■ 男色奇譚―男色入門― - (6)陰の秘術
(6)陰の秘術
30分後、彼らは天山のアトリエに来ていた。
銭湯にいた老人の名前は平蔵、71歳。そして中年男は正夫、54歳。
アトリエには布団が敷かれ、全裸の洋平爺が横たわっている。
昌輔は半信半疑だった。まさか現実に、男たちに交合させるとは思っていなかった。そういえば天山の描いた春画の中に、平蔵や正夫に似たモデルがいたのを思い出した。
雨戸で外光が遮られ、行灯の薄明かりに、洋平の白い肢体が浮かび上がっていた。それが、これから始まる淫行を予感させて、妖しい雰囲気を漂わせている。
まず正夫が服を脱いだ。弾力のある丸っこい肉体。とくに、小股の切れ上がったふくよかな尻は、ウケとしても魅力たっぷりの艶やかさがある。
正夫は寄り添うようにして、洋平爺の体を愛撫した。ふっくらとした手が、老人の太腿から膝、柔らかい内側の肌へと這い進む。それから膝裏に手を沿え、左右に押し上げた。
白桃のような双丘の狭間がピンクに色付いている。その中心部の小さな菊の紋章――事前にオイルを塗っているのか、しっとりと濡れ、卑わいな輝きを帯びている。
正夫は顔を近づけた。器用な舌先が膨らみにもぐりこみ、チロチロと舐め、じんわりと押し広げる。
洋平爺が悩ましげに腰をくねらせた。
やがて正夫が、開かれた脚の間で膝立ちになったとき、勃起した逸物が見えた。大きさは人並みだが、先端部は球根のように膨らんでいる。
正夫が自分のモノをにぎりしめ、ゆっくりとしごいた。赤くテラテラと輝く亀頭とピンク色の陰茎体。昌輔は魅せられたように、それを見つめた。
手を離すと、重力に反して自立し、くびれのところで上向きに反り返っている。力強さより、愛嬌を覚える光景だ。
正夫は腰を浮かせ、ゆっくりと結合した。膝の裏側に手を添えて、引き上げながら腰をぐぐっと落としたとき、洋平爺があごをのけぞらせた。
あっ――ああぁ――。
熟年男はひとつにつながったまま、しばらく動かなかった。
「どう――中に入ってるチンポが、分かるかね」
正夫が結合したまま、洋平の耳元でささやいた。
「ほうら、大きくなってきただろう。さあ、想像してごらん。湿った肉のトンネルにもぐりこんで、お前のすべてが欲しいって、キュウキュウ鳴いているチンポだよ」
かすかに開いた洋平の口から、甘いあえぎ声が洩れ出た。イヤイヤするように、その顔が左右にゆれた。
正夫は老人の脚を抱え込むと、深々と結合した。両足を真っ直ぐに伸ばしたまま、ゆるやかに動き出した。相手の股間に下腹部を密着させ、女のように大きな尻が、ゆったりと滑り、回転した。
洋平爺の体が、快感にうねった。
見ている昌輔にも、それが二局攻めだということが分かった。竿と玉袋を使って、内と外から相手を攻めたてるのだ。
しばらくして、正夫は腰を割って、老人の尻にのしかかった。下腹部に力を込めると、でっぷりとした双丘がむくむくと盛り上がる。狭間の皺を集めた菊門が露わになった。
中年男は深々と結合したまま、じっとしていた。
洋平が微かに喘いだ。ついで息遣いが荒くなった。そのうち男の体の下で、明白なよがり声をあげだした。
ああっ!――いいっ――いいいっ!
