■ 大逆転(前編) - (八)変態弁護士
(八)変態弁護士
鉄平は大の字になって、ベッドの上に横たわっていた。両手両足は、磔の刑にされたように、ロープでベッドの鉄格子に結わえ付けられている。
堀田弁護士事務所――たしかガラスドアに、そう書かれていた。
彼を拉致した二人の男たち、そして事務所で待っていたのは丸ぽちゃの初老男だった。
鉄平は尋問され、角刈りの男に、頬を二、三発叩かれた。男たちが欲しいのは、ダディのマスターから預かったキーだと分かったが、無いものはどうしょうもない。
そのあと、角刈りの男が電話をするのを聞いて、状況がわかってきた。自分を人質にして、神田の親父にキーを返すよう、プレッシャーをかけているようだ。
彼を拉致した二人の男が立ち去ったあと、鉄平は、なんとなく嫌な予感がしていた。
男たちが先生と呼んでいた丸ぽちゃの男――その初老男が、尋問のあいだ、鉄平のほうをねちっこい目つきで見ていたのだ。生っ白い大福餅のような童顔、無邪気なほどガキっぽかったが、目つきがいやらしかった。
そして、鉄平の予感は的中した。
ドアが開く音。急に室内が明るくなった。丸ぽちゃの男だった。男は短い足で、よちよちとベッドのほうに近づいてきた。
「なにか、やってもらいたいことはないかね?」
男は、大の字になった鉄平の体をねちっこく見ながら、猫撫で声で言った。
「やってもらいたいのは、ただひとつ。ぼくを開放してくれ」
男は目を丸くして、大げさに驚いた表情をした。
「おやおや、それだけはできないよ。そんなことをすれば、わたしがひどい目にあわされる」
「じゃあ、ぼくをひとりにしてくれ」
「冷たいなあ。わたしが嫌いかい?」
男はベッドのはしに腰掛けた。その重みで、ベッドが窪んだ。男は鉄平の腰のあたりを見ながら、微笑んだ。
「無理もないね、こんな状況では」
鉄平は、男から目を反らせた。それでも、自分のほうをじっと見ている視線を感じていた。
男の甘ったるい声が聞こえてきた。
「きみ、童貞かい?」
「そんなこと、関係ない!」
鉄平は叫んだ。
「そうやってむきになるところを見ると、ほんとに童貞なのかなあ」
男が腰をずらす気配に、そっとそちらを見た。男が手を伸ばして、鉄平のズボンの前に手を置いた。
「大きそうだね」
短い指がじんわりと掴み、膨らみを愛撫しだした。
「やめろっ、変態!」
「そうだよ、小父さんは変態なんだ」
男はちっとも悪びれずに、鉄平のズボンの前を開き、すでに勃起しかかっている性器を取り出した。
「すごい!想像通りのでかいおチンチンだ」
男は握り締め、ゆっくりとしごきだした。若い茎が、みるみる固く大きく膨張していく。
「若い人は元気でいいねえ。さあて、お味はどうかな」
男は顔を近づけて、先端をベロリと舐めた。
「いい味だ。病み付きになりそうだな」
ついで器用な舌先が、チロチロと舐めだした。
「ああっ――」
鉄平は喘いだ。すでに国見との付き合いで経験済みだが、それとは違う快感だった。
むずむずとする、じれったいような快感。男はじらすように、先端部をチロチロと舐めるだけだった。
鉄平は、じれったさに、腰を突き出し、もっと奥まで呑み込んでもらおうとした。
「うん、どうしたの?もっと咥えて欲しいかね」
のんびりとした声が聞こえた。ついで、湿った温もりが、先端から茎のほうへと、じんわりと広がった。
(ああ、いい――)
心とは裏腹に、鉄平の体が反応した。若い陰茎が弓なりに反り返って、男の口の中で、ビクンビクンと脈打ちだした。
「素晴らしい。こんなに形の良い、上反りのおチンチンは初めてだ」
男はいったん口を離すと、鉄平のズボンとパンツを引き下げて、本格的に鉄平をもてあそびだした。
口と舌と指を総動員して、鉄平を高みに導き、果てそうになると、すっと退く。しかも陰茎だけでなく、肛門を指でつついたりする。
「かわいらしいお尻をしてるね。それに菊の門も、すごく締りが良さそうだ。小父さんはね、入れられるよりも、入れるほうが好きなんだ」
鉄平は急に気分が悪くなった。入れられるのは勘弁だ。
口による抽送運動が早くなった。鉄平は、早く射精したくて、狂ったように腰を突き出した。
そのとき男が、すっと離れた。
「今度は小父さんを楽しませてくれるかい」
男はいったん離れると、ズボンのベルトをゆるめだした。
それを見て、鉄平はギョッとした。
(やっぱり、このとっちゃん坊や、おれのオカマを掘ろうってのか)
彼はあわてて言った。
「あ、遠慮します。ぼくも入れられるより、入れるほうが好きなんです」
男は、にんまりした。ピンク色の舌が、ぽってりした唇を丸くえどる。まるで、ネズミを前にしたネコだ。
「まあ、そう言わずに。食わず嫌いはだめだよ」
男はアンダーシャツをまくりあげ、ズボンをずりおろした。丸く膨らんだ白い腹――その下から半勃起したモノが突き出ていた。薄い皮でおおわれ、皮がめくれた部分はピンク色に染まり、球根のように丸っこかった。
「きみのかわいらしいお尻の味見をしたいけど、まだ青い蕾だね。充分解きほぐすには、時間がかかりそうだ。まずは、おしゃぶりから始めるかい?」
そこで男は部屋を出て行くと、戻ってきたときには、一辺が20センチほどの四角いプラスチックの箱を持っていた。
「ぼく、これが何だか分かるかい」
箱の中には木屑と枯れ枝があり、よく見ると体長1センチほどの黒い蜘蛛が二匹いた。
「蜘蛛だろ」と鉄平。
「そう、蜘蛛だよ。ただし、普通の蜘蛛とちょっと違うんだなあ」
男は不気味に微笑んだ。「これはね、中南米に生息する蜘蛛でね、マニアの間ではブラックウィドーと呼ばれているんだ。黒い未亡人って意味だよ」
「――」
「中にいる蜘蛛は、二匹ともメスなんだ。なぜって、メスは交尾後に、オスを食い殺す習性があるからだよ」
「――」
「それでね、この蜘蛛、こんなにちっちゃいけど、ものすごい毒を持ってるんだ。なんでもガラガラヘビの15倍の毒なんだって。で、きみが小父さんの機嫌を損ねたら、この蜘蛛をきみのおチンチンの上で遊ばせようと思うんだ」
「――!」
鉄平は息を呑み込んだ。まだ興奮状態だった性器が、一瞬にして萎えてしまった。
男の顔が間近に迫った。
こんな状況下にしては、初老の天使のように無邪気な顔をしている。
「いいかい、歯を立てないで、小父さんを楽しませておくれ。この可愛らしいお口でね」
男は指の先で、鉄平の唇をなぞった。
「小父さんの言ってること、分かったかなあ」
のんびりとした問いかけに、鉄平は必死になってうなずいた。