■ ウィタ・セクスアリス(豊潤の門) - 第8章 豊満な相棒
第8章 豊満な相棒
(1)
48歳の時、執行役員に昇格して、法人営業部門の責任者になった。
役員ともなると当然多忙を極めたが、何かと気がつくベテランの業務課長がいたお蔭で、ずいぶん助かった。
業務課長の国見は、仕事仲間から親しみを込めて、クニさんと呼ばれている。コロコロと太ったネアカのベテラン社員で、58歳、私より10歳年上である。
私が新人の頃、大阪支店で国見と同じ職場にいたことがある。その当時から、人の良い、愛すべき人物として人気があった。しかし企業では、人が良いことが出世に結びつくとは限らず、私が本部長となった今も課長どまりである。
20年ぶりに会った国見は、フケ好きの私にとって、思わず生唾を飲み込むほどの魅力的な風貌になっていた。
もともとぽってりと太っていたが、脂っけが抜けたぶん、初老男のしなやかな魅力が増している。すっかり白くなった頭髪、同じく白いものの目立つ太短い眉毛、二十瞼の円らな瞳――肉付きの良い丸顔は、柔和さが増して、彼の性格そのままである。
国見は本部付きの業務課長だったので、私の秘書的な役割が多かった。
取引先と会食の予約をしたり、出張先のホテルや旅券の手配をしたり、ときに私のカバン持ちとして外交に同行する。
彼はいつもかしこまった態度で、私の命令を唯々諾々と聞き、一歩下がって付いてくる。彼の定年退職まであと2年あるが、ずっと年下の重役に仕えることに、なんの抵抗も感じていないようだ。
私は、この人の良い年長者を、性格的にも肉体的にも、すっかり気に入っていた。
国見はよほど清潔好きなのか、いつもかすかな石鹸の匂いがしている。おそらく毎日風呂に入って、体のすみずみまで丁寧に洗っているのだろう。
それに、肉がたっぷりとついた幅広の尻や、柔らかい唇をした小さめの口は、私の生殖細胞を大いに刺激した。
性格的には、根アカで几帳面、細々としたことにもよく気がつく。それでいて、どこか抜けたところがあって、ときに失敗もやる。
私は、年齢的に先輩である国見の失敗を大目に見ていたが、同じ失敗を繰り返したときは、容赦なく叱りつけた。
そんなとき国見は、しばらくしょげかえっていた。それでも1時間後には、すっかり立ち直り、いつものネアカに戻って、若手社員にジョークを飛ばしながら仕事をしている。
要するに国見は、大陸風というか、めげない癒し系の人間なのだ。
そんな年上の業務課長がそばにいて、私の淡い想いは、より濃厚な、ドロドロとした欲望に変わっていった。
夜、マンションにひとりでいるとき、ふと国見のことを思うことがある。
手足が短く、愛嬌のあるアンコ型の体つき。横にも後ろにも肉のついた大きな尻。白いものの勝る豊かな頭髪。肉づきも血色も良い、艶やかな丸顔――。
地味だが温厚そのものの国見の風貌は、私の脳裏にしっかりと焼きついていた。
しかし、国見と親密な関係を結ぶチャンスは皆無だった。晩婚の国見には、ひとまわり若い女房と大学に行く娘がいた。そして彼は家族を愛していた。酒のつきあいがないときは、いつもまっすぐ家に戻っている。
私は、たまにふざけて国見の尻を撫でることもあったが、それが意味のある関係に発展する余地は、今のところ見当たらなかった。
4月の終わりに、本部社員の親睦ゴルフ大会が行われた。
幹事は若手社員が担当していたが、思いがけず国見が私と同じ組に入っていた。
プレーが始まって、私は太った国見のゴルフ姿に、魅了された。彼のスイングは、すこし変則的だが、バランス感覚が良かった。両足を踏ん張ってどっしりと構え、両腕は力を入れずにシンプルに振る。下半身で打つといった感じだ。
特にバックスイングするとき、尻の上部がムクムクッと盛りあがって、左右にググッと開き、布地を通してでも、豊満なふくらみや広大な谷間があらわになる。
その様子を見るにつけ、私の好き心が疼いた。
ゴルフが終わって、そのあとの親睦パーティーも無事終了した。
参加者たちが帰るなか、私と国見はあとに残った。これから近くの温泉地に行って、一泊する予定だった。前に国見が行ったことがあって、露天風呂が良かったというので、日頃の慰労を兼ねて彼を誘ったのだ。
ホテルにつくと、さっそく国見の薦める露天風呂に出向いた。雨露よけの上屋がある露天風呂には、地元の人間らしい数人の年配者たちが入っていた。
むきだしの梁からぶら下がる裸電球が、薄闇にわびしげな光を投げかけている。もうもうとした湯煙と透明な湯――おだやかな温度で、さほど熱くない。首まで漬かっていると、心の底までのびのびとしてくる。
