ゲイと芸術

音楽家にゲイが多いという話はよく聞く。
何事も探求心旺盛な古希爺は、さっそくネットで調べてみた。
いやー、出るわ、出るわ――。
検索の最初にヒットしたのはチャイコフスキーである。彼は学生時代からゲイの友人が多くて、その頃に交わされたラブレターも残っている。
レナード・バーンスタインやエルトン・ジョンの名前も出てくるが、興味をひかれたのは、イギリス人のベンジャミン・ブリテンという作曲家である。
ピーター・ピアーズというオペラ歌手を生涯のパートナーとして、没後、ふたりのお墓が仲良く並ぶ写真もある。
私がなぜブリテンに興味をひかれたかと言うと、映画『「ベニスに死す』をオペラにしているのだ。そこで、美少年に恋をする熟年作家役に、ゲイパートナーであるピアーズを起用している。

『ベニスに死す』は知る人ぞ知る、ゲイを悲しくも美しく表現した映画である。この映画のヴィスコンティ監督もゲイだったと言うし、原作者のトーマス・マンは、自分の体験からこの小説を書いたといわれている。
マンはノーベル文学賞を受賞した作家である。結婚して子供を6人も設けているが、自分がゲイであることはひた隠しにしていたようだ。なにしろ西洋のキリスト教国では、ゲイがスキャンダルになる時代だった。
このマンから影響を受けた作家のひとりに、三島由紀夫がいる。
三島と交友関係にあった三輪明宏は、後日語っている。三島は自身の同性愛嗜好に強いコンプレックスを持っていたが、それを克服してクリエイティブな能力を発揮した――と。

ところで、ゲイと音楽について調べていくにつれ、音楽に限らず芸術全般で活躍しているゲイの多いことが分かってきた。
『ゲイ文化の主役たち』(青土社)という単行本がある。
著者のポール・ラッセルは、れっきとした大学教授である。この本で彼は、古代から現代までのゲイやレスビアン100人を独断的にランキングしている。
1位ソクラテス、17位ミケランジェロ、18位レオナルド・ダ・ヴィンチ、20位シェイクスピア、62位三島由紀夫、といった具合である。
もちろん著者の独断によるものであるから、ランク付けが正当であるかどうかは論ずる必要もなく、気楽に読めば良い。
ただ興味深いのは、本書の訳者も多くの著名人が抜け落ちていると感じたのか、考えられる遺漏リストをあとがきで挙げている。
その中で目に留まったのは、芸術全般に精通していたジャン・コクトーや、『月と6ペンス』のサマセット・モームなど。日本人では、江戸川乱歩や淀川長治が載っている。

ヨドチョーさんこと淀川長治は、皆さんのなかにも懐かしく思われる方は多いと思う。温厚な顔に太い眉毛。『日曜洋画劇場』の解説の名台詞。
「怖いですねえ、恐ろしいですねえ」
「それでは次回をご期待ください。サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ――」
ヨドチョーさんは生涯独身を通したが、87歳のとき、「子供のころから男が好きだった」と公にしている。
彼は太った俳優が好みで、ピーター・ユスティノフやネッド・ビーティがお気に入りだったそうだ。

ピーター・ユスティノフは、アガサ・クリスティ原作の名探偵ポワロの映画などで有名な俳優であるが、ネッド・ビーティはご存知の方も少ないと思う。
『スーパーマン』でジーン・ハックマンが敵役を演じたとき、その子分として、ビーティはコミカルな演技をしていた。
私がビーティを知ったのは、ヨドチョーさんの日曜洋画劇場で見た『脱出』と言う映画である。
アメリカの山奥に川下りを楽しみに来た都会の男たち4人。そのうちのひとりをビーティが演じていた。それが彼の映画初出演である。
映画では、山中でならず者に遭遇したビーティが、四つん這いになって豚の鳴きまねをさせられながら、後ろから犯されるシーンがある。
衝撃的なシーンだった。ぽってりと太ったビーティのピンク色の裸体。繰り返し聞こえる弱々しい悲鳴。大自然の美しさと異常な性行為の対比――。
そのときの光景は、強烈な印象として私の脳裏に焼き付いている。



さて、芸術家にゲイが多いということは分かったが、なにが相関しているのであろうか。
先だってネットサーフィンしていたら、それを裏付けるような記事に出会ったので、ここに紹介しよう。原文は分かり辛いところがあるので、わたしなりに噛み砕いた解釈でお伝えする。

一般男性とゲイの違いを、脳の構造で比較した研究発表がある。それによれば、違いが一番顕著だったのは、『前交連』の大きさだという。前交連は右脳と左脳をつなぐ脳梁という部位の一部分である。
その断面積は、一般的に女性が男性より13%大きいが、ゲイのそれを測ってみると、女性より18%、一般男性より34%も大きかった。
これが何を意味するかと言うと、前交連の太いゲイは、左右の脳を使う度合いが一般の人に比べて、際立って大きいということである。
つまり、独特の認知能力を持つわけだから、その創作物もユニークなものになりやすい――芸術性や独創性を問う世界では、それだけ他から抜きん出ている、ということらしい。

では、なぜこうした大きさの違いが生じるのか?
この違いは生体的なものであって、学習や環境によって後天的に生じるとは考えにくい。つまり性的指向は、環境が全く関係なしとは言い切れないものの、遺伝子的な要因が大きく関わっていると言える。
極論すれば、ゲイになる要因は生まれながらにしてある、ということだ。

この研究発表は、MRIの検診技術によって可能となったのであろうが、一体、何人のゲイを調べたのだろうか。この説が、学術的にどれくらいの信ぴょう性があるのかは定かでない。
しかし、音楽家や作家、画家など天才型の人間に、ゲイが多いのは事実であることから考えれば、信じてもいいのかなと思う。
となると、「目からうろこ」である。
私はてっきり、生まれて以降の環境や外的要因によって、男が男を好きになると思っていた。それが、生まれつきそうなる要素を持っていたというのだから、大逆転の発想である。

私がこのエッセイで何を言いたかったのか。
それは、自分がゲイであることに誇りを持ちなさい、ということである。
なぜなら――
ゲイの多くは脳の一部の前交連が大きい ⇒ 右脳と左脳を使う度合いが大きい ⇒ 芸術性や独創性で優れている
――ということになるからである。

古今東西、芸術家にゲイが多いという事実。逆に、ゲイだからこと芸術に優れているのではないだろうか、と考えた。

17/02/03 14:37 神亀

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