戻る / 目次 / 次へ

第5話 夢をみる男

阿礼鋤カンパニーの経理担当課長、僕野芳桂(ぼくのほうけい)は舞い上がっていました。昼間、阿礼会長と牛丼屋に行ったときのことです。
出てきた丼物を食べながら、会長はおもむろに切り出しました。
「ところで僕野くん、この週末は空いてるか?」
「はい、今週は、特に予定は入っていません」
50歳にして独身の芳桂は、いつも予定が無いのは当然ですが、もったいぶって返事をしました。
「じゃあ、私に付き合ってくれ。お客様と泊まりで温泉に行くんだ」
「承知しました。――で、お客様はどなたですか?」
「ああ、御居処カンパニーの奈井須部長だ」
その名前を聞いたとたん、脈拍が急上昇しました。芳桂は阿礼会長が好きでしたが、奈井須部長はそれ以上に好きでした。温泉に入っている奈井須部長の裸体を想像したとたん、呼吸困難に陥りそうなほどときめいてきます。
そんな彼の思いに気づかず、会長はさりげなく付け加えました。
「行き先は太田くんが知ってるから、彼と打合せしておいてくれ」
運転手の名前を聞いて、ウキウキ気分だった芳桂の気持ちがすこし沈みました。
太田運転手は穏やかな顔と優しい心根の老人でしたが、芳桂は何となく苦手意識があります。老運転手の風貌は、遠い昔の苦しい思い出に繋がるからです。
――彼が初めて男色を経験したお相手の老人に。

――*――

大学最後の夏、僕野芳桂は東北地方へひとり旅をしていました。お金を節約した行き当たりばったりの旅でした。
山間部に入って、川原のそばにある、ひなびた露天風呂に入ったときです。
地元の人たちらしい素朴な顔つきのお爺さんが3人、のんびりと湯に浸かっています。岩を組んで作られた露天風呂は、まだ陽も明るいこともあって、すべてが透明感に包まれていました。

服を脱いで、澄みきった湯に足を入れたとき、のんびりとした会話がピタリと止まりました。お爺さんたちは息を呑んだように、芳桂の方を見ていました。
それほど彼の裸は人目を惹きました。ぽっちゃりと丸みを帯びた体は、女のように色が白く、きめの細かい肌をしています。
「兄ちゃん、めんこい体してんのぉ」
白髪の老人が話しかけてきました。
その老人の脇腹をつついて、頭の禿げた老人がいたずらっぽく言います。
「おどぅ、ナンパしてるだべか?」
それから芳桂に振り向いて、人懐っこそうに笑いかけてきます。「んだば、おめぇの裸見てると、その気になってくるでよぉ」
「え、その気って?」
思わず芳桂が聞き返すと、お爺さんはニヤリと笑いました。
「その気ったらば、その気だべぇ。おめぇの裸見てると、おらぁのマラが、大きくなってくるだべなぁ」
お爺さんのあからさまな表現に、芳桂はどぎまぎしましたが、老人たちの人の良さそうな笑顔を見ていると、嫌な気持ちはしません。
特に、いかにも優しそうな顔をして、ひときわ大きな体つきをした老人には、妙に惹かれるものを感じていました。その老人は穏やかな笑みを浮かべて、おとなしく皆の話を聞いているだけです。
素朴な会話に付き合っている内に、その夜は大きな体つきの老人の家に泊めてもらうことになりました。その老人は独りで住んでいるとのことでした。

家に着くと、茅葺き屋根の大きな農家でした。
晩飯は、味噌仕込みの鍋をご馳走してくれました。それにお酒も少し出ました。
無口な老人は、アルコールが入ると訥々としゃべりだしました。
老人は大きな体をしていますが、その顔は柔和そのものでした。薄くなった頭髪、象のような優しい眼、肌艶のよい頬――老人を見ていると、芳桂は祖父と一緒にいるような、安らぎを覚えていました。