国見はすこし離れたところにいた。髭のない艶やかな頬と血色のよい滑らかな唇、丸い額に汗を滲ませている。
私は立ち上がると、湯の中をゆっくりと歩いて国見の方に近づいた。血の巡りが良くなって膨張した陰茎が、股間で重そうに揺れ動いた。
国見は私の股間を見て、ギョッとしたようだ。彼はあわてて目を逸らせた。
私は、国見のすぐ横の縁石に、股を広げて腰掛けた。それから話しかけた。
「いい湯ですね。さすがクニさんだ、すばらしい露天風呂を知っている」
声をかけられた国見は、必然的にこちらのほうを向くのだが、すぐ前にムキムキの男根があって、目のやり場に困っている様子だ。私の顔をまぶしそうに仰ぎ見て、
「本部長のお気に召して、なによりです」
と言って、再び私の股間に目をやる。
そこでごくりと唾を呑み込み、唇が乾くのか舌で湿らせた。それから「お先に失礼します」と言って、先に湯から上がった。
国見の裸を見るのは初めてだが、その後姿を見て、にわかにざわめきを覚えた。
左右にでっぷりと張った豊満な双丘、その狭間にひそむ柔らかい窪み、重々しく揺れ動くピンク色の蜜袋、体毛のないツルツルの白い太もも――歩くと尻の付け根に、えくぼのような淡い窪みが出来て、私の好き心をそそる。
(フム、まんざら男が嫌いってわけでもなさそうだ。だったら、今夜、無理矢理にでも可愛がってやるか)
私はひそかに心を決めた。
ホテルに戻って、食堂で牡丹鍋を食べた。イノシシは地元の猟師が仕留めたものだと言う。七味を入れた味噌の出汁が絶品だった。それに地元の酒がよく合っていた。
「今日はお疲れさま。本部の社員たちも皆、喜んでいた。それに私自身、日頃からクニさんのお世話になりっぱなしだ。本当にありがとう」
乾杯するとき、私は言った。
国見は照れくさそうに「本部長は褒めすぎですよ」と小声で言って、椅子の上で尻の位置をずらした。風呂上がりでつややかな顔、太った身体を包む浴衣の前開きから、ふっくらとした白い胸が覗いている。
私は、国見のふくよかな浴衣姿を見ながら、頭の中で計算していた。
国見が嫌がっても、力づくで、慰み者にすることはできるが、そのあと彼はどう出るのだろうか?泣き寝入りするのか、それとも強気に出て、会社で問題にするのか。
国見の温和な性格からすれば、おそらく騒ぎ立てることはしないだろう。
それでも――。
目も口元も和ませて、牡丹鍋に舌鼓を打ち、勧められるままに酒を飲む年配の部下を見ていると、引ける気持ちもまだあった。
そんな私の気持ちに、踏ん切りをつかせるような話が出た。
たまたま話題が社員の健康管理に及んだとき、国見が今度、大腸がんの精密検査を受けることになったと言った。人間ドッグを受けたとき、便の検査で血液反応があったらしい。
「お尻から内視鏡を入れて検査するんですって。なんだか怖いです」
国見は眉をひそめて言った。
その一言で、ある考えがひらめいた。私は安心させるように、あっさりと言った。
「クニさん、まったく心配いらないよ。その検査なら私も受けたことがある。検査のときはベッドに横になって、尻を出しているだけでいいんだ。苦痛もないし、楽なものだよ」
そこで私は、おもむろに言った。「あえて言えば、検査の前に、体の中をきれいにしておくのが大変だけど」
国見はうなずいた。
「説明書を読みました。1週間前から、食べるものを制限するんでしょう。それに腸をきれいにする流動食も貰いました」
「それだけじゃ十分じゃないんだ」
私はきっぱりと言った。「まあ、病院の指示はそこまでだろうけど――。いいかい、異物をお尻に入れるんだよ。検査のとき、家で事前に、直腸の洗浄をして出かけるんだ」
国見が考え込むように頭を傾けた。
私は何でもないと言わんばかりに、軽く言った。
「部屋に戻ったら、洗浄の仕方を教えてあげるよ」
食事が終わって部屋に戻ったとき、私は当然のことのように、国見に裸になることを要求した。
戸惑う国見を強引に裸にして、部屋に付属のバストイレに連れて行った。
そこで腰をかがめさせ、シャワーを使って尻を洗ってやった。
「直腸に湯を入れて、何度か吐き出すだけできれいになるよ。ただ、肛門は傷つきやすいから、指でほぐしてやるんだ」
私はもっともらしく説明しながら、豊満な尻に液体せっけんをなすりつけ、菊座に指を入れて入り口をもみほぐした。あくまで医師の専門的な態度で――。
これで、私の思惑の第一ステップは完了した。
(2)につづく