■ 男色奇譚―男色の極み― - (1)蘇生の旅
(1)蘇生の旅
「明日、弟のところに出かける」
昌輔を部屋に呼ぶと、天山は唐突に言った。
「玉門さんのところに?」
「用があるのは愛人の方だ。名は堀田叉一」
「その人が何か――」
「ひょっとしたら、お前のかけられた忘陽根を直せるかも知れん」
「えっ、本当ですか!」
「あまり期待をするな。可能性があるだけだ」
天山と昌輔は、新幹線とバスを乗り継いで飛騨の奥地に入った。
ようやく玉門の住処に辿り着いたのは、ほぼ一日がかりだった。そこは人里離れた、御満湖の畔にあった。
表札には、『堀田叉一』と墨書きされている。茅葺屋根の合掌作りで、歴史を感じさせるどっしりとした家だった。
天山は板戸を引き開けて、勝手知った様子で中に入っていった。家の中は薄暗く、最初は留守かと思われた。しかし土間から板の間に上がったところで、異様な気配を感じ取り、昌輔はにわかに緊張した。
板の間に面した襖越しに、押し殺した息遣いと、熱気をおびた一定の律動が感じられる。襖の向こうで何が行われているのか、昌輔は気づいた途端、心臓が早鐘を打ち出した。
天山が襖を引き開けた。
薄暗闇に白い肢体が浮かび上がった。
目が慣れてくると、布団に男が仰向けに寝て、その上にぽっちゃりと太った男が、仰向けに乗っている。上の男は玉門だと気づいた。
天山は無頓着に近づき、胡坐をかいて座り込むと、ふたりの交合を観察しだした。昌輔は迷ったが、おずおずと天山のそばに行った。
行為中のふたりは、天山たちに気づいたが、性交をやめる気配はない。
上になった玉門の両足は、下の男によって掬い上げられていたので、太い陰茎が秘門に食い込んでいるのが見えた。動きは緩慢だが、男が下から腰を繰り出すと、ヌメッと濡れ光る陰茎が5センチほども抜け出た。男の陰茎は相当の長さがあるようだ。
そのうち玉門が繋がったまま上体を起こし、太い肉杭を軸にゆっくりと回転した。その動きは、玉門の意思に因るというよりは、その肉体を支える下の男のコントロールに因るものと見えた。
串刺しになったまま、玉門がしなやかに上下動した。白い肉体が薄闇で生々しく揺れ動くさまは、浮世絵でも見ているような妖しい光景だった。
昌輔は見物していて、股間にかすかな疼きを覚えた。もしやと自分の性器に手を伸ばしたが、そこは軟らかくうずくまったままだった。
玉門を腰に跨らせたまま男が上体を起こして、下から突き上げながら口を吸った。舌と舌が絡まり唾液をすする濡れた音がした。男はそのまま玉門の体を仰向けに寝かせ、その上に覆い被さった。
男の肉体があらわになった。腹も腰回りも尻も適度の肉がついて、見るからに壮健そうだ。見ている前で、尻がグウッと引かれて横に開き、ついで力強く前に送り込まれる。
玉門がむせび泣くような声を上げだした。
あはあっ、あはあっ、あああっ――。
男の腰の動きが、リズミカルになった。
ズブブ、ズググ、ヌチャッ、ヌチャッ、ヌチャッ――。
ひいっ!ああぁ――ああっ!
玉門の善がり声が切迫したものに変わる。
昌輔は声もなく、男の性技を見守った。にぎやかな玉門に対し、男は終始無言で腰をうねらせている。しかも結合の体位をいくつか変えながら、ただの一度も性器を玉門の体から抜いていない。男は50を過ぎた年齢と思える。黙々と玉門を可愛がるその姿に、昌輔は超人的な精力を感じた。
ようやく男が玉門から離れた。湿田から長靴を抜きだすような、濡れた音がした。
長かった――18センチほどもあるだろうか。亀頭はさほど大きくないが、根元は大人の手首ほどの太さがあった。まだ精を吐き出していないそれは、グンと天を突いて、ビクンビクンと脈打っている。
それを眺めながら天山が言った。
「来る早々、いいものを見せてもらった」
それから、弟のほうに振り返った。「玉門、お前もずいぶん良いウケになったようだな。叉一さんによほど可愛がられたか」
玉門が恥じらいを見せて、そっとうなずく。そのさまは、すっかり男の恋女房になりきっていた。
天山と昌輔は風呂の湯に浸かり、旅の疲れを癒した。窓の木格子越しに見える柿の葉が色付いて、深まる秋を気付かせる。
風呂から上がったあとは、囲炉裏を囲んで、牡丹鍋の御馳走にあずかった。食材のイノシシは、堀田が罠を仕掛けて獲ったという。
鍋をつつき、地酒を酌み交わしながら、のんびりと会話した。
ここでは、時の流れがゆったりとしているようだった。
玉門の愛人、堀田叉一は、体はさほど大きくないが、浅黒い肌にオイルを塗ったような艶がある。黒目勝ちの瞳が生き生きと輝いて、いかにも精力絶倫を思わせる。じっさい、彼は52歳だが、今でも一晩に3回は精を抜けるという。