その夜、芳桂が床についていると、老人が布団の中にもぐり込んできました。大きな体に抱きしめられ、芳桂はいつのまにか裸にされました。
老人もすでに裸になっています。灰色の陰毛で覆われた股間に、ズル剥けの男根が垣間見えました。頭をもたげかけて、ぎょっとするほど巨大でした。
「ああ、やめて!」
芳桂は老人の腕の中で、もがきました。
しかし老人はやめません。
「ああ、おらぁもう、我慢できねぇだ」
老人は人が変わったように荒々しく、芳桂の体を求めてきました。体格差に加えて、農作業で鍛えた老人の力にはかないません。
芳桂はなすすべもなくうつ伏せにされ、女のように犯されました。
死ぬような苦痛でした。
とても老人のモノとは思えない逞しい肉杭が、小さな開口部を押し開き、体の奥深く侵入してきました。そして、蒸気機関車のように、湿った音を伴って行き来します。
芳桂はただただ布団に顔を押しつけて、弱々しく喘ぎ続けるだけでした。
延々とも思える時が過ぎ、苦しむ芳桂の耳に、老人の声が聞こえてきました。
「ああー、出そうだ――あ、出すべぇ!」

――*――

お得意先の奈井須部長を接待して、阿礼会長と芳桂は、温泉地に赴きました。
宿に着いた早々、皆で露天風呂に入りました。その後、牡丹鍋と山菜料理に舌鼓を打ち、お腹が落ち着いたところでもう一度、露天風呂に入りました。
芳桂は幸せでした。密かに想いを寄せる奈井須部長が、すぐそばにいるのです。スポーツで鍛えた逞しい肉体、筋肉の震えや暖かい体温までが感じ取れます。
あいにく、奈井須部長は阿礼会長と一緒の部屋で、芳桂は太田運転手と同室でした。できれば芳桂は、部長のお世話をしたかったのですが、こればかりはどうにもなりません。

夜風が火照った肌に心地良く感じます。パンツ一枚に浴衣を羽織って、芳桂はひとり、庭で風呂上がりの涼を取っていました。彼の所から、阿礼会長たちの泊まる離れの部屋が見えました。
障子越しの窓明かりを見て、彼はつくづく思いました。
(ああ、ぼくもあの部屋に泊まれたら――)
その時、庭に面した掃き出しのガラス戸が開いて、会長と奈井須部長の姿が現れました。おぼろ月に照らされて、すっきりとした浴衣姿の部長を見て、芳桂はすぐにでも駆け寄りたい衝動に駆られました。
そのとき、ふと二人の姿が重なり合いました。
目の錯覚かと思って目を凝らしますと、そこに信じられないものを見ました。
なんと会長と奈井須部長が抱き合って、唇を合わせているではありませんか。

部屋に戻ってからも、胸の動悸は治まりません。嫉妬、落胆、羨望――頭の中で諸々の感情が渦巻きます。芳桂は力なくソファーに横たわりました。
運転手はすでに寝ているのか、襖越しに健康的なイビキが聞こえてきます。
芳桂はソファーに横たわったまま、目を閉じて、離れにいる二人のことを思いました。
(ああ、今ごろ、奈井須さんと会長は――)
芳桂の頭の中で、淫らな思いが渦巻きました。無意識に、乳首を摘みました。
あ――。
ツーンと快感が走りました。
乳首を弄んでいた指が、下へと這い進みます。薄い叢から早くも頭を持ちあげた肉茎にたどり着きました。指先で皮を剥き、柔らかく揉むように擦りました。
熱い靄が押し寄せてきます。彼は甘い吐息をつき、いつしか浴衣とパンツを脱いでいました。こうして、むき出しの肌を触っていると、奈井須部長にやさしく愛撫されているような錯覚をおぼえます。
尻の下に手を伸ばし、人差し指の腹をそっと菊座に押し当てました。
ああ――。
ズンとした快感に、思わず声が洩れ出ます。

そこで第六感が働いて、薄目を開けた芳桂は、ギョッとしました。
浴衣姿の老運転手が突っ立って、こちらをじっと見おろしていたのです。
「うわっ!」
慌てて跳ね起きた芳桂をなだめるように、太田運転手は横に腰掛け、芳桂の肩に手を添えました。それから、課長の秘密を知った優位性をにじませて、気安そうに話しかけました。
「課長、そんなに動揺しないで、私の話を聞いてください」
「な、何ですか?」
「あなたに夢中なんです」
「はい?」
いつの間にか肉厚の手が、芳桂のむき出しの腰から尻にかけて、愛撫するように撫でています。意外に手の早い老人です。
老いた運転手は、おもむろに言いました。
「最初に課長の姿を見たときから、何かがビビッときていました」
「それは、静電気かなにかの問題では――ううっ!」
不意に口づけされて、芳桂は最後まで言えませんでした。
逞しい両腕で羽交い締めにされ、芳桂は身動きできません。その姿勢のまま荒々しく尻を揉まれたとき、股間から脳天にかけてズンと快感が突き抜けました。

