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■ 男色奇譚―男色の極み― - (6)活人棒


(6)活人棒

昌輔と修三は、天山に連れられて上野公園に来ていた。
桜の花は七分咲き、淡いピンクが青空に溶け込んで、まさに春爛漫といった風情だ。
天山と肩を並べて歩きながら、昌輔はときおり師の様子を窺うように見ていた。オトコの力を取り戻したとは言え、天山の腰つきには艶めかしい動きが残っている。昌輔はともすれば、師のでっぷりした尻の弾力や、菊座の感触を思い出して、高ぶりを覚えるのだ。
「お師匠さま、もうお体の具合はよろしいのでしょうか」
うずうずした思いで、昌輔は聞いた。
「ああ、お前たちのおかげで、すっかり元気を取り戻せた」
ふたりの背後では、修三がおとなしく付き従っている。今日の修三は和服を着て、その立ち居振る舞いは、ゾクッとくるほど艶やかだった。
天山は歩きながら、昌輔にささやきかけた。
「陰潤腔になってから、ときどき尻が疼く。これからもよろしく頼むぞ」
「いつでもおっしゃってください、お師匠さま」
昌輔は目を輝かせて、即座に答えた。
天山は笑いながら言った。
「おまえのチンポは『活人棒』だ」
「活人棒――ですか」
「ああ、人を幸せにするチンポだ。その逆に、高城のチンポは『破滅棒』つまり人を不幸にするものだ」
「活人棒と破滅棒――」
昌輔は考え込んだ。秘術合戦で勝ったとはいえ、強烈な快感を自分の体に刻み込んだ、高城の感触が忘れられなかった。考え込む彼の耳に、天山の声が聞こえてきた。
「そう、活人棒だ。今日はそのために、おまえを連れてきた」

3人は上野公園に近い民家を訪れた。純和風の木造家屋で、門の表札には栗田一郎と書かれている。年老いた男性が3人を出迎えて、主人の部屋に案内した。
部屋には和服を着た、50代後半の男がいた。大柄だが、どことなく温室培養で育ったような脆弱さがある。
年相応に肉付きのよい顔は、男の甘い色気があった。色白の艶やかな頬と温和そうな目、妙に初っぽい柔らかそうな唇――美食と好色に慣れきった男の顔だ。
男は天山に頭を下げ、値踏みするように昌輔と修三を見た。裕福そうな顔に、人懐っこい笑顔が広がった。
「やあ、いらっしゃい、栗田です。さあ、こちらにお掛けなさい」
勧められるまま、3人はソファーに腰をおろした。
部屋は広かった。中庭に面した腰窓から、穏やかな外光が差し込んでいる。ソファーセットのほかに、大きなダブルベッドと書籍のぎっしりと詰まった本棚、マホガニー製の書類机がある。
先ほどの老人が、コーヒーを載せたお盆を持ってきた。老人が引き下がり、4人は中庭の桜を眺めながら、しばし歓談した。
昌輔は、天山に向かってのんびりと世間話をする男を観察した。家の大きさや風采からすると裕福そうだが、なんの仕事をやっているのだろう?
ふと、コーヒーカップを持つ栗田の手を見た。大きな体つきにしてはこぢんまりとして、まるで女のように白く、ふっくらとしていた。肉体労働とは縁のない手だ。

「その人形をどう思いますか?」
ふいに、栗田が昌輔に話しかけた。
最前から気付いていたが、サイドテーブルの上に彩色した粘土作りの人形があった。
年老いた父親と息子の設定だろうか、壮年男が背後から老人の肩を揉んでいる姿だ。精巧な作りで、気持ちよさそうに目を細めた、老人の顔の表情がすばらしかった。
「いかにも微笑ましい人形ですね。それに見事な出来栄えだ」
昌輔は、素直に感想を述べた。
うれしそうに栗田が言った。
「じゃあ手にとって、下からのぞいてごらん」
昌輔は慎重な手つきで人形を手に取り、上に掲げて、人形の下部をのぞき見た。エッと思った。なんと剥き出しの下腹部が目に入った。図太い男根が老人の秘部に食いこんでいる。しかも老人自身も、筋張った巨根を弓なりに隆起させている。
天山は笑いを浮かべていた。すでに見たことがあるのだろう。
「どうです、目の保養になったでしょう?」
栗田は立ちあがった。「そろそろ始めますか?」
 