しかし彼の外見は、いかにも人のよさそうな田舎の親父くらいにしか見えない。可愛らしいおでこと小さめの口、弛みのない固太りの肉体。そして、いつも邪気の無い微笑みを浮かべている。
その夜、いよいよ叉一に抱かれる段になって、昌輔は期待と興奮に打ち震えていた。
ふたりは裸で横たわり、それを見守るように、天山と玉門が寝具の両側に座っている。
簡単な前戯のあと、叉一はすぐ結合の形を作った。
長大なイチモツをあてがい、ググッと力を込める。
入り口を押し広げるのに少し手間取ったが、あとはスムーズに挿入できた。
叉一は、内部が潤っているのに驚いたようだ。
「おおっ、これが陰潤腔か!これはすごい――」
彼は気を取り直して、腰を入れた。太い肉根が腸壁を押し広げながら、奥深く入り込んでくる。
それだけで昌輔は、軽いオルガスムスを迎えていた。
とうとう肉太の先端が、S字結腸付近を突いた。昌輔は、こんなに奥まで入れられたのは、初めてだった。
直腸の奥深く、快感の壺を刺激されて、昌輔は思わず口を大きく開けた。気の遠くなるような快感に、声が出なかった。
男の分身が直腸をいっぱいに満たし、なおも硬度と容積を増してきた。
それから動きだした。
「すごい――すごいぞ――」
叉一は、うわごとのように繰り返しながら、腰をうねらせた。その動きは直情的で、玉門を相手にした性技はまったく見られなかった。
図太い肉棒が腸壁をえぐるように行き来し、動きがじょじょに速くなっていく。
それは昌輔にとって、少し進行が早すぎた。体内に埋まった男根を、もっとじっくりと味わいたかった。
ジュクジュク、ビチャビチャ――。濡れた腸壁を、肉の弾丸列車がはげしく行き来して、湿った音が続いた。
摩擦による快感がじんわりと湧き上がってきたとき、深々と突き立てられた陽物の射精のうずきを感じた。
ふいに叉一が動きを止めて、その体がビクリと痙攣した。生温かいものが、体の奥深くで充満した。
「いやあ、つい我を忘れてしまいました。お恥ずかしい」
終わったあと、叉一は頭をかいた。艶のある顔が赤く染まっている。
そのあと叉一と昌輔は風呂に入り、天山は玉門と酒を酌み交わしながら、兄弟だけに通じる昔話をしていた。
昌輔は汗を洗い流したあと、ひとり縁側のソファーにもたれていた。体内を行き来する男根の感触、叉一の熱っぽい吐息、健康的な筋肉の震え。房事を思い出しながら、心地よい余韻にひたっていた。
1時間後、叉一はふたたび、昌輔の体の中に押し入ってきた。今度は余裕をもって、持ち前の性技を発揮した。
入り口を極限まで押し開き、腸壁を押し広げ、奥深く侵入すると、大きなストロークで腰を使い始めた。
ズグーッ、ヌチャアー、ズブブブッ――。
昌輔は、叉一の送り込む快感を受け止め、そのすべてを体内に吸収しながら、自らも貪欲に腰をうねらせた。
快感の渦が下腹部全体に広がってくる。
昌輔は、いつしかすすり泣いていた。これまで平蔵や正夫に抱かれても、そんな声で泣くことはなかった。
玉門がふたりの体のあいだに手を差し伸べて、昌輔の陽物に刺激をあたえた。しかし、そこはいつもより大きくなったが、芯は通らなかった。
玉門は兄の方を見て、駄目だと言うように首を振った。
男の機能は復活する兆候を見せなかったが、直腸は活きの良い男根に何度も揉まれて、にわかに活気づいていた。腸壁がさかんに収縮し、蠕動しだした。
その動きに気付いたのは、叉一だった。
「ううっ――これはっ!」
挿入した男根が、得も言われぬ刺激を受けた。無数のミミズに絡みつかれ、締めつけられ、奥に吸い込まれるような――。
「う、うふっ!」
叉一は、あっという間に到達した。
抜け出るとき、陰茎から溢れた精液が菊門から滴り落ちた。その晩2度目の射精だが、驚くほど大量の体液だった。
乳白色の体液は精子の運動を促進するもので、射精とともに前立腺から分泌される。叉一の場合は、前立腺の働きが人一倍、活発なのだろう。
昌輔の尻から抜いた陽物を濡れタオルで拭いながら、叉一は気抜けしたように言った。
「私もまだまだ修行が足りません。2回目も自分を制御できず、不覚にもいってしまいました」
彼は布団に横たわる昌輔を、まぶしそうに見た。「それにしても、あなたのような人は初めてだ。まるで無数のミミズに絡みつかれて、何段にも締め付けられ、奥のほうに吸い込まれるようでした」
「――吸陰腔」
天山がつぶやいた。そこで我に返ったように、昌輔に向き直った。「どうだ、昌輔。チンポのほうは」
昌輔は心もとなさそうに答えた。
「はい、お師匠さま。いつもより大きくなりましたが、まだ力は湧いてきません」
天山はその答えを予期していたように、うなずいた。
「男の精をたっぷりと注いで貰って蘇らせようとしたが、徒労に終わったようじゃな」