わたしの好きな俳優の一人に、フランス人のジャン・ギャバンがいる。子供心にも、彼の恰幅の良い体つきと渋い容貌、そして深みのある演技に魅かれたものである。
彼の主演した映画の中でも、特に印象深いのは、『現金(げんなま)に手を出すな』である。老いを迎えた闇世界の男たちを描いたストーリーだが、アメリカのギャング映画とは違った、独特の味わいのある作品である。敵役を演じたリノ・ヴァンチュラは、本作が映画初出演であるが、彼の男っぽい個性的な風貌がジャン・ギャバンに気に入られて、以後、映画界で活躍するようになる。