見ている昌輔は、訳が分からなかった。正夫は動いていないのに、なんで洋平爺は悦ぶのだろう。
「どうだ。さほど大きくなくても、ウケを悦ばせることができる。あれが『陽蠕棒』だ」
横から天山が言った。「正夫の肛門を見るんだ」
昌輔は位置を変えて、男の後ろを見た。でっぷりとした尻、その幅広い谷間にとぼけた表情の菊座が見えた。
そのとき気付いた。菊座がうごめいているのだ。プランクトンを呑みこむ軟体動物の口のように、皺の集合体が盛りあがったり、すぼまったりしている。まるで菊座で、呼吸をしているようだった。
「ああっ!もう――ああぁ――」
洋平爺が太った男の下で、切なそうな喘ぎ声をあげた。
結合部から、微かにくぐもった音が聞こえた。
ヌチャ、ニチャ、ピチュ――。
晶輔は仰天した。なんと男根が独立した生き物のように、老人の尻の中で動き回っているのだ。
「どうして――」
昌輔は信じられなかった。
天山が説明した。
「肛門括約筋の助けを借りて、男根を大きくしたり小さくしたりする。そうすれば、肉根を自在に動かすことができる」
正夫が、ようやく腰をうねらせだした。
「そろそろあげるよ」
脂の乗った大きな尻が膨らんだり、たわんだりした。
でっぷりした腹が老人の肉体を圧し、上下に滑った。
図太い腰回りには無尽の力が漲っているようだった。ほの暗い結合部で濡れて出没するピンク色の陰茎、そこから猫がミルクを舐めるような、ピチャピチャ、クチュクチュと濡れた音が洩れ出る。白濁した微細な泡が、結合部からにじみ出ている。
正夫の息使いが荒くなった。女のように大きな尻が回転し、うねった。開かれた尻の狭間で、ぽってりした皺の集合体が呼吸をし、淡紅色の蜜袋が収縮して強張っている。
動きが速く、速く――。
昌輔が見ている前で、ふいに熟年男の菊門がキュッとすぼまった。
「ひっ!はああっ――」
洋平爺があわれっぽいうめき声をあげた。
つぎは平蔵の番だった。
洋平爺はうつ伏せになって、尻だけを引き上げている。
平蔵は褌を外すと、受け入れ態勢を取る洋平の後ろで膝立ちになった。
肉の落ちた、ひ弱な裸体だった。男の道具は取って付けたように立派だが、生憎、ゴム製の玩具のように、グンニャリとしていた。
(起つのだろうか?)
昌輔はいぶかった。
平蔵は、自分と同じ年頃の、洋平爺の開かれた陰部をじっと見ている。意識を集中しているようだ。
そのとき奇跡が起こった。茶色の肉棒が、俄かに生を得たように、ぐんぐん膨らんで頭をもたげてきた。薄皮がめくれて、醒めた茶色の頭部がむきだしになった。
やがて、老人の持ち物とは思えないほど逞しく、まっすぐ前に突き出した。
「あれが『隆棍棒』だ」
天山がささやいた。「意識を集中して、男根を勃起させる。鍛錬すれば、どんな年寄りでも固くすることができる」
平蔵は、洋平の尻の上にのしかかると、ズブブッと無造作に挿入した。それから、小さな尻をゆったりと動かし出した。
正夫が放出した精液が潤滑油になって、動きは滑らかだった。
絡み合ったむきだしの下腹部が、薄闇に白っぽく浮かび上がって、生々しく揺れ動いた。その抽送運動は、老人とは思えないほど、力強い律動感にあふれていた。
あんぐりと口をあけた肉門を切り開いていく逸物は、卑猥に濡れ光って、まだまだ当分は現役で活躍できそうなほど、力を漲らせていた。
ズブッ、ヌチャ、ブニュ――。
昌輔は固唾をのんで見守った。結合部のあたりから、生臭い熱気をともなって、濡れた音が伝わってくる。
老人の性交は、延々と続くかと思えた。
ふいに平蔵が動きを止めた。
老人の小さな尻がすぼまった。かすかに液体を吸いこむような音が聞こえ、洋平が喘ぎ声を洩らした。
平蔵はしばらく動かなかった。それからゆっくりと引き抜いた。卑猥に濡れ光る肉棒は、壮年男の持ち物のように力を漲らせていた。平蔵はタオルで悠々とぬぐうと、下帯を身に付けた。まだテントを張ったようになっている。
「洋平の後ろに指を入れてごらん」
天山が昌輔に耳打ちした。
(どうして?)
昌輔は疑問に思ったが、天山に言われるままに指を入れてみた。内部は湿っていたが、平蔵の前に、正夫が放出した精液の痕跡がなかった。
「それが『吸精棒』だ。中に溜まった精液を吸引して、自分の力とすることだ」
天山の言葉に、昌輔は驚いて平蔵を見た。
平蔵がにんまりと顔をほころばせた。その顔は前よりも艶が増して、生気に満ち溢れていた。
男色奇譚―男色模様―につづく