家主が服を脱いだ。それに合わせたように修三が立ちあがって、和服を脱ぎだした。
昌輔は驚いた。
(まさか昼日中から、交わろうっていうのか?)
栗田は全裸になると、ベッドにあがり、仰向けに寝そべった。
うっすらと脂肪に覆われた大きな体は、どことなくウブであどけない感じがした。肌はみずみずしいふくよかさを見せて、沁みひとつない。
昌輔は、男の裸をじっくりと観察した。
ぽってりと丸みをおびた腹、贅肉のつきかけた腰から尻にかけての柔らかい曲線、薄い陰毛に覆われた恥丘の膨らみ。逸物は生白く、大きかったが、先端部はすっぽりと薄皮で覆われている。
天山が昌輔の耳元でささやいた。
「どうだ、きれいな体をしているだろう?タチよりもウケのほうが似合っている」
昌輔は気になっていることを聞いた。
「何をやっている人ですか?それに、先生とはどんな関係です?」
「ある会社の重役さんだ。性風俗の書画骨董品の収集家でもある。わしのお得意さんだ。それに絵のモデルも、やってもらったことがある」

ベッドでは修三が栗田の股間にうずくまり、手と口を使って男根を慰めていた。色白のぬめるような肌が、窓から差し込む陽光を受けて、しっとりと輝いている。
修三も大きな体をしていたので、ふくよかなふたつの肢体が絡む姿は、浮世絵を見ているような美しさがあった。
栗田の逸物は容積を増したが、なかなか固くならなかった。それでも修三の器用な舌が、蜜袋から菊門にかけてねっとりと舐めていると、ようやく自立できるくらいに固くなってきた。しかし手を放すと、すぐ頭を垂れてしまう。
修三が竿を握ったまま、栗田の腰にまたがり、苦労して股間に納めた。それから栗田のふくよかな体のうえで、ゆっくりと尻をうねらせだした。尻の動きにつれ、くねくねと動く肉棒が見え隠れした。大きいが、柔らかくて、力感に欠けていた。
「栗田さんの悩みは勃起不全だ。修三の蘇陽根をもってしても、あれじゃ、オトコの力を蘇らせないな」
天山が小声で言い、ベッドのふたりに次の体位を指示した。

ふたりはいったん離れると、修三が仰向けに寝て両足を抱え込み、ベッドの縁から尻を突き出した。ヌメッとした菊門があらわに見えた。
栗田がベッドの縁に立って、柔らかくなった男根を自らしごきだした。手にした逸物がどうにか硬度を取り戻すと、開口部にあてがい、苦労して挿入した。
それから慎重に抜き差ししだした。
大きく小さく、早くゆっくり、力強く優しく――栗田の腰の動きは床上手に見えたが、どうも力強さがない。受けている修三の顔も、ちっとも燃えていないようだ。
天山が昌輔に言った。
「さあ、おまえの出番だ。栗田さんの後ろに、おまえの活人棒を入れてやりなさい」
昌輔は呆気にとられて師の顔を見た。天山がポケットから小さなオイル瓶を取り出して、昌輔の手に押しつけた。
「なにをぼんやりしている。さあ、栗田さんを元気にしてやりなさい」
栗田は動きをとめて待ちうけていた。きめの細やかな大きな尻を見て、昌輔の股間がうずうずと騒ぎだした。
魅力的な眺めだった。横に開かれた白い双丘、合わせ目のほの暗い窪み。昌輔の思いは、その豊満な膨らみを割って突き入れたときの悦びに、早くも飛んでいた。

