■ ウィタ・セクスアリス(胎動の門) - 第4章 小さな色事師
第4章 小さな色事師
淡路島から戻って以来、ぼくは大家を意識しだした。大家は数学教師の北田だけでなく、島に住む三原にも体を許しているのだ。だったらぼくだって、性の捌け口として大家の尻を使っても良いのではないか。ぼくはそんなことを考え始めていた。
そんな時、同じアパートに住む年輩の男性と親しくなった。
アパートは2階と3階に2戸ずつの計4戸。ぼくは大家と縁続きということで、半額の賃料にしてもらっているが、本来の家賃は高かった。そのため、ほかの借家人は、金に余裕のある年配者ばかりだった。
そのうちのひとり、同じ2階に住む朝倉は、50歳を少し超えた中年男で、ある地銀の支店長をしていた。彼は家族を地方都市に残し、単身赴任で生活していた。
ぼくがその朝倉と顔を合わせるのは、アパートではなく、ぼくがアルバイトをしている近くのスナックのほうが多かった。
朝倉は、ほとんど毎晩のように、このスナックにやって来た。
この50男は、骨格の細い小柄な体つきをしていた。白髪混じりの短めの髪を、きちんと七三に分けて、小造りの目鼻立ちの顔は、いかにも銀行マンらしく、几帳面と育ちの良さが滲み出ていた。
しかし見かけに反して、オトコのお道具が立派だということを、ぼくは知っていた。銭湯で何度か、裸の彼を見かけたことがあったからだ。数学教師の北田の性器とは違う形状だが、北田とひけをとらないほど大きなものだった。
特に亀頭部がよく発達していた。その渋茶色にふすぼけた逸物を、腹だけがぷっくりと膨らんだ、生白く貧弱な体つきの中年男がぶら下げて、その顔にはなんの奢りもない。
ぼくは朝倉と軽い冗談を言える仲になっていた。それは多分にスナックでの、アルコールの入ったつき合いからだ。
この一見、生真面目そうな銀行マンは、相当の好色家だった。
彼は酒でうっすらと赤らんだ顔に、中年男の甘いムードを滲ませて、「ぼくは弱い男なんだ、年寄りのチョンガーで――」などと、店の女にささやきかける。女の母性本能をくすぐる、彼一流の口説きだった。
それがまた効き目があった。銀行の支店長という身元のしっかりした年配チョンガーに、女は一も二もなくコロリとまいってしまう。
ある晩、ぼくはカウンターの中でグラスを洗いながら、最近入れ替わったアルバイトの女子大生と軽口をたたきあっていた。
女は二十歳前の、まだ顔にあどけなさの残る娘だった。色白小柄でむっちりと肉づきがよく、そして脳天気に明るかった。セックスの話もあっけらかんとしていた。この若い女は、性に対する古くさい道徳心など、微塵も持ち合わせていないようだ。
女は小さな薬瓶からピルを一粒取り出すと、ぼくに見せ、そして口に含んだ。
「わたし、ゴムを被せてやるのって嫌い。だってナマのつき合いができないんだもん」
そう言って、女はケラケラと笑う。
そのとき横から、甘ったるい男の声が聞こえてきた。
「きみのようなピチピチギャルは、熟れたバナナはきらいなんだろうな」
朝倉だった。彼の顔は、すでにアルコールがはいって、道楽人らしい風貌に切り替わっていた。その横には中華料理店の主人、韮塚が、生真面目な表情で控えている。気が合うのか、朝倉と韮塚は一緒に飲むことが多かった。
「あら、わたし、熟れたバナナって大好きよ。だって甘いんだもん」
女があっけらかんと言った。
朝倉はカウンターの前の椅子に腰掛けると、したたかな中年の遊び人に変貌して、若い女を口説きはじめた。
店が閉まると、若い女はぼくたちについてきた。朝倉は、女に3万円の金を渡していた。韮塚は帰ると言ったが、朝倉が強引に引きとめた。
