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■ 大輔と昌平 - 第九話 北帰行
第九話 北帰行

大輔と老人が乗った寝台特急を見送ったあと、昌平は、胸にポッカリと穴のあいた気分で家路についた。
事情は聞いていたが、見ず知らずの老人を函館まで連れていく大輔の優しさが、かえってうらめしかった。
それに、二人が男の契りを結んだらしいのは明らかだった。老人が大輔の体にしがみついて、その腕をいっときも離さない様子から、容易に察しがついた。
そして老人を見る大輔の目も、いかにも愛おしくてたまらない、というように和んでいる。
老人に嫉妬する前に、かなわない、という気持のほうが強かった。
死んだ祖父に対する大輔の愛着心が強いのは、昌平もよく知っていた。そして今大輔は、老人を実の祖父に置き換えている節がある。よほど雰囲気が似ているのだろう。
(ひょっとしたらダイちゃんは、もう戻ってこないのでは)
不安がよぎった。
その悪い予感は、時が経つにつれて、ますます現実味を帯びてきた。

自宅に帰り着いたとき、家の中はシンと静まりかえっていた。そして妙に広く感じられた。
昌平は無意識に、庭に面した広縁に行った。そこはよく、大輔が庭を見ながらくつろいでいたところだ。軒下に置いた鉢植えのシクラメンが、赤い花を控え目に咲かせている。
しかし今、大輔の姿はない。
急に孤独感を覚えた。十七年間いっしょに暮していて、相方がいるのは当たり前のように感じていた。しかし、大輔がいなくなって、あらためてその存在の大きさが身に沁みた。
昌平は、その場にへなへなと座り込んだ。
(この、どうしょうもないやるせなさ――)
彼は膝を握り締め、肩を震わせた。
しばらくして、部屋の中にしめやかな泣き声が流れだした。

窓の外で走り去る建物の明かりが、刻一刻と暗闇に呑み込まれていく。
寝台特急は、線路のつなぎ目を通過するかすかな振動を刻みながら、北国へと快走していた。
大輔と老人は仲良く並んで、折りたたみベッドの縁に腰かけていた。
奮発してボックスシートを買ったお陰で、部屋の中には二人しかいない。
先ほどから老人は、大輔のズボンの前を開いて、顔を埋めている。その様子は、生きているうちに出来るだけ多く、男の生命を味わっておこうと言わんばかりだ。
湿った温もりが亀頭にまといつき、くびれに沿ってチロチロと這い回る。次いで鈴口から根元にかけて、じんわりと舐めさがる。
大輔はうっとりとしながらも、老人に声をかけた。
「爺ちゃん、そろそろ寝る時間だぞ」
老人は膨れ上がった肉根から口を離して、名残惜しそうに眺めていたが、のろのろと立ち上がって、トイレに行った。
戻ってくると、黙ってズボンとパンツを脱ぎ、ベッドに上がり込んだ。それから毛布を被り、後ろ向きに寝てスペースをあけた。横に寝てくれという意思表示だ。

大輔はトイレに行ったあと、部屋に戻って服を脱ぎ、老人のベッドに上がり込んだ。狭いので、必然的に体を密着させて老人の背後に寄り添った。老人が待ちかねたように、尻を押し付けてきた。
お互いの体温が溶け合って、ほのぼのとした温もりに包まれた。
しばらくして、老人がより強く尻を押し付け、一言「入れてくれ」とつぶやいた。
すでに大輔の股間は、臨戦状態になっていた。彼は老人の肛門と自分の男根に、ラブオイルを塗り込めた。それから、後ろに差し出された尻の狭間にあてがい、慣らすようにこすりつけた。
「爺ちゃん、入れるよ」
大輔が声をかけると、老人が「ああ」とうなずいた。
最初は菊門の抵抗にあった。それでも繰り返し突いていると、肛門括約筋がじんわりと広がって、亀頭を受け入れた。
老人の尻の中にすっぽりと挿入し、背後から老人の体を抱きしめたまま、ゆるやかに腰をうねらせた。膨れ上がった陰茎が、柔らかい腸内を五、六センチ近く滑脱する。
老人がすすり泣くような声をあげだした。
ときおり動きを止めると、列車の走る振動が、結合部に微妙な刺激を与える。

穏やかな愛に包まれて十五分ほど経過したころ、老人がより深い結合を求めて、両ひざを抱え込んだ。
大輔はすこし体を離し、陰茎だけで繋がった。そのまま老人の軟らかい内部をえぐるように、大きく抜き差しした。
老人の泣き声が大きくなった。
大輔は、老人の可愛らしい顔が見たくなって、しっかりと結合したまま、徐々に正常位へ移行した。
肉筒にきっちりと嵌まった陰茎が、内部で捩じれるように軸回転して、それが気持ちいいのか、老人は一段と大きな声をあげた。
正常位になると、老人は体を海老形に曲げられながらも、両膝をぴっちりと脇のほうに引きつけた。
男のすべてを受け入れようとしているようだ。
大輔は、老人の体に覆い被さって、その可愛らしい顔を見ながら、腰をリズミカルに動かした。
深い二重まぶたの下で穏やかに輝く瞳、そこはかとない艶のある口とあご、つややかな色白の頬――。その顔には、仏さまのような気品と色気が、ほんのりとにじみ出ている。
大輔は小刻みに腰をうねらせた。
チュブチュブ、グチュッ――。
濡れた音がつづいた。
老人がさも気持ち良さそうに、顎を反らせて、可愛らしい声を上げた。
そんな老人の仕草を見て、この上ない愛情を覚えた。大きく腰をうねらせながら、貪るように老人の口を吸った。老人が舌を絡ませてきて、音を立てて唾液を吸う。
いつしか大輔は、自制心を解き放って、純粋な愛情だけで老人を可愛がっていた。そのため、昇り詰めるのは早かった。
「爺ちゃん、いきそうだ。中で出していいか」
「おお――出してくれ。きみの精を吐き出せ」
大輔は腰の動きを速めた。
老人が口をいっぱいに開け、絶頂を迎えたような表情をした。
その顔を見ながら、大輔は、奥深くに突き入れ、老人の腰を固定したまま激しく迸らせた。
『接して漏らさず』を実践する大輔にとって、二日連続の射精は珍しいことだった。

