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■ 男色奇譚―男色の極み― - (5)秘術合戦
(5)秘術合戦

翌朝、昌輔は漁村を出て、修三の家に向かった。
(すでにお師匠さまたちは、東京に向けて旅立たれたあとだろうな)
そう思っても、彼の足は自然に速くなる。ひょっとして師匠たちに会えるのでは、という淡い期待があったからだ。
修三の家に到着した。鍵は持っていないので、さて、どこから入ろうかと思案した。
試しに格子戸を引いてみると、驚いたことに難なく開いた。
最初に目に入ったのは、囲炉裏のわきに転がっている白い物体だった。
目の焦点が合って、昌輔は仰天した。
――お師匠さま!
なんと天山が素っ裸で、板の間に横たわっていた。まるで胎児のように、手足を縮めた格好で――。
昌輔は靴を脱ぐのももどかしく、天山のもとに駆け寄った。
「お師匠さま、しっかりして」
「あう――うう――」
目がうつろだった。天山が正気を失っているのは明らかだ。口の端からよだれを垂らし、何かを求めるように、でっぷりとした尻を微妙にうねらせている。
その症状は覚えがあった。昌輔自身がこんな状態に陥ったことがある。
彼はつぶやいた。「高城――」

くっくっくっ――。低い笑い声が聞こえてきた。
昌輔は声のした方を見た。
燭台の淡い光が、奥の部屋でゆらめいていた。明かりの中に、量感に満ちた白い後姿が浮かび上がった。なで肩、豊満な尻――修三の裸体だ。むっちりと横に開いた尻の狭間に、筋張った男根が食い込んでいた。
目が慣れてくると、壁柱に背中をあずけ、両足を前に投げ出した高城桂介の姿があった。彼の腰の上には、尻を貫かれた修三がまたがっている。
その体位を見て、瞬時に悟った。
蘇陽根――男の力を蘇らせる秘術だ。高城は修三の体を使って、力を蓄えているのだ。
「お前は師匠のところにいた男だな」
修三の肩越しに、高城が声をかけた。切れ長の目が、昌輔の全身を舐めるように見ている。
「ほほう、おれがかけた忘陽根から抜け出したようだな。この修三の体を使ったか」
高城は眼力だけで、昌輔がオトコの力を取り戻したのを見抜いたようだ。彼はいとも無造作に、修三の大きな体をわきに転がした。離れるとき、湿った卑猥な音がした。

高城は立ち上がって、昌輔のほうに歩いてきた。
背の高い筋肉の発達した肉体は、しっとりと汗で濡れていた。股間では禍々しい肉の棒が、りゅうと前に突き出ている。マムシのように張り詰めた亀頭、筋肉が捩れたような陰茎体、紫がかった褐色の全長がオイルを塗ったように濡れ光っている。
昌輔は畏怖の念をもって、高城を見つめていた。以前、浅草で彼に抱かれたときの悦楽が、まざまざとよみがえる。
高城は昌輔の前に突っ立つと、見下ろしながら冷然と言い放った。
「もう一度、抱いてやる。忘陽根だけじゃ面白くないな。よし、お前を妖婦転位させてやる」
切れ長の目が、異様な光を帯び始めた。

昌輔は抵抗する意思を失っていた。ただ、なす術もなく裸に剥かれ、布団の上に転がされ、高城の愛撫を受けていた。
唇をこじ開けて長い舌がもぐりこみ、口蓋をねぶり、舌と舌が絡みあう。ついで、濡れた舌が耳の穴をまさぐり、耳たぶから首筋へと這い進む。
体のあちこちで、小さな快感の渦が湧きおこった。その渦は数を増し、じょじょに大きくなって、うねるように昌輔の全身を襲った。
乳首を吸われたとき、昌輔は女のように悶えた。敏感になった乳首は、息を吐きかけただけでも感じてしまう。
その間も、高城の器用な指は、昌輔の体に潜む快楽の壺を的確にさぐり当て、性感をますます高めていく。
「そろそろお前の好きなものをあげよう」
高城は上体を起こすと、昌輔を腰の上に抱きあげた。そのまま口を吸いながら、下から突き入れてきた。高城の男根は、その特異体質から先走り液が全長に滲み出て、濡れたようになっている。しかも昌輔の直腸は、異物が入ってくると潤う陰潤腔だ。
陽潤棒と陰潤腔の結合だから、ラブオイルなど必要なかった。

濡れた陰茎がなめらかに押し入ってきたとき、痛切な快感が全身を貫いた。
昌輔は思わず顎をのけ反らせて、喘ぎ声を発した。
「はあっ!あ、ぁ――」
侵入物はなおのこと内部で膨張し、腸壁をこすりながら奥へと侵入する。
「ひっ!く、く、く、くぅぅ――」
昌輔は男の体にしがみついて、悲鳴を押し殺した。
「ふ、ふ、ふ、いいか。これからお前を地獄めぐりに連れて行ってやる。どろどろの愛欲地獄をたっぷりと味わえ!」
昌輔の内部で、ねじくれた肉棒が自在に動き出す。入り口から奥へ、往復運動に加えて、右へ、左へ、えぐるように亀頭が腸壁を突き上げる。その間、高城は腰を固定させ、昌輔の口を吸い、乳首をもてあそぶ。
いつしか昌輔は、男の腰に馬乗りになり、自ら尻をうねらせていた。
襞のひとつひとつが侵入物に絡みつき、生温かく濡れてうごめく――。
そのうち昌輔は、なにも考えられなくなった。
ふたりの横では、茫洋とした修三の顔が、昌輔の痴態を見て、悲しそうな表情に変化する。
(やはり昌輔さんでは、桂介さんの淫術に対抗できなかった)
修三の目には、妖婦転位された昌輔の姿が見えていた。