それから数分後、芳桂はむせびながらも、老運転手のイチモツに舌を絡めておしゃぶりしていました。とても70過ぎの老人の持ち物とは思えない、逞しさでした。しかも自分の持ち物の倍以上の大きさです。
こうしてオトコのお道具を味わっていると、心の底から愛おしさを覚えました。現金なもので、今の芳桂の頭の中から、奈井須部長のことはすっかり消え去っていました。
それでも老人のお道具は太すぎて、顎が外れるほど口を一杯に開きましたが、全長の半分ほど納めるのが精一杯でした。
そんな芳桂の姿を、老運転手は目を細めて愛おしそうに見ています。

やがて、芳桂は後ろ向きになって、老運転手にサービスして後ろを見せていました。大きな肉厚の手が、背中のくぼみ伝いに這い下りて、丸っこい双丘を撫で、深い谷間のやわらかい皮膚をまさぐります。
股間に息を感じたとたん、湿った器用な舌先が谷間を舐めます。唾液をたっぷりと塗りつけながら、尻の付け根から蟻の門渡りまでゆっくりと行き来します。
そして、楚々としたツボミをじっくりと舐め回します。
「あ――いい」
芳桂はすっかり快楽の渦に呑み込まれていました。じくじくと体の奥底から沁み出してくる快感――もっと何とかして欲しいような、もどかしさでした。
そして、次の行為が開始されました。

「はあっ!く、苦しいっ!」
侵入物はあまりにも太く、まるで尻の狭間ぜんたいが押し開かれたようでした。芳桂はソファーの背もたれを強く握り締め、息を潜めて我慢しました。
雁首の半ばまで埋まったところで、運転手は一旦引きました。使い慣れていない芳桂の後ろは、処女のように締りが良すぎるのです。
潤滑油をたっぷりと塗って、再挑戦です。
亀頭を菊座に押し付けて、円を描きながらじょじょに慣らして、じんわりと雁首を埋め込んでいきます。括約筋の強い抵抗にあいますが、ねじ込むように突き入れると、括約筋がじんわりと広がっていきます。
「――つうっ!もう駄目――やっぱり無理です」
芳桂は、たまらずに弱音を吐きました。
「大丈夫――もうちょっと」
運転手は芳桂の腰をがっちりと抱え込みながら、グッとひと押ししました。
――ズルッと亀頭が入りました。
「んぎゃあっ!」
芳桂は一声悲鳴をあげて、そして静かになりました。運転手はひと思いに、そのまま根元までズヌヌと突き入れてきました。
「ひいっ!ぐ、ぐああっ!」
再びけたたましい悲鳴があがりました。



痛いほどの締め付けです。全長がすっぽりと熱い粘膜に覆われています。あれほど痛がっていた課長は、いまは奇妙なほど静かでした。
しばらく課長の内部を太さに馴染ませておいて、太田泰平はゆっくりと動き出しました。課長が必死の形相で、痛みに耐えているのが分かります。
結合したまま徐々に体位を変えて、向かい合わせになりました。
二人の姿は、まるで大股開きに大樹にしがみついた蝉のようでした。それでも巨大な性器は、芳桂の体の中心部にきっちりと食い込んでいました。

しっかりと目を閉じていた芳桂は、思い切って目を開けました。祖父のような滋眼がじっとこちらを見ています。その顔を見ていますと、遠い昔の思い出が、甘く切なく、懐かしいものに変ってきました。彼は我知らず老人にしがみつき、自ら腰をうねらせていました。
きれぎれの吐息に善がり声が混ざり合い、至高のひとときはもうすぐ――。
部屋の外では、おぼろ月が濃紺の中空に浮かんで、人の営みを優しく眺めているかのようでした。

わたしの話はこれでおしまい。ご清聴ありがとうございました。
あとは、あなたたちのハッピータイムをごゆっくり。

戻る / 目次 / 次へ

18/04/20 09:12 神亀

top / 感想

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.35b