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ウィタ・セクスアリス(胎動の門) - 第12章 卒業
第12章 卒業

企業への就職先も決まり、ぼくの学生生活が終わろうとしていた。それはまた、性的な関係を持った年配の男性たちとの別れの時でもあった。
ぼくは万感の思いをこめて、それぞれの年配者たちと最後の肉体的交わりを持った。
とくに料理店主の韮塚を抱いたときは、胸が痛んだ。純情な彼は、前の朝倉に次いでぼくがいなくなることに、耐えきれない様子だった。
彼らはぼくの卒業と就職を祝って、思い思いのプレゼントをしてくれた。それぞれの性格が反映された心暖まる品々だった。
会社で重要なポストにある海原や岡田は、「困ったことがあったらいつでも来なさい、相談に乗るから」と言ってくれた。彼らの心遣いはありがたかった。しかしぼくは、これまでの男色関係といっさい縁を切って、『正常』な生活に戻るつもりだった。
その締めくくりの意味で、ぼくはこれまで関係を持った年配者たちと、心を込めて親密なひとときを過ごしたのだ。

「有難く頂戴します。でも、3つも必要なんですか?」
ぼくは海原の部屋にいた。目の前には3つの印鑑がある。社会人になるお祝いとして、海原が注文して作らせたものだった。
「小さいほうから、認印、銀行印、実印だ。社会人の必須アイテムだよ」
そう言って穏やかに微笑む海原の重厚な顔を見て、ぼくは熱いものが込み上げてくるのを覚えた。
「なんだか海原さんが、ぼくのお父さんのように思えて――」
あとの言葉が続かず、ぼくは涙をグッと我慢した。父が早世したことは、すでに海原にも話していた。
「きみにそう言っていただいて、私も嬉しいよ。――じゃあ、どうしょうもなくなった時の行為は、そんな気持ちだったのだね」
後のほうはいたずらっぽく言って、海原はちょっと恥ずかしそうに微笑んだ。いつかの行為――海原の素股を使って、ぼくが性欲を解消したことを言っているのだ。
ぼくはすまして答えた。
「いえ、あの時は、年上の恋人だと思ってやりました」

スタンドの明かりが、ベッド上の海原の肢体を柔らかく包み込んでいた。
ぼくは、うつ伏せに横たわる年配者のうえに体を重ね、ゆるやかに腰をうねらせた。
怒張した逸物が、でっぷりとした双丘の狭間に押し包まれ、獲物を探るウツボのように滑脱する。
海原とはもう二度と無いだろうと思っていた性行為をしているのは、最後だから、と思いがけず海原のほうから持ちかけたからだ。
ぼくはやわらかい感触を味わいながら、より強い一体感を得たい衝動に駆られていた。
あとは肛門性交しかなかった。
でもそれを海原に言えば、拒否されるのは分かっていた。海原は肛門性交を怖がっているが、痔が悪い訳ではない。いやむしろ、彼の菊座は見た感じ、ぼくが経験した他の年配者たちより、包容力がありそうだった。

(最後だから、記念になる思い出を作るか)
ぼくは思い切って行動に出た。体をずらして双丘を両手で掴み、左右に開いた。
淡紅色に色付いた谷間に、ぷっくりとした菊の紋章が潜んでいた。ぼくは局部にオイルを垂らして、指によるマッサージを始めた。
海原が慌てた。
「あっ、駄目!鉄平くん、そこは駄目だよ――やめて!」
ぼくはやめなかった。もがく年配者の腰を押さえつけ、狭間に指を潜らせて、じんわりと肉の花芯を揉みほぐした。それから指の先をヌッと押し入れた。
「ああっ!」
海原が声を上げ、あとはシーツに顔をうずめて耐えている。
(ここまでくれば、許してくれるかな)
ぼくは指を抽送させながら思った。肉の秘門は想像どおりにやわらかく、もっと太いものでも充分受け入れられそうだった。
もはや迷っている時ではなかった。
ぼくは年配者の腰を引き上げて、四つん這いにすると、最前からうずうずと脈打つ逸物をあてがい、ゆっくりと圧力を加えた。
「ああっ、駄目!鉄平くん、勘弁してくれ!――ああっ、痛い!」
海原がにわかに騒ぎ出して、尻を捩じらせた。
すっかり興奮したぼくは、相手への配慮も失っていた。海原の腰をがっちりと掴み、強引に引き寄せながら挿入行為を続けた。
話しかけると気持ちが挫けそうだったので、終始無言でいた。

内側に押し込まれた菊座が、ふいに屈服して、亀頭部が熱いぬめりに包まれた。
「うわあっ!」
海原が鋭く喘いで、その体が前へずり上がる。
苦悶する年配者に構わず、逃げる腰を押さえつけて、なおも奥へと圧力を加えた。
欲望に打ち震える逸物が、内部の温かい腸壁を押し広げながら、じんわりと入っていく。ついには、年配者の体内に完入した。
刺激に満ちた充足感だった。
ぼくはそのまま動かず、内部の温もりと柔かみを味わった。重厚な大人を征服したという、倒錯した思いが頭の中で渦巻いた。

海原は跪いた姿勢で、両の手のひらを上向きに重ね、その上に額を押し付けていた。奇妙なほど静かだった。
年配者の内部が、侵入物の太さに馴染んだと感じたので、ぼくは動き出した。――最初はやさしく、ゆっくりと。
途中でオイルを補充した。動きが滑らかになってきた。
海原の反応が微妙に変わってきた。苦痛の呻き声から、ため息をつくような声になった。自ら微妙に尻をうねらせている。
(良くなってきたのだろうか?)
年配者の変化に、ぼくは自信を得て、大胆に抜き差し運動を速めた。そして、さほど時間をかけずに到達した。