皆は朝倉のあとについて、彼の住まいに行った。
部屋の中は、渋い好みのインテリアで統一されていた。寝室には大きなベッドが置かれている。ふたつあるスタンドが、薄暗い室内にやわらかい光をなげかけ、秘密めいた雰囲気を醸し出していた。
「誰からやるの」
女はさっさと服を脱ぎながら言った。
ぼくと韮塚が尻込みしているうちに、朝倉が一番乗りを宣言した。
女は恥ずかしがるそぶりも見せず、素っ裸でベッドの上に寝そべった。豊満な胸とたくましい太腿、白い肢体のなかで、黒々とした陰毛の陰りがひときわ目を引いた。
朝倉はパンツ一枚になると、ベッドの上にあがり込み、女の体を愛撫しだした。
さすがに手慣れていた。女の肩から胸、腹から背中へと愛撫をつづけていく。
その手の動きは、熟練の技を見ているようだった。あくまで優しく、柔らかいタッチで女の肌を圧し、撫で、もみほぐす。その間、唇と舌を使って、乳首をねちっこく刺激する。
女の息づかいが荒くなり、半開きの口から甘いあえぎ声が洩れだした。朝倉が女の膝を立て、両腿を大きく左右に押し開いて、ぼくたちに見せた。
ぼくたちは顔を近づけて、ソレを見た。みずみずしいピンク色に輝いて、若々しい弾力を感じさせた。
朝倉はじかに触れずに、その周辺部に指を這わせた。女はすっかり濡れていた。彼は先を急がず、ゆっくりと、そこのぬくもりと、潤いを楽しみながら、柔らかな縁にそって指を動かした。
指が侵入すると、女が息を大きく吸い込み、官能のうねりに、思わず体を上にずらせた。器用な指が弾力のある縁を越え、小道の奥へ突入すると、あえぎだした。
「ああっ、お願い!はやく――」
女がじれったそうに腰をくねらせた。演技ではなく、ほんとうに感じているようだ。
「お願いって、どうするんだね」
指の先で太腿の内側を刺激しながら、朝倉が意地悪く聞いた。
「入れて――はやく」
女がささやいた。
「はっきり言ってごらん。小父さんのチンポをはめてって」
「小父さんの――チンポをはめて――はやく」
朝倉は、指の先で花芯からひと滴、すくいとると、指を擦りあわせた。それからおもむろに、自分の腰からパンツをずり下ろした。
銭湯で見かけたときよりも、はるかに禍々しい形状をした逸物が飛び出した。
頭部は包皮が完全にめくれ、エラがふてぶてしく張り詰めている。そこからグッと弓なりに反った赤茶色の陰茎は、太い血管が縦横にのたくって、見ていてどきどきするような代物だった。
料理店主の韮塚が、目も口も丸く開いて、朝倉の股間を見つめている。
それにしても奇妙だったのは、朝倉の股間が、ツルツルテンのノッペラボウだったのだ。たしか銭湯でみかけたときは、薄い茂みがあったはずだが――。
その疑問に答えるように、朝倉はちょっと照れくさそうに言った。
「ゆうべ剃ったんだ。夏場は涼しいし、やるとき毛擦れしないからね」
朝倉はゆったりとした動作で、女の秘所に図太い肉棒をあてがい、思いを込めてググッとめり込ませた。途端、女が顎をのけぞらせて、悩ましい喘ぎ声をあげた。
朝倉は浅く入れたまま、体を浮かせて言った。
「あとは、きみが入れてくれ」
待ちきれずに、女の指が男の股間に伸び、脈打つ茎を掴んだ。
朝倉は握った女の指をすべらせて、ゆっくりと切り進んだ。
女が締めつけられるようなあえぎ声を上げた。
朝倉はすっかり入り込むと、おもむろに腰を使いだした。
最初は窮屈そうだった。侵入物が太過ぎたのだ。それでも女が潤ってきたのか、動きが滑らかになってきて、ズブリ、ズブリ、と抜き差ししだした。
女が善がり声をあげだした。
全長を使って、深く大きくえぐったかと思うと、浅く素早いジャブ。幼児のような小さく丸っこい尻が、女の上で機敏に上下し、回転した。
