■ 男色奇譚―男色模様― - (5)謎の訪問者
(5)謎の訪問者
梅雨の時期に入った。例年に比べ雨量はさほど多くないが、どんよりと曇った日がつづいている。
その日は朝から小雨が降っていた。庭の紫陽花が雨に濡れ、生き生きとして見える。絵画展の催しがあって、天山と洋平爺は外に出かけ、昌輔ひとりで留守番をしていた。
昼過ぎに天山をたずねて、ひとりの客がやって来た。昌輔と同じ年頃、背が高く、彫りの深い顔立ちをして、まるで映画俳優のような二枚目だった。
男は名前を言わず、天山が留守だと聞くと、じゃあ待たしてもらう、と横柄に言って、勝手知った我が家のように応接室に向かった。
昌輔は、傍若無人な男の態度に怒りを覚えるより先に、歩く姿に魅了された。男の動作はプロのダンサーのように優雅で、しなやかだった。
昌輔は男のためにコーヒーを入れてやった。男は礼も言わず、出されたコーヒーを口にしながら、向かいに座る昌輔を無遠慮に見た。
切れ長の涼やかな目をしていた。その双眸で見られていると、昌輔はなぜかゾクリとするような肌の泡立ちを覚えた。
心に生じた淡い細波にとまどいを覚えながら、昌輔は男に聞いた。
「あのう、あなたは、この家にいらしたことがあるんですか?」
男はフッとゆがんだ笑みを浮かべた。浅黒い顔の中で、白い歯がきらりと光った。
「ああ、天山師匠の世話を受けた。師匠には色々教えてもらった」
言ったあと、男はニヤリとした。「お前も教えを受けているようだな」
(じゃあこの男も、師匠に陰の秘術を習ったのか)
にわかに好奇心を抱いたが、昌輔は黙っていた。
男は、観察するように昌輔の身体を見ながら、話を続けた。
「お前はきれいな肌をしている。ズボンの膨らみから見れば、男の道具も立派なようだ。それに、裏門の具合も良さそうだな」
昌輔はぎょっとした。
(この男は、透視でも出来るのか?)
彼が黙っていると、男が立ちあがった。
「どうだ、退屈しのぎに、ちょっと楽しい事をするか」
男が近づくのを見て、昌輔はあわてて立ちあがろうとした。
「ぼくは、そんな――」
「隠すな。好きなんだろう」
男は覆い被さるように、昌輔の前に立った。
昌輔は男の目を見た途端、なぜか身動きできなくなった。
男は昌輔の横に腰を下ろすと、強引に抱きすくめた。接触部分から、ぞくぞくするような不思議な快感が走った。
逞しい手が、背中から腰へと滑り降り、尻の膨らみを揉んだ。
(ああーっ!)
昌輔は顎をのけぞらせて快感に喘いだ。男の切れ長の目に妖しい光が浮かび、セクシーな唇が開いた。
「すばらしい触り心地だ。おまえは、男を悦ばせる体をしている」
男の顔が迫り、ふいに口づけされた。
昌輔は抵抗できなかった。唇がこじ開けられ、長い舌がもぐりこんでくる。舌と舌が絡み合い、唾液を吸われた。
昌輔の思考能力は完全に失せていた。ただあるのは、体中に渦巻く快感と不思議な陶酔感だった。
男は舌で口腔をまさぐりながら、昌輔の服を脱がせ、ついで自分の服も脱いだ。
裸にされた昌輔は、ソファーに背中を預ける男の体の上に覆いかぶさって、逆さ絵の格好でしがみつく体位をとらされた。
すぐ目の前には黒々とした茂み、屹立した男根があった。昌輔のモノほど大きくはないが、禍々しい形状をしていた。
マムシの頭部のようにカリの発達した亀頭。それに続く陰茎体は、筋肉の束を縒り合わせたように捩れていた。紫がかった茶色の全長は、濡れたような光沢があって、まるで皮膚のすべてから、先走り液が滲み出ているようだ。
「どうした?咥えたいんだろ。はやく咥えろ」
背後から男の声が聞えた。尻の狭間に息がかかった。
昌輔は後ろを男に見られているのを意識しながら、目の前の肉棒をそっと掴んだ。
それは、じっとりと濡れていた。
しかし、極度の興奮状態にある昌輔には、その異常さも気付かなかった。彼は口を開き、手にしたモノを呑みこんだ。濡れた肉棒が舌のうえを滑り、喉の奥まで潜り込んでくる。その感触に、息苦しいほどの興奮が押し寄せてきた。
男の器用な手が、昌輔の背後を愛撫しだした。背中から腰、臀部へと長い指先が這い進むにつれ、股間から背筋に沿ってぞくぞくとする快感が走った。もっと触ってもらおうと、昌輔は大きく脚を広げた。器用な指先が、双丘の分かれ目から谷間に伝わり、閉じた秘門に触れてくる。
「あ――」
昌輔は思わず腰をずらした。
異様な触覚を覚えたのだ。指がゆっくりと円を描くように動いた。そこから経験したことのない快感が、尻から背筋へと這いずり上がってきた。
昌輔はいつしか目を閉じていた。
指が小さな円を描きながら、蕾の中に押し入ってくる。
「あ、ああ――」
昌輔はうっとりとした。指に貫かれたまま、白い尻がくねった。
「どうした、口がお留守になってるぞ」
男の声がした。