終わったあと、こんどは海原の太短い性器を、指と口を使って慰めてやった。
年配者の性器は、包皮がきれいに剥けてカリも発達していたが、全体に丸っこい形状をしていた。分厚い肉感的な逸物なのに、何となく親しみを覚えた。
口に含むと、海原があわてて腰を引こうとした。
「ああっ!鉄平くん、そんなこと――」
ぼくはかまわず、時間をかけて丁寧に、年配者の肉根を舐め、吸いつき、抽送した。
突然の行為に驚いていた海原も、すぐに気持ちよさそうに喘ぎ声をあげだした。それでも彼が男の精を吐き出すまでに、30分ほどの時間を要した。

いよいよアパートから引越しをする日が近づいた。
その前の晩、ぼくは大家の平田と、締めくくりの交わりをもった。
風呂上がりの大家は、ガウン姿でぼくの部屋にやって来た。夫人には、ぼくと囲碁を打つと言い訳したようだ。
ぼくたちは抱き合う前に、万感の思いをこめて見つめ合った。4年間のさまざまなシーンが蘇ってくる。いつもは軽口を利く大家が、この夜は無口だった。
気持ちが昂ると、ごく自然に抱き合った。ぼくは、腕の中のやわらかい体を愛撫しながら、老人のつややかな唇から耳たぶへと口を這わせた。
やがて、大家を裸に剥いて、抱き上げると、ベッドに運んだ。
裸の老人は、小さなサンタクロースのように、白くふっくらとしていた。つきたてのお鏡餅のような白い腹が、ゆるやかに起伏して、半ば閉じたまぶたの隙間から、色素の薄い潤んだ瞳が、ぼくを愛おしそうに見上げていた。

始まりはゆっくりと穏やかだった。
大家の肌は、ビロードの感触のように滑らかで、指先が埋もれるほど柔らかい。老人の感じやすい部分を探って愛撫を続けた。背中の溝を伝い下り、腰の窪みでたゆたい、尻の盛り上がりを強く揉みしだいた。
しばらくして、69で向かい合い、お互いの肉体を記憶にとどめるように、じっくりと観察した。
ぼくのほうからは、でっぷりとふくれた白い腹、その下の灰色の恥丘、薄皮の先端から頭をのぞかせる丸っこい性器が目にはいった。
大家がぼくの股間に顔をうずめ、逸物が湿った温かみに包まれた。
ぼくも目の前の、老いた逸物に首を伸ばした。
唇で挟んで包皮を押し下げ、丸っこい先端を含んだ。非常になめらかで、柔らかい舌触りだった。舌でなぶり、ツルンと呑み込む。それは口中で膨らんできたが、舌で刺激を与えても、あまり硬くはならない。

いったん体を離すと、今度は老人の太腿を上に押しあげて、おむつを取り替える要領で、横に張りつめた白い尻を見た。
露わになった老人の秘部――薄紅色に色づく豊満な谷間、とぼけた表情をした菊門――これまで数え切れぬほど押し入れたその部分は、大きくすり鉢状に窪んで、その中心部に菊の紋章が弛んで口を開きかけている。
谷間に顔を埋めた。なつかしいような親密な匂いが鼻を突く。皺のひとつひとつを押し開くように嘗めると、大家が喜悦の喘ぎ声を上げ、太った腰をうねらせた。

やがて大家がうつ伏せになって、尻を高く掲げた。
ぼくは老人の豊満な臀部を抱え込むと、背後から浸透した。
老若ふたつの体がひとつになって、ゆっくりと波打ち、じょじょに動きが速くなる。
最後だという思いが、いつも以上にふたりを熱くする。
ぼくたちは、激しく奪い、与えながら、遠慮のない狂乱の世界へと埋没していった。
やがてめくるめく歓喜の瞬間が訪れた。
ふたりは同時に昇り詰め、そして安息の暗闇に沈み込んでいった。

――◇――

ぼくは新幹線の中で、車窓を過ぎ去る外の景色を眺めていた。入社式の前に、九州にいる母に会っておこうとしたのだ。
ぼくの脳裏では、今までに情を交わした年配の男性たちの顔が、浮かんでは消えていた。4年間住み慣れた上野から遠ざかるにつれ、諸々の記憶が薄れ、過去の関係から決別していく思いがした。それに代わって、新しい生活にたいする期待と不安が湧いてきた。

「よかったらこのお茶を飲みませんか?」
穏やかな声がした。
窓から振り向くと、向かいの席にいる小柄なお爺さんが、ペットボトルにはいったお茶をさしだしていた。
ぼくは有り難くいただいた。
「旅行ですか?」老人が訊いた。
「ええ。就職前にちょっと」
「ああ、学校を卒業されたのですね。里帰りですか?」
「ええ、母がいますから」
「そうですか――親孝行ですね」
老人はおっとりと微笑んだ。小柄だがほどよく肉の付いた体つき。老いた天使のように無邪気で穏和な顔立ち――。老人には、地味だが清廉な雰囲気が身についていた。
そのあと、ゆったりとした会話が続いた。
もっぱら老人が話しかけ、それにぼくが受け答えする。
京都駅が近づいてきたとき、老人は下りる支度を始めた。それから微笑みながら、片手を前に出した。
「おかげさまで楽しいひとときが過ごせました。またいつか、あなたにお会いできるかも知れませんね」
握手を求める老人の手は、小さくて手入れが行き届いていた。
ぼくはふと想像した――その小さな手が、ぼくのズボンにもぐり込んで、逸物をまさぐる光景を。
「ええ、またいつかお会いしましょう――」
ぼくはお爺さんの手を握ると、にっこりと微笑みかけた。ジジ殺しの魅力的な笑顔で。

                              (豊潤の門へと続く)
[17/12/16 06:46 神亀]
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