高城は哀れな生け贄を弄びながら、うそぶいた。
「あれからだいぶ、女の修行を積んだようだな。こんな具合の良い壺を味わうのは、修三以外で初めてだ。よし、そろそろ男を忘れさせてやる」
高城は忘陽根の術にとりかかった。直腸に挿入された男根の動きが、にわかに活気づいた。それ自体、意志ある生き物のように、腸壁をこすり、えぐり、らせん状に回転しながら前後に滑った。
ふたりの腹の間に挟まれた昌輔の陽物が、はち切れんばかりに膨らんで、射精の疼きに打ち震えた。
「はあっ!あ、あ、あ――」
昌輔の頭の中で、痛切な鳴動がとどろき、マグマが噴出しようとしていた。
度重なる刺激に、腸壁はとろけるような柔らかさで男の兇器にからみつき、うねうねと脈動しだした。
「おおっ!これは――」
高城が感嘆の声をあげた。彼は男根の動きを止めて、腸壁の動きを確かめるように、しばしじっとしていた。
ようやく高城は気を取り直して、言った。
「ほほう、お前の内部は、思った以上に名門だな。面白いことを思いついた。お前が男を捨てるのは、師匠の体を使ってやれ」
彼はつぶやくと、囲炉裏のそばに横たわる天山に声を掛けた。
「おい、師匠、こちらに来い。お前の愛弟子が嵌めたがっているぞ」

天山は、高城の言葉を理解したようだ。彼は気だるそうに上体を起こし、這うようにしてふたりに近づいてきた。
高城は腰にまたがる昌輔の体の向きを変えて、背後から結合した。そのまま二人とも仰向けに寝る形をとった。疲れを知らぬ肉棒が、内部で自在の動きを再開した。
ふたたび気の遠くなるような快感が、昌輔の体内で渦巻いた。
近くに来た天山は、茫洋とした表情で、昌輔の勃起した陽根を見た。それから高城の命令するまま、操り人形のように、昌輔の腰にまたがった。
直立した逸物が、豊満な湿った秘孔に、じんわりと呑みこまれていく。天山の内部は、昌輔や修三と同じように、陰潤腔にされていた。

昌輔はふたりの体のサンドイッチになって、男と女の悦びを同時に味わうという、摩訶不思議な状態にされていた。
天山は串刺しになって、昌輔の上にまたがったまま、微妙に尻をうねらせている。その顔は、深い悦楽に痴呆のように口を開け、昌輔の顔を見ているようで目が虚ろだった。
「ほれ、師匠。お前の愛弟子の精を吸い取ってやれ」
高城が揶揄するように言って、昌輔の直腸に挿入した男根の動きに、最後の仕上げを加えた。
太い肉のねじ棒が、らせん状に回転しながらグンと伸びた。
その快感は痛烈だった。
昌輔は一気に高みに追いやられ、悲鳴をあげた。
「はああっ!――お師匠さま!」
溜まりにたまった男の精が、天山の内部で弾け飛んだ。
そのとき、昌輔の叫び声を聞いて、天山の瞳に一片の真実の光が宿した。
天山は昌輔の体にしがみついて、何か言おうとした。
「き――きゅう――いんこう――」
天山の頬に、一筋の涙がながれ落ちた。
その涙を見て、昌輔はハッとした。師匠は、久平の秘術、吸陰腔を使えと言っているのだ。
(しかし、まだその秘術は――)
会得していなかったが、昌輔は吸陰腔を使おうとした。
久平老人の直腸の動きを思い浮かべた。肉襞が幾重もの輪になって、男根を締め付け、吸い込む――男根を呑みこんだ腸壁が、うねるように奥に向かって収斂していく――。
昌輔は、それらの動きをイメージし、そのイメージに体を同化させようとした。

高城は忘陽根の術を使いながら、昌輔の微妙な変化に気付いた。
(なんだ、おれの忘陽根が効かないのか?)
内部に突き入れた分身に、奇妙な刺激が伝わってきた。肉の襞がまとわりつき、奥に向けて絞り込むような刺激――。
それと分からぬほどの微妙な動きが、じょじょにはっきりとしたものになる。
(これは!)
得体の知れない快感が、高城の全身をつらぬいた。
「くっ!ぐわあっ!」
ふいに襲った強烈な快感に、不覚にも精を噴出した。
それだけではなかった。
男根を押し包む腸壁の動きが、ますます活発になってきて、そのもたらす快感が際限なく増幅する。
(なんだっ!これは――)
息詰まる快感の衝撃波が、怒涛のように襲ってきた。ビクン、ビクン、高城の体が大きく痙攣した。
「うおっ!お、お、お〜ぅ――」
かろうじて残った意志の力で、彼は抜け出ようともがいた。
しかし、天山と昌輔のふたりがかりの体重では、身動きすることもかなわなかった。
ふたりの体の下で高城の体が、快楽と危険の隣り合わせた痙攣をくりかえした。
――やがて、ぴくりとも動かなくなった。

――**――

温泉湯治と修三の蘇陽根によって、天山はオトコを取り戻した。
しかし彼は、いったん覚えたウケの悦びが忘れられないのか、はたまた陰潤腔にされた尻が疼くのか、昌輔に抱かれるのを自ら望んだ。
いっぽう、昌輔の吸陰腔によって、すっかりオトコの精を吸い取られた高城は、気の抜けた老人同様になって、ひとり、九州へと帰って行った。彼が別府の珍宝御殿に戻って、いつの日かオトコの力を取り戻せるのかは不明だった。
それはともかく、3人は修三の古家で、海の幸に舌鼓を打ち、露天風呂にのんびりと浸かって、活力を蓄えた。
そのあと、久平に家を託して、東京へと戻って行った。
[17/04/20 08:07 閑名三爺]
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