昌輔は、ふたたび勃起した肉根を呑みこんだ。肉根は口の中で、意志を持つ生き物のようにうごめき、喉の奥にもぐりこんだ。
それを受け入れようと、昌輔は無意識に、深拡喉を使っていた。
こんどは指に代わって、男の舌が尻の軟らかい皮膚をまさぐった。
秘門のふくらみをチロチロと舐め、蟻の門渡りをえぐるように舐めた。
その感触は、昌輔が行ったことのない高みへ連れていかれそうな、不安な昂ぶりを覚えるものだった。
昌輔の息遣いが荒くなった。
固くとがらせた舌先がふくらみを押し開き、内部に潜り込んだ。
「うわっ!ああっ――」
異様な快感の渦に巻き込まれた。昌輔は思わず肉棒から口を離し、顎をのけぞらせた。
内部で、舌先がぐんと伸びるのが感じられた。ついでぐるりと回転した。
――強烈な快感が全身を突き抜けた。
昌輔はかろうじて不洩棒を使い、射出するのを免れた。それでも数滴の精液を、男の腹の上にこぼしていた。
「ほう、いかなかったとは、たいしたものだ」
男が尻から顔を離して言った。「じゃあ、本格的に可愛がってやるか」
男は体を入れ替えて、こんどは昌輔の上体をソファーのうえに押し倒した。それから昌輔の両足を上に引きあげた。
引き締まった男の肉体が、あらわに見えた。浅黒い肌が汗で濡れ、胸から腹部にかけて、筋肉が浮き出ている。黒い茂みから反り返って生い立つ、捻れたような肉棒――。
男は昌輔の顔を見ながら、体を重ねてきた。まるで目があるかのように、禍々しい男根がまっすぐに入ってきた。結合はスムーズだった。肉の門を押し開き、内部の粘膜の管を広げながら、どこまでも侵入してくる。
ついに男の体が密着した。
結合部は溶接されたように、寸分の隙間なく繋がっていた。
「ほほう、予想通りだ。お前はすばらしい器を持っている」
男が繋がったまま、熱い吐息を洩らした。
昌輔はあまりにも深い快感に、朦朧としていた。それでいて男と接触する部分のすべてが、赤ん坊の肌のように敏感になっている。
まるで女陰と化したように、大きく押し広げられた尻の狭間。体内いっぱいに広がる男根の存在感。腸壁を通じて伝わってくる、隆起した肉棒の震え。それらすべてを鋭敏に感じ取っていた。
引き上げられた昌輔の両膝は、胸に押しつけられていたが、その窮屈な体位も気にならなかった。彼は串刺しになったまま、息詰まる思いで男の息吹を味わった。彼の陽根は、かつてなかったほど、大きく、固く、勃起して、ふたりの体に押し挟まれていた。
「おまえはおれより大きなモノを持っている。しかし、見かけ倒しだ」
男は繋がったまま、昌輔の顔を見ながらつぶやいた。「それでも許せないな。おれは嫉妬深い性分なんでね。だからお前を女にしてやる」
男の手が伸び、後頭部をつかまれた。それから顔が迫り、口づけされた。器用な舌が昌輔の口蓋をねぶり、ふたりの舌が絡まった。
そのとき不意に、体内に埋めこまれた男根が、ぐんと伸びるのを感じた。胃の腑まで突き上げられた気がした。ついでその動きが激しくなった。息づくように腸壁を、強く、弱く、圧迫したかと思うと、深く、浅く、滑脱した。それに捻りが入った。
その動きは、陽蠕棒どころではなかった。男はかすかに腰をうねらせているだけなのに、昌輔の体内では男根が猛威を振るっていた。それも、狂おしいほどの快感を増幅させる、威力たっぷりの動きだった。
上下の口を塞がれて、昌輔の肉体が快感に打ち震えた。超人的な男の凶器が、太い肉ドリルのように、らせん状に旋回しながら直腸の管を上下に滑った。
昌輔は腸内を滑脱する男根の震え、微妙な隆起までも、すべて感じていた。まるで全身の性感帯が直腸に集中したようだった。
息詰まるうねりが、次から次に押し寄せてきた。
「ひーっ――はあっ!」
昌輔は声にならない叫び声をあげた。
巨大なうねりが全身を突き抜けた。
ついで、火山が噴火したような衝撃が襲った。
ふたりの体に挟まれた、昌輔の肉棒がぐっと膨れ上がり、先端から白濁した液体が激しい勢いで噴出した。一度、二度、三度――反り返った肉体がビクン、ビクンと揺れた。
繰り返す収斂につれ、吐き出す精液は、乳白色から透明に変わり、量も少なく、ついにはむなしい痙攣だけになった。
それでも男は動きを止めなかった。
「どうした、お前の精力はこんなものじゃないだろう。それ、もう一度、極楽を味わえ」
男根が緩やかに直腸内を滑脱しつづけ、ふたたび昌輔の身体の奥底に、情欲の炎が沸き立った。それと共に、力を失った男根に力が蘇り、精子製造機能が活性化する――。
ひとときが過ぎ、男が離れた。
昌輔の胸から腹にかけて、大量の精液でべっとりと濡れていた。
男は悠然と言った。
「たっぷり出したな。どうだ、極楽を味わったか?」
しかし昌輔は、男の言葉を聞いていなかった。あまりにも強烈な射出感の繰り返しに、彼は気を失っていた。