉の砲弾がじんわりと奥へ侵入を開始してきた。
ヌリッ、ヌリッと前進し、ヌルッと退く――。二進一退の繰り返しだ。
ついに肌と肌が密着するのを感じた。体内の奥深いところが圧迫されている。
奇妙な心情だった。
息苦しさの中に、思い切り虐めてくれ、という自虐的な気持ちも芽生えていた。

「全部入りましたよ」
目をきつく閉じた叉次の耳に、部長の満足した声が聞こえてきた。
その温かい声が、苦痛をやわらげた。
叉次は感激のあまり、涙がにじみ出るのを覚えた。
体内で逞しく息づく、男の象徴――。相手の体の一部が自分の体内に嵌め込まれて、融合し、力強い息吹を伝えてくる。
なんだか父親に抱かれて折檻されている子供の気分になった――それもドキドキするような、禁断の折檻を。
いっぽう和之は、柔らかいデリケートな感触にうっとりとしていた。老人の肉筒は、硬直した逸物をしっぽりと咥え込んで、強く、緩く、呼吸をしているように締めつける。
(素晴らしいウケになるだろうと想像していたが、これほどまでに具合がいいとは――)
和之は、すぐには動かなかった。深く挿入したまま、老人の直腸が太い性器の形状に馴染むまで、辛抱強く待った。
それまでの間、老人の乳首を舌で刺激したり、逸物や蜜袋を指でまさぐったりして、老人の興奮を高めてやった。

和之は、繋がったまま身を乗り出して、そっと口づけした。そのまま舌を差し入れると、支店長の舌が絡みついてきた。それをチュウチュウと吸ってやった。
「どうです、支店長。まだ苦しいですか?」
目をしっかりと閉じていた支店長が、そっと目を開けた。目じりに涙が滲んでいる。
支店長は眉間に皺を寄せて、面映ゆい表情でささやいた。
「ああ――苦しいけど、妙な気分だ。なんて言うか――きみの分身が私の体の中に入っていると思うと」
「これで支店長と私は、真の一体感を感じることができるんです。――さあ、私を感じてください」
和之は愛らしい顔を見ながら、直腸内にはめ込んだ逸物をビクンといきませた。
「あっ!」
支店長が喘いだ。
ビクン、ビクン――。連続的に、逸物をひくつかせた。
それとともに、老人の苦悶の表情が和らいできた。まるで雲間から、春のやわらかい光が差し込んだように――。

ようやく老人の体が侵入物に馴染んできたとみて、和之は、ゆるやかに抽送運動を開始した。
先を急がずゆっくりと――。
ヌプッ、ヌン、ヌン、ヌププッ――。
動きも微妙に変化させた。入り口付近を軽くノックしたり、奥までじんわりと突き入れて、今度は抜ける寸前まで引いたり、あるいは突き入れる角度を変えたりした。
そのうち、老人が、かすかに善がり声をあげだした。
「ああ――あはあ、ああぁ――」
叉次は完全な受身になりきっていた。肛門括約筋が、初期拡張による緊張から、慣れによる緩和に変わったときの不思議な感覚――体内を行き来する、逞しい肉根――恐れと快楽の交錯する感覚だった。
ゆるやかな動きの中で、未知の快感が、体の奥底からじんわりと湧き上がってきた。

抽送がなめらかになると、和之はいったん引き抜いて、老人の体を横向きにし、膝を曲げさせた。潤滑油を補充すると、その姿勢のまま丸っこい尻の狭間に突き入れた。
動きが自由になった分、ピストン運動の変化が容易になった。相変わらずゆるやかに、自由自在に角度を変えて突いた。
老人の善がり声が、すすり泣くような調子に変わってきた。禍々しく隆起した男根の一突き一突きが、老人の清廉な品格を壊していくようだった。
ズズン、ピチャピチャ、クチュクチュ、ズブブッ――。
「あああ――ひっ、うっ、うっ、あうう――」
叉次は、もはや恥も外聞もなく、声をあげ続けた。
男の一突き一突きが、これまで覚えたことのない異質の快感をズンズンと増幅させる。
あまりの深い快感に自分を見失いそうだった。そして若干の不安も感じていた。このままどこか自分の知らない世界に、連れていかれるのではないかと――。

和之は、経験の浅い老人の体を開拓するとき、過度の刺激を与えないように注意していた。
相手が鳥居や川勝のような男色のベテランなら、持てるテクニックを存分に発揮して、善がり狂わせることもできる。
しかし、支店長のような初心者では、かえって苦痛を与えかねない。
老人が我を忘れそうになったところで、和之は陰茎を引き抜いた。
「少し休みましょう。体を洗ってきますか?」
支店長は、ホッとしたようにうなずくと、裸のまま、よろけるように部屋から出て行った。肛門性交に慣れていない時期は、よく便意を催すことがある。和之は気を使っていた。

しばらくして支店長が戻ってきた。すっきりした表情をしている。背の低いほっこりした肉体は、幼児のように愛らしかった。
和之は待ちかねたように、老人の体を膝の上で抱いて、そっと口づけした。
叉次は、自分からは何もせず、一方的に、部長の口づけと愛撫を受けていた。器用な指先が、快感のツボを探り当て、優しく刺激する。たちまち、うっとりとする快感の波に呑み込まれる。
(年寄りになっても、こんなに感じるとは――)叉次は驚いていた。

「こうして支店長を抱けるなんて、なんだか夢のようです。欲を言えば、もっと早くからこうしたかった」
和之がささやきかけると、叉次が小声で、気恥ずかしそうに言った。
「正直言って、きみの優しさが怖かった。でも後で気づいたんだ。怖いのはきみを好きになりそうだったからって――。そしてあのとき、初めて自分の気持ちに気づいた」
「あのときって?」
「きみが、五木の子守唄を歌ってくれて――キスをしてくれたときだ」
「悪い人だ。タヌキ寝入りをしていたのですね」
「そんなつもりはなかった。でも嬉しかった、きみの男らしい優しさが。――ああっ!」
菊座の入り口をまさぐられて、叉次は喘いだ。オイルを塗った指先が、柔らかい縁を丸くなどり、中心部にゆっくりと入ってくる。
ふたたび快感が、ジクジクと湧いてくる。
和之が耳元でささやいた。
「さあ、もう一度、お宮参りを始めますよ」
ふたたび熱気が二人を包み込んだ――。

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18/09/09 09:36 神亀

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