年配者のか細い体の下で、女の体がしなやかにくねり、精妙に震え、貪婪に閃いた。
「ああーっ!ああーっ!」
したたかな腰のうねりに、女は半狂乱になっていった。顎をのけぞらせ、開けた口から絶え間なく善がり声が漏れ出た。切れ切れの吐息に、しゃがれたうめき声がからんだ。
ズボズボ、ベチャベチャ、濡れた卑猥な物音が続く。
女は顔を左右にゆすらせ、朝倉の細い腰に脚をからませていた。泣いているような善がり声が、今や悲鳴のように切迫した調子に変わっていた。
ぼくは息を潜め、固唾を呑んで見守った。
朝倉は自分の体の下で、うねり、震え、痙攣する、女の反応を楽しんでいるようだ。その腰の動きには余裕があった。まるで逃げ場を失ったネズミをいたぶるネコのように、ねちっこく、意地悪く、最後の一瞬を引き延ばしていた。
「そろそろいくよ。中に出してもいいかい?」
朝倉が腰をうねらせながら、女に聞いた。
女が必死になってうなずく。
朝倉は女の脚を抱え込み、遠慮会釈なく、抜き差ししだした。その動きはまるで女を折檻しているようだった。
淫靡に濡れ光る太い肉矢が、湿った音をともなって容赦なく打ち込まれた。
女がひときわ甲高い呻き声をあげ、その体が震え出した。それに合わせ、朝倉がググっとひと突き入れた。
その途端、小さく丸っこい尻が、ピクンと痙攣するのが分かった。
朝倉は、思い入れたっぷりに女の中にとどまって、気息が整うのを待った。それからゆっくりと離れた。
抜け出るとき、湿田から足を抜きとるような卑猥な音がした。
次は韮塚の番だった。彼は40代半ばの男だが、ぽってりと下腹が膨らんでいた。
彼を見ていると、いつもぼくは、圧縮機にかけられた男を連想する。背が低くでっぷりと太っていて、たっぷりと肉のついた臀部は大きく横に張りつめている。
最初のうち、韮塚は気後れして、ベッドに上がろうとしなかった。それでも朝倉に急きたてられて、気恥ずかしそうにパンツを脱いだ。
逸物は体つき同様、寸詰まりで、生白く、おまけに包茎だった。彼の大きさは、朝倉に比べると子供と大人ほどの違いがあった。
韮塚は指先で皮を押し下げると、完全に固くならないまま、しゃにむに女の中に押し込んだ。そのまませっかちにぐい押しを始めた。女のようにむっちりとした色白の尻が、ゴム風船のように膨らみ、たわんだ。
そのとき驚いたことに、朝倉が韮塚の尻の狭間に指を這わせた。細い指がねちっこく狭間を行き来し、菊紋を丸くえどる。
最初はくすぐったそうにしていた韮塚が、いつしか気持ちよさそうに、尻をうねらせだした。不意に彼はウッと呻いた。どうやら朝倉が、指を秘肛に入れたようだ。
韮塚の動きが力強くなった。肛門に指を突っ込まれて興奮しているのだ。そのうち顎をのけ反らせて、白い体がピクリと動いた。あっけないほど早い、到達だった。
最後はぼくがベッドに上がった。パンツを脱ぐと、性器がばね仕掛けのように弾んだ。それもそのはず、刺激的な光景を見続けて、痛いほど勃起していたからだ。
「すごい――」
韮塚が、ため息まじりにつぶやいた。
ついで朝倉の興奮した声が聞こえた。
「こんなに立派なお道具を見るのは初めてだ。それに――若いだけに元気がいい」
女もびっくりしたように、ぼくの下腹部を見ている。
しかしぼくは、女の体に入れる気がしなかった。ふたりの男のあとでは、いかにも不潔に思えたからだ。そこで女の手と口を使わせた。
女は小さな指と口を総動員して、奉仕してくれた。
ぼくは、さほど感動しないクライマックスを向かえた。ふたりの男に見られていることもあったが、待たされて気持ちのピークを通り過ぎていたからだ。