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異国の地にて
55歳――それは私が大きな転機を迎えた年齢だった。
最大の出来事は、秘かに交際を続けていた社内の相方が、定年退職したことだ。
私より6つ年上、コロコロと太って愛すべき性格をした人物だった。彼の退職後もつき合いを続ける予定だったが、もうひとつの事由で中断せざるを得なくなった。
私にニューヨークへの転勤辞令が出されたのだ。北米のある企業をM&Aする時の責任者だったことから、半ば予想していたことだが、いざ実際に辞令が出されてみると、この歳になって海外か、と複雑な思いがした。
その当時、二人の娘は社会人と大学生、そして女房はサークル活動に大忙し。となると、私の単身赴任は必然の成り行きだった。
家族の淡白なねぎらいの言葉を聞きながら、私は手荷物をまとめ、単身アメリカに向けて旅立った。