――◇――

朝から雨模様だった。
昌平は何をするにも、気力が湧かなかった。まんじりともしない一夜を明かして、目が腫れぼったかった。
大輔のいない家にいても、むなしさが募るだけだった。
彼は傘も持たずに家を出た。どこへ行くとも決めず、当てもなくさまよった。途中で雨が降り始めたが、かまわず歩き続けた。

降りしきる雨の中、立派な体格をした二人の男たちが、キャンピングカーのタイヤ交換をしていた。
彼らは五十歳の節目に、二人きりの旅をすると以前から決めていた。久し振りに女房子供抜きで、大学の野球部時代からつづく旧交を温めるのだ。
「それにしても、ついてないな。初日にタイヤのパンク、おまけに雨まで降りだして」
作業をしながら、浩平がぼやいた。
それに何か言おうとして、圭祐がふと顔を上げた。
「おい、あのお年寄り、どうしたんだろう?」
ひとりの老人が、大きな木の下でずぶ濡れになって立ちつくしている。
「可哀そうに、ずぶ濡れじゃないか。とにかく車の中に入れてやろう。風邪をひいちまうぜ」

三十分後、老人はキャンピングカーの中で、ベッド代わりのマットの上で眠っていた。
その体には毛布が被せられ、天井に張ったロープに、濡れた服や下着が吊るされている。車内はヒーターを入れているので、暑過ぎるほどだった。
老人からは、およその事情を聴いていた。ダイちゃんとかいう、惚れた男が函館に行ってしまったらしい。老人は話す途中で泣き出して、いつの間にか寝入ってしまったのだ。
「おい、どうする?」
老人の寝顔を見ながら、圭祐が聞いた。
「どうするって、この爺さんの服が乾くまで、どうしょうもないだろ」と浩平。
「やれやれ、スケジュールは変更だな」
「ああ、仕方ないな――それにしてもこの爺さん、可愛らしい顔をしている」
「だから男にも、もてるのじゃないか」
二人は、目を閉じた老人の顔を見つめた。
育ちの良さそうな、品のある顔だった。年齢は七十代だろうか。先ほど狭い車内で、老人が濡れた服を脱いだとき、女のように色の白い艶めかしい裸体が、ふたりの脳裏に焼き付いていた。

そのとき、老人が寝がえりを打った。
拍子で毛布がずれて、白い尻が剥き出しになった。しっとりとした艶のある尻だった。まろやかな膨らみと、それを二つに分ける淡い窪み――。
二人は唾をごくりと飲み込んだ。
あの尻を、ダイちゃんとかいう男は、可愛がっていたのか――。
沈黙のなかで、エロチックな気分が湧きあがった。
浩平が咳払いをして、おもむろに言った。
「圭祐、お前、ちょっと席をはずしてくれ」

「うう――すごい」
浩平は呻いた。
老人は四つん這いになって背後から貫かれながら、ゆるやかに腰をうねらせていた。男の肉根を納めた老人の直腸が、とろけるような柔らかさで吸いついてくる。
老人が、うねるように大きく深く、尻を動かした。
「ああっ!いい――」
浩平は思わず声を上げた。かつてなかったほど固くなった陰茎が、老人の体内深くに吸い込まれ、無数の襞が絡みついてくるようだった。
爺さんの肛門が、こんなに具合のいいものだとは知らなかった。慣れ親しんだ女房とは比べ物にならないくらい、刺激的な快感だ。
浩平は気を取り直して、自らも腰をうねらせだした。男根が我慢しきれないように膨らむ。浩平は懸命にこらえた。
まだ終りにはしたくなかった。
彼はぐっと我慢した。それから体位を変えて、正常位で老人の肛門に突き入れた。
陰茎を押し包む直腸の角度が変わって、あらたな快感が生まれてくる。
浩平は息を荒げ、機敏に突いた。可愛らしい善がり声をあげる老人の顔が、彼の興奮を高めた。
老人の中で男根がいっぱいに膨らんだ。浩平の大きな体がびくりと痙攣した。
「うっ!ああっ――」
噴火が始まった。

ようやく雨があがった。
運転席の圭祐は、外側から近づく浩平に気づいた。相棒はズボンのベルトを締めながら、満ち足りた表情をしている。
聞くまでもないが、圭祐はあえて聞いた。
「どうだった?」
「すげえ――女房より具合がいい」
浩平は照れ臭そうに言って、腰を卑猥にくねらせた。それから圭祐と入れ替わって、運転席に着いた。
彼は老人の所に行こうとする相棒に向かって、ひとこと言った。
「これから出発するぞ」
「どうしてだ?」
「爺さんは函館に行きたいんだって。それで北のほうだったらどこでもいい、俺たちが行くところまで乗せてくれってさ」
[17/06/23 05:44 神亀]
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