昌輔は裸になって、準備作業にとりかかった。豊満な白い尻、そのふくらみを左右に押し開くと、初心な表情のしわの集合体が目の前に晒された。薄紅色のきれいな紋章を思わせた。オイルを双丘のつけ根にたっぷりと垂らし、指を使って塗り込めだした。
栗田がくすぐったそうに尻をくねらせた。小さなふくらみに親指を潜り込ませると、栗田が小さく声をあげた。
内部は滑らかで、吸いつくような触感だった。
もぐり込ませた親指で、内部の粘膜に刺激を与えながら、残された指で谷間のやわらかい皮膚をまさぐった。
栗田が気持ち良さそうに尻をうねらせ、あえぎ声をあげた。
昌輔は、屹立した自分の陽物にもオイルをたっぷりと塗り付けると、待ちうける菊門にあてがった。それから挿入を開始した。
栗田がくぐもったうめき声をあげ、腰を引いた。
その腰をつかんで固定し、強引にズグズグと突き入れた。
挿入は滑らかだった。
栗田がすでにウケを、何度も経験しているのは明らかだ。
内部は温かく、肉の厚い豊潤な腸壁を感じた。これまで経験してきた老人たちとは違う、濃厚な感触だった。
(男の菊門は、人によってこんなにも違うものなのか)昌輔は感心した。

根元までどっぷりと埋め込むと、体内の鼓動や熱いうねりが、腸壁を通して伝わってくる。男の直腸はまるであつらえたように、侵入したイチモツを寸分の隙間なく覆いつくし、締めつけていた。じっとしているだけでも、素晴らしい感触だった。
昌輔はつのる激情をこらえ、ゆっくりと抜き差ししだした。
とたんに天山の声が聞えた。
「勝手に動くんじゃない!いいか、栗田さんの動きに合わせるんだ。一体になって、栗田さんの悦びを感じ取れ。陽蠕棒を使うんだ」

昌輔は、相手の体に密着したまま、動きをとめて待った。
栗田がゆっくりと動き出した。
その動きに合わせ、昌輔も動き出した。栗田の陽根が陰部に出入する濡れた音は、先ほどよりも活気づいていた。それに、修三のよがり声も聞えだした。
昌輔は、相手の直腸に挿入した肉根を通じて、栗田の充実した力を感じ取った。
いまや栗田の太い腰は、精力で満ち溢れていた。昌輔は、陰茎を自由自在に変化させる陽蠕棒を使いながら、栗田と一体となって、男の悦びを感じていた。
濡れた肉襞を滑脱する男根の震え――泡立つ血の熱気――ざわめく下腹部の震え。
修三爺の喘ぎ声が大きく、切羽詰ってきた。
栗田の腰のうねりは、ひとつひとつが的確に、修三を高みに昇り詰めさせていた。栗田の全身はしっとりと汗に濡れていた。
息を荒げ、力強く腰をうねらせながら、栗田はうめき声をあげた。
「ううっ――いいっ――そろそろいくよ」
栗田の白い体が震え、のたうちが始まった。それに修三の絶頂を迎える声がつづいた。
そのとき、なんの前触れもなく、昌輔をくわえこんだ栗田の括約筋が、きゅっと引き締まった。
思わぬ不意討ちに、昌輔はたまらず昇りつめた。

「久しぶりに感動的な交わりを見た。これこそ活人棒の威力だ。まずは合格点だ」
栗田の家から帰る道すがら、天山が満足そうに言った。「栗田さんも久し振りに、和合の悦びを堪能したことだろう」
師の話を聞きながら、昌輔は複雑な心境だった。確かに栗田は好みのタイプだったが、会っていきなり性行為をするのは、いかにも愛の無い、性の商売のように思えた。この先、何人の男たちの相手にさせられるのだろう?
それに気づいて、天山が声をかけた。
「どうした、昌輔。なにやら浮かぬ顔をしているな」
「あ、いえ――これからも栗田さんのような、初めての方のお相手をしなければならないのでしょうか――」
後のほうは、尻すぼみになった。
昌輔の言わんとするところを察知して、天山が言った。
「お前の考えていることはよく分かっている。いいか、栗田さんは特別の人だ。だから安心しろ。お前の知らない男を相手にさせるのは、今回限りだ。――たぶん」
言ったあと、天山は豪快に笑った。
その肉付きの良い肩に、桜の花びらが数枚、ひらひらと落ちてきた。
今は春――万物が命の胎動をする季節である。
                                      完
[17/04/17 06:14 閑名三爺]
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