■ 慕情 第三部(新たな道のり) - (三)甘美な罠
(三)甘美な罠
「ああ――」
俊和は下腹部を剥き出しにして、ベッドの縁に突っ立っていた。藤森は彼の足元に膝まづき、そそり立つ男根を愛撫している。
「すごい――こんなに風格のあるチンポは初めてです。大きさも形も色艶も――すべて最高です」
藤森は、うっとりとして頬擦りし、匂いを嗅ぎ、そして口に含んだ。器用な舌が、くびれをまさぐり、尿道の膨らみを舐め、はりつめた先端を吸う。同性の強みを発揮して、俊和の欲情をぐんぐん押し上げていく。
藤森はますます行為に熱中して、唾液にまみれた男根に吸いつき、呑み込み、ピストン運動をする。
濡れた濃密な音がした。
「ああっ――いきそうです」
俊和は、藤森の頭を押さえて喘いだ。
濡れた口がすっと退いた。
藤森は立ち上がると、唇を合わせてきた。熱情が高まると舌と舌を絡ませた。これで俊和は、間接的に自分の性器を味わったことになる。
しばらくして藤森は、服を脱がしてくれと言う。どうやら、そうしてもらうことで、興奮するらしい。
俊和は、藤森の体を愛撫しながら、ゆっくりとパジャマを脱がしだした。陽に当たったことがないように白く、なめらかな肌があらわになった。形よくふくらんだ腹が、やわらかく起伏している。
フンドシを外して仰天した。なんと恥丘には、陰毛の一本も無い。スッポンポンだった。白い肌から、包茎の生白い性器が、ぴょこんと突き出している。
「いつも剃っています。すっきりして気持ちいいですよ。それにセックスのときも、スムーズで具合がいい」
藤森が言った。サウナで前を隠していた理由が、これでわかった。
「でも奥さまは――」
俊和は言葉をのみこんだ。あとをひきとって、藤森が言った。
「女房とはこの十年来、夜の生活はありません。インポテンツになったと言ってね」
藤森は、いたずらっぽく微笑んだ。「だから、下を剃ってるなんて、女房にはわかりません。それよりも、そろそろあなたの大きなお道具を入れて下さい。できるだけ乱暴に――あなたに犯されるのが夢でした」
藤森はベッドに上体をあずけると、足を開き、尻をうしろに突き出した。
ぽっちゃりとした豊満な双丘、さくら色に染まった谷間、その中心部に皺の寄り集まった蕾が見えた。とぼけた表情をして、やわらかく窪んでいる。太腿のあいだでは、淡紅色の袋が手持ち無沙汰にぶら下がっていた。
これまで、何人の男たちを受け入れてきたのだろう――俊和は、やわらかく口を閉ざした菊門を見ながら想像した。
それから、藤森が用意したオイルの容器を手に取った。開かれた谷間にオイルを垂らすと、指先でじっくりと塗りつけた。
藤森が気持ちよさそうに尻をうねらせる。
俊和は藤森の背後から覆い被さって、下腹部を押しつけた。膨れ上がった陰茎がオイルにまみれ、柔らかい狭間にそって滑った。
「ああ――いい気持ちです」
藤森がうめくように言った。
俊和は、しばらく開かれた谷間の柔らか味を楽しんだ。張りつめた亀頭が、菊門をくすぐり、蟻の門渡りを滑り、前方にぶら下がる陰嚢を押し上げる。オイルにまみれた男根は、根元からグンと隆起してきた。
すっかり準備が整うと、怒張した先端部を、柔らかい開口部に当てがった。極度の興奮に、心臓が早鐘を打っていた。彼は、握った分身をめりこませようと、力を加えた。
膨れ上がった先端部が、やわらかい開口部を押し広げながら、豊満な狭間に食い込んでいく。しかし、なかなか内部には入らなかった。真っ赤に染まった亀頭部が、ズルッと滑って上に押しやられる。
俊和は焦った。にじみ出る先走りでドロドロに濡れた先端を、ぐりぐりと回しながら強く押し付けた。藤森がシーツにしがみつきながらも、尻を大きく左右に開いた。
ふいに、先端部がズルリと内部にめりこんだ。
「うわーあっ!」
藤森が悲鳴をあげた。その声に、俊和はあわてて動きを止めた。
すかさず藤森が苦しそうに言った。
「つづけてください。痛いほうが悦びも大きい。さあ、奥まで入れて」
どうやら藤森は、虐められることに悦びを感じるようだ。俊和は、苦しそうにのたうつ藤森にかまわず、硬直した性器をズブブッと沈めていった。
刺激的な挿入感だった。
分厚い肉をむりやりこじ開けながら、突き入れる感覚だった。
完全に入り込むと、厚い腸壁が、全長をビッチリと締め付ける。しかも温かく、吸い込むような感触がある。
俊和は無意識に、伊東老人と比較していた。老人より、はるかに豊潤で締りがいい。
情欲の高まりにあわせて、柔らかい窪みを侵しだした。
「うわーあっ――あーあっ――あーあっ」
藤森は、にぎやかに声を上げ続けた。
俊和は自制心を失いつつあった。豊満な尻が包み込むように下腹部を受止め、生温かい粘膜の管が陽根を締め付ける。
藤森はうしろを犯されながら、ベッドにしがみついて、すすり泣くように喘いでいる。
サディスチックな興奮が募った。俊和は藤森の腰を両手で押さえつけると、折檻するように激しく抜き差しした。
動きは、速く、速く――その頂点で、射精した。気の遠くなるような放出感だった。
俊和は藤森の背後におおいかぶさったまま、ぼう然自失の状態でいた。しばらくして気を取り直すと、背後から引きぬいた。湿田から足を引き抜くような濡れた音がした。
離れた後も、藤森はベッドの上で丸まっていた。俊和に侵略された狭間は、ゆるんでピンク色に染まり、妙に幼く見えた。
房事の興奮が収まると、ふたりは風呂に入った。
俊和は浴槽に背中をあずけて、藤森の体を背後から抱き、やさしく愛撫してやった。その肌は絹のように滑らかで、指の先でとろけるように柔らかい。藤森はうっとりとして、俊和に身を任せている。
俊和は愛撫を加えながら、年配者の体をじっくりと観察した。丸みを帯びた肩から胸、ふっくらとした腹、その下の無毛の恥丘。厚い包皮がめくれて、ピンク色の頭をのぞかせている陰茎――童貞のように無垢で穢れがなかった。
「さっきはすみません。興奮しすぎて、中で出してしまいました」
俊和は相手の体を愛撫しながら、体内に放出したことを謝った。
「とんでもない。妊娠して、あなたの子供を産みたいくらいです」
藤森が甘ったるい声で言った。
風呂から上がった後、ふたりは素っ裸のままベッドの上で抱き合った。まだ射精していない藤森は、かわいらしい性器を勃起させていた。
俊和は年配者の性器を口に含んだ。非常に滑らかで、清潔で、かわいらしかった。
藤森のぽっちゃりとした体が、快感に震えた。
そのかわいらしい肉根が、精を吐き出す瞬間は、不思議に感動的だった。太った体がピクリと痙攣し、丸っこい先端部から、白い粘液がドロリと滲み出る。
すっかりおわったあと、藤森常務が寝物語に話しだした。
「あなたに初めてお会いしたときから、想いを寄せていました。でも、あなたは根っからのノンケでしたから、その想いを胸のうちに仕舞っていたのです。
そして、あなたが奥さんを亡くされたとき、不謹慎ながら、私にもチャンスがきたのではないか、と淡い期待を抱きました。だから新橋の店に連れて行って、あなたの反応を見ていたのです。でもそのときは、望み薄だと感じました。私は何度かあなたにサインを送りましたが、あなたは反応しなかった。
これはもう、あなたがまったくのノンケか、あるいは鈍いのか――失礼、ま、そう思った次第です。
でも、あなたへの想いは募る一方でした。
そして今回の旅行でお会いしたとき、あなたの変化が一目でわかりました。ああ、あなたは男色を経験されたのだと」
「どうして、そのう――常務は、私が経験したってわかるのですか?」
俊和の問いに、藤森は笑って答えた。
「理屈などありません。ただなんとなく、あなたを見て、感じでわかったのです」
翌朝目覚めたとき、俊和は一瞬あわてた。横に藤森が眠っていたからだ。
そこで思い出した。昨夜、藤森と交わったのだ。
藤森はあれほど乱れていたのに、それが嘘のように無邪気な寝顔だった。年配者の温かい体温が、直に伝わってくる。
そのとき、藤森が目を覚ました。すぐ俊和にしがみついて、唇を重ねてきた。片手は下に伸ばして、股間をまさぐる。
ふたりはトイレで放尿した後、ふたたびベッドに戻った。まだ六時、時間はたっぷりとあった。
俊和は新たな欲望を覚えていた。彼は藤森に寄り添ったまま、片腕を相手の膝の下に差し入れ、持ち上げた。そのまま腰をずらし、藤森の温顔を見つめながら、ゆっくりと浸透した。一晩中蒸らされたそこは、溶けたバターのように軟らかく、入ったはずみに濃密な音をたてた。
未明の肌寒さが熱気を帯びてきた。精妙な肉と粘膜の溶け合った柔らか味が、男根を包み込み、動くと蜜に没したようなぬめりを伴った。
俊和はますます奮い立ち、柔らかい粘膜の管を穿ちつづけた。藤森は、母猫に甘える子猫のような善がり声をあげつづけていた。潤んだ熱っぽい目が、俊和に何かを訴えていた。
俊和は激しく腰をうねらせた。
緊張、戦慄、痙攣、そして大いなる安堵――。
二日目の研修は上の空だった。ともすると藤森の柔らかい感触が蘇ってくる。そんな時、二度も精を漏らしたのに、また股間がむずむずしてくる。
そして二日目の夜も、藤森とベッドで親密なひとときを過ごした。
藤森の体は長い年月を経て、極上品のバターでじっくりと練り上げられたような趣があった。肌理の細かい肌は、精妙で艶かさの極致を見ているようだった。
ぽっちゃりとした太腿のつけ根や、横に張った肉付きの良い双丘――そこを押し開くと、ひっそりと息づく菊の紋――年配者の豊満な肉体を抱いていると、無尽蔵の精力が湧き出してくるのを覚えた。
いっぽう藤森は、完全にマゾヒストのウケになりきっていた。俊和が乱暴に振舞えば振舞うほど、快楽の世界にのめり込んだ。そして、一突き一突きに、甘い喘ぎ声を上げ、敏感に反応し、太った体をうねらせて悦びをあらわにした。
研修旅行が終わったとき、さすがの俊和も、鼠頸部にかすかな鈍痛を覚えていた。
藤森と一緒にいる間は、伊東老人のことは頭に浮かばなかった。
もっとも、福岡に来て、老人から一度だけ電話があった。藤森と親密な仲になった翌日だった。そのときばかりはさすがに、老人に対して後ろめたい思いがした。
帰りの飛行機の中で、俊和はぼんやりと考えていた。一体これから自分は、藤森常務や伊東老人と、どう付き合っていったらいいのだろう。同時にふたりの相手をするのは、いかにも不謹慎に思えた。
横の席から藤森が何か言った。そちらを見ると、寝言だと気がついた。藤森の寝顔には、幸せそうな笑みが浮かんでいた。