少年の頃、ハードボイルドが好きで、レイモンド・チャンドラーやダシール・ハメットの本を読み漁った。
彼らの本に登場する、フィリップ・マーロウやサム・スペードの持つ、独特の男っぽい雰囲気。どんな厳しい状況下でも、平然と軽口を叩く主人公の姿に惚れたものである。
それを映画で演じる、ハンフリー・ボガートの渋い演技。スーツにトレンチコートを羽織って、頭にはソフト帽。くわえタバコで言葉少なに別れを告げる。襟を立てて、立ち去る後ろ姿に滲む――非情と哀愁。
かっこいい!――と、子供心に胸躍らせたものである。
さて、そんな夢見る少年時代から半世紀を経て、ふと自分で書いてみようと思い立った。もちろん、先に述べた作家たちの足元にも及ばないが、そこは素人の怖いもの知らず、何の裏付資料や調査も無しに、気楽に挑戦した。なお時代の背景は、1990年代の前半頃とした。
