男の色気



先だってお友だちの古希祝いをしてやった。
古希を文字通り解釈すると、70歳まで生きるのは「古代稀なり」ということであろうが、長寿の現代ではしっくりこない。
今年7月に厚生労働省が発表した平均寿命によると、男は81.09年、女は87.26年となっている。これは事故死や病死を含んだ推計値なので、フケと呼ばれる歳まで無事生きてきた皆さんの余命は、この数字よりまだ上になる。

さて、この古希になったおじいちゃん――。
フケ専にとって、オスの機能から遠ざかりつつあるこの年代のフケは、垂涎の的なのである。
長年の風雪に耐え抜いて、泰然自若とした顔つき。喜び悲しみを経て刻み込まれた、目尻や額の深い皺。甘いも酸いも噛み締めた、象のように優しい目。あるいは鹿のように、老いてなお純朴な眼差し――。
特にタチの男から見て、何といっても魅力的なのは、長い年月をかけて熟成された肉体であろう。
筋肉が脂肪にとって変わり、すっかり柔になっているが、女性ホルモンを吸収した中性的な肉体は、可愛くて、そして苛め甲斐がある。
ミルクとバターでじっくりと練り上げたような柔らかい肌。張りを失ってすっかり弛めになった肉体。肉が落ちて、少年のようにスリムになった脆弱な肉体。
いずれもフケ専にとって、想像するだけで涎が出てくる。
また、性格的には、激しやすい若年時代から、揉まれ揉まれて角が取れ、すっかり穏やかになっている。
相手の言いなりに受け入れる、包容力の大きいところもある。
それでいて、どうでも良いことで、変に頑固になるところもあって、これがまた可愛らしい。

そんな古希爺は、裸にしなくても、ちょっとした仕草に、男の色気を感じる。
診療所の一画で服を着替えるフケの姿。ズボンのベルトを弛め、ファスナーを下ろし――動きのまだるっこい柔な指を見ているだけで、なんともほのぼのとした愛情を感じる。
電車の揺れによろめく見知らぬフケ。思わずその腰に腕を回して支えてやると、アノ時の喘ぎ声のような吐息をついて、恥ずかしそうに頭を下げる。そして手に残る柔らかい感触――。
ネオンサインまたたく夜の街路を歩きながら、周りに目を配りつつ、おずおずと手を握ってくる相方の初な横顔――。
汗と歓喜に満ちたひとときを過ごしたあとの別れ。帰宅サラリーマンで混み合う駅の片隅で、そっと指を絡めてくるフケのいじらしさ。その目に滲む、惜別と哀愁の念――。
まさに古希を過ぎたおじいちゃんは、男色世界の至宝なのである。


ふと思い立って、この一年間、月一のペースでエッセイを投稿しようと決めた。今回は六月に続いての二回目である。

18/07/31 05:41